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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第5章 ようこそ、国立神対策高等学校へ
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桜舞う神高

「まぁ、今時の主人公ってのは無双はするけど見た目は地味じゃないか。悠真は、俺つえーでもなく無双もしないけどな。」


 坂田が、俺の右肩にポンと手を置く。笑いを堪えているのか、口元がプルプルと震えている。


「あ、あと俺つえーの奴らは、目が死んでるけど悠真はイキイキしてるじゃないか」


「いや、今時の主人公とか言わないでくださいよ! 色んな方面の人に喧嘩売ってますからね!?」


 確かに今時の流行りは、俺つえーからのゴキブリホイホイ並みのハーレムだ。

 でも、そんな事を言っては敵を増やすだけだからな!?

 

「冗談はさておき、準備が終わったのならば、そろそろ出発しよう。車を出しておくから、先に外にいるからな」


 坂田は椅子から立ち上がり、ネクタイを固く結ぶ。そして、机の上に置いてあった車のキーを取って、玄関のほうに消えていく。



 筆記用具などを、スクールバッグの中に入れて、準備を終える。


「さて、坂田さんを待たせるわけにはいきませんし、私たちも行きましょうか」


「おう、そうだな」


「うん、そうだね」


「あぁ、早く行こう」


 準備を終えた俺たち四人は、玄関の方に足を進める。


「これを履けば良いのでしょうか?」


「そうだろうな。俺も、ローファーを履くのは初めてだ」


 玄関には、ピカピカの新品のローファーが四つ鎮座していた。

 俺たちは、自分の足の大きさにあったやつを両足に履く。


「ピッタリだ、よし行こうか」


「はい!」


 心なしか、ミツレは少しだけ上機嫌のようだ。流風も声には出さないが、表情がいつもより朗らかなのは、この二人にとっては初めての学校だからだろうか。


「お待たせしました〜」


「お、来たか。さぁ、乗ってくれ」


 坂田の保有する、黒の八人乗りの大型車に四人は乗る。俺は助手席に座り、3人は後ろの席に座る。


「よし、シートベルトを忘れずにな。じゃ、出発だ」


 坂田は、アクセルを勢いよく踏んで車を発進させる。


「目的地は、あの漁港ですか?」


「あぁ、そうだ。あの漁港から神高までワープする」


 神高受験の時に訪れた例の漁港の事だ。あそこまでだったら、自転車でも15分ぐらいだから、通う時は歩きか自転車だろうな。





 車を走らせて8分ほどして例の漁港に着いた。千葉神対策局が、神高に転移するこの漁港に近いのは、通うためなのだろう。


「よし、着いたぞ。学校が始まったら自転車で、ここまで来てもらうから道のりは覚えておけよ」


 そう言うと坂田は、車のキーを抜き取って、車から降りる。


「よし、俺たちも行こうか」


「えぇ、そうですね」


「うん、分かったよ」


「あぁ、後を追いかけよう」


 俺たち四人も、坂田の跡を追うように車から降りる。


「おーい、こっちだ〜」


 坂田が、堤防の先の方で手を振っている。俺たちは、少し小走りで坂田のいるところに向かう。

 朝日と自然が育んだ潮風が、身体全身を包み込んで心地が良い。入学式である今日が晴れて、本当に良かったな。


「転送人数を確認します。カードキー保持者1名と、カードキー未所持の新一年生4名で間違いないですか?」


 マンホールみたいなところに、坂田がカードキーを読み込ませると、音声ガイダンスが流れる。


「問題ない。転送を頼む」


「かしこまりました。国立神対策高等学校に転送します」


 機械音声がそう言うと、一瞬だけ視界が真っ白になる。

 そして、その刹那の時が終わると、俺たちの目の前に国立神対策高等学校、通称 神高が現れる。


「いやー、改めて見るとデカイですね………………」


「あぁ、ここまでデカイ建物は東京にも中々ないんじゃないのか」


 ミツレが、神高の校舎を眺めている。校舎というよりも、トイレットペーパーを縦にしたみたいな円柱の建物である神高は、他の学校の作りとはかなり違う。

 

 辺りを海に囲まれた辺境の地に座している、神殺しの術を学ぶ学校。それが、俺たちがこれから通う国立神対策高等学校だ。

 特殊な結界が神高の敷地周りには貼ってあるらしく、入るためには俺たちが入ってきたカードキーを使うしかない。普通に、海の上から探したとしても、特殊な結界で見えないようになっていると言うから驚きだ。


「よし、受付をしに行くか」


 神高の敷地内には、沿道に沿うように桜の木が植えられており、今は季節的に満開だ。

 満開の桜で出来たゲートを通りながら、俺たち四人は坂田の後ろをついて行く。




「こんにちは、お名前をお願いしてもよろしいでしょうか?」


 入学者数が多いからか、受付所は数個あった。そのため、特に並ぶことはなく、俺たち四人は受付所に着いた。


「神崎悠真です」


 俺は、受付所に座っている女の人に自分の名前を教える。制服を着ている事から、神高の先輩だろう。


「神崎……………… あ、あの試合の………………」


 女の人は、俺の名前を聞いた瞬間に表情が少し曇る。


「ん? どうかしましたか?」


「い、いえ! あの…………… 大丈夫でしたか? あなたの事は、あれから神高の間でかなり話題になりました。まさか、合格したとはいえど神高に入学してくるとは、正直思っていませんでした」


 あぁ、そうか。俺と三門龍介の二次試験は神高の生徒達も見ていたって話だった。

 あの後、ミツレから色々な話を聞いたが、あそこまでハプニングが起きた試合は最初で最後だったと言っていたな。噂になるのは無理もないな………………


「大丈夫ですよ、こう見えてメンタルは丈夫なんで!」


「そうですか……………」


 女の人は、まだ表情が暗い。憶測でしかないが、俺を心配してくれているのだろう。


「それに、俺は神高で学ばないといけない事が沢山あります。そのためだと思えば、あの出来事を踏み台にしてやりますよ」


 俺は、何としてでも全ての神を殺さなければならない。仁や、両親の仇とか他人を理由にしたものではない。

 確かに、仇が無いと言ったら嘘になる。だが、俺はそれよりも神のせいで、これ以上の人が苦しむ姿を見たくないんだ。

 そのためにも、俺はここで神殺しの術を学ばなければならない。


「…………………どうやら、私の思い過ごしだったみたいですね」


「え?」


 女の人は、フフッと口元を少し緩める。そして、後ろの段ボールの中からA4サイズの茶封筒を取り出す。


「君は、とても強い。ようこそ、国立神対策高等学校へ」


 俺は、女の人から必要書類などが入っている茶封筒を受けとる。


「はいっ!」


 そして俺は、先に受付をし終わって、校舎の中で待っている坂田やミツレ達の元に向かうのであった。

後少しで、大学の春休みが終わりそうなので、ピエンな作者です。


この章では、春という季節の特徴である「出会いと別れ」をメインテーマに書いていく予定です。


あ、あと今回の話で書いている、最近の主人公情勢については作者の独断と偏見なので、あまり気にしないでください。

決して、特定の作品や作者様を馬鹿にしているわけではありませんので悪しからず。

ただ、私は最初から強い主人公が、ほんの少し苦手だというだけです。


あ、でもワンパンマン全巻揃えるぐらいめっちゃ好きでしたわ。あー、今の話は無かったことにしてください笑

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