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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第1章 悲劇の始まりと終わり
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契約者

「坂田さんすか? 朝、うちの学校に来てましたよね!?」


 黒に限りなく近い赤髪をしたオールバックの男は、俺の方を振り向く。


「ああ、桜咲中学校の生徒さんだったのか…………」


 男の目は、どこか悲しげだ。そして、坂田は俺の右手を両手で握りしめて、下を俯く。


「ええ!? どうしました!?」


「すまなかった、本当にすまなかった……………!」


 坂田は俺の手を掴んだまま、深々と頭を下げ続ける。急に目の前で頭を下げられたので、俺は坂田の手をそっと離す。


「どうしたんですか!? 頭をあげてください!」


 坂田はゆっくりと頭を上げて、申し訳なさそうな顔で俺を見つめる。


「君の故郷を守れなかった。俺がもう少し早く異変に気づいていれば………… 本当にすまない!」


 謝罪をする坂田の隣に、キュウビが体を寄せる。


「あなたは悪くないですよ。それに、あなたはバリアが張られた時に、1番最初に駆けつけてくれたじゃないですか。」


 坂田とキュウビの目が合う。坂田の目は、もう悲しげではなく、穏やかな春の日みたいな目になっていた。


 俺たちは駐車場に向かう。徒歩十分ほどのところにあった駐車場に、八人乗りの大きな黒い車が一台あった。 


「そうか、ありがとう。さあ、車に乗ってくれ。」


 坂田が、運転席に乗り扉を自動で開ける。車内はスッキリとしており、坂田がマメな性格である事がよく分かった。


「ありがとうございます! お邪魔します。」


「お邪魔します」


 俺とキュウビは、後ろの席に座る。キュウビが坂田の後ろで、俺は助手席の後ろだ。


「じゃ、行くぞ。」


 エンジンが辺りを響き、車が走り出す。

  






 どのくらい走っただろうか、しばらくして橋が見えてきた。かなり、大きい橋だな。


「あの橋はなんですか?」


 話題が特に何もない車内というのは退屈なので、俺は坂田に橋の名称を聞いてみた。


「あれは、本州と九州、そして四国を繋ぐ橋だ。何橋だったかな………… すまない、思い出せない」


「あー、いえいえ! 気にしないでください!」


 ふと、隣を見るとキュウビが寝ていた。車窓に寄り掛かるように寝ており、右の頬がガラスで押しつぶさせれている。

 キュウビも態度には表してはいなかったが、疲れていたのだろう。



 キュウビの寝顔をバッチリ目に焼き付けて、坂田と雑談をしたりすること三十分、車が停車する。


「着いたぞ。降りてくれ」


 坂田が降りたので、俺も降りる。その前に、爆睡しているキュウビを起こす。


「キュウビ〜! 着いたぞ〜」


「ん〜 もう少し寝させてください……………」


 キュウビは、目を半開きにしてこちらを見つめる。どうやら寝ぼけているようだ。


「キュウビ! 着いたぞ!」


 俺は、少しだけ大声で強く言ってみた。


「ふあ!? なんれすか!?」


 キュウビが、目をパチリと開けて目覚める。俺と目が合い、キュウビの顔が真っ赤に染まる。


「見ましたか?」


「ん? 何がだ?」


 キュウビは、モジモジしながら俺を見る。


「その…………… 寝顔です…………」


「お互い様ってやつかな」


 俺の言葉に、キュウビは更に顔を真っ赤にする。


「見ましたね!」


「おーい! 早く降りろ!」


 坂田の叫ぶ声が聞こえたので、俺とグチグチ文句を言うキュウビも車から降りる。

 降りた先は、どこかの港。人っ子一人いなく、船もない物静かで不気味な港だ。


「そういえば、何処に行くんですか?」


 俺は、坂田に聞いてみた。車で、保護施設まで連れて行ってくれると思ってたんだがな……………


「千葉県だ。行くぞ。」


 俺は驚いた。現在地が四国地方の何処かだから、そこから千葉県に行くまではかなりかかるからだ。船で行くにしても、船なんて一隻も無いぞ!?


「千葉!? どうやって行くんですか!?」


「こうするんだよ!」


 坂田はそう言うと、スーツの上着を脱ぎ、ワイシャツの胸元から何かを取り出した。

 取り出したものは、10センチほどの人間の全体骨格模型だ。よく理科室とかに置いてあるやつの小さい版だ。


「ドクさん、起きてくれ。行くぞ!」


 坂田は、骨の全体模型を海に向かって思いっきり投げる。


「契約起動!」


 そして、投げると同時に()()()()と叫ぶ。

 その瞬間、坂田と海の方が激しい光に包み込まれる。


「うわ!? なんだ!?」


「これは、まさか……………!」


 眩い光が収まると、そこには道着姿の坂田がいた。

 道着は黒色で、帯は朱色だ。


「さ、坂田さん!? その格好はなんですか!?」


 俺が、慌てた様子で坂田に聞くが、坂田はフッと笑うだけだ。

 今、何が起きた!? 突然光出したと思ったらスーツ姿から道着になってたぞ!? 早着替えなんてレベルじゃない。


「よし、今からドクさんには車の通る道になってもらうから。ドクさん頼むぞ。」


「ドクさん?」


 俺は、坂田が見ている海の方を向いた。そこには、50メートルはある全身骨で出来た巨人がいた。腰から下は海水に浸かっている状態だ。


「うわあ!? なんだこれ!?」


 俺が驚きのあまり腰を抜かしていると、キュウビが骨巨人の方に歩み寄る。


「がしゃどくろさんですか! 確か10年前に人間界に行った方ですね。よろしくお願いします。」


 キュウビが、ペコリとおじぎをすると、がしゃどくろと言われた骨巨人は深々とおじぎをした。優しいのか……………?


「見た目は怖いが、中身はいい奴だ。俺のパートナーの、がしゃどくろのドクさん。仲良くしてやってくれ」


 腰を抜かして、地面に座り込み怯えている俺に坂田が優しい声で言う。

 坂田のパートナーなら良い人だろう。怯えた姿を見せて申し訳ないな。


「がしゃどくろさん! よろしくお願いします!」


 俺は、キュウビを見習い、がしゃどくろにおじぎをした。

 しかし、何か不満があったのか、がしゃどくろは首を振った。

 そして、体全体を動かして何かを表している。もしかして、()()()()のか………………?


「がしゃどくろさんは固いな。ドクさんでいいぞだとさ。」


 坂田が、俺とキュウビに向かって言った。

な、なんだそんなことか。てっきり何か不備があったと思ってしまった………………


「ドクさん! よろしくお願いします!」


「ドクさん、よろしくお願いします」


 ドクさんは、手でグッドをして俺たちの方に手を差し伸べた。

 俺は、ドクさんの人差し指と握手する。とても大きくて少し冷たい。骨だからかな? キュウビはドクさんの中指と握手を交わす。


「よし、ドクさん頼む」


 坂田からそう言われると、ドクさんは車を掴み防波堤から少し遠ざけたところに車を置いた。


「よし、乗れ」


 坂田の合図で俺とキュウビ、そして運転席には坂田が座る。


「あれ? ドクさんは?」


「あそこにいるぞ」


 坂田が指差す方向には、海面に背を向けた状態でプカプカと浮かぶドクさんがいた。


「え? ドクさん、何してるんすか?」


「まぁ、見てろって!舌噛むなよっ!!」


 坂田は俺とキュウビにそう言うと、思いっきりアクセルを踏む。

 凄まじい速度で車は進み出し、海面がジワリジワリと近づく。


「うわああああああああああ!? 何してんすか!?」


 俺の悲鳴も虚しく、車は勢いよく海に落ちる………………はずだった。


「うわあああああああああ!! あれ?」


「落ちてませんね……………」


 俺とキュウビは不思議に思い、窓ガラスを開けて外を見る。

 ここは海上だ。だが、正確に言えば車はドクさんの背中の上にいる。


「よし、行くぞ! 最短ルートだ!」


 坂田がそう言うと、まるで呼応するかのようにドクさんの背骨辺りから骨が沢山出てくる。

 それが次々と道を作っていき、車は再び進み出す。


「マジかよ! ドクさん凄え! てか、なんで坂田さんはずっと道着なんですか?」


 坂田が、少し困った顔で振り向く。


「あー、話せば長くなるが、契約起動すると俺の場合は道着を着るようになるんだ。お隣のキュウビがよく知っているんじゃないのか?」


 キュウビは頷いて、坂田の方を真剣な目で見る。


「やはり、あなたは契約者でしたか。」


 フッと坂田は鼻で笑い、俺とキュウビの方をミラー越しで見る。


「ああ、自己紹介が遅れたな。俺の名前は坂田 修! 千葉神対策局の隊長だ。」


 千葉神対策局? それに、契約起動やら聞いた事もない言葉だらけで頭がゴチャゴチャになりそうだ。


「神対策局! それも隊長とは…………! すごい人と会いましたよ! 神崎さん!」


 キュウビが、目をキラキラさせながら俺の両手を掴み、上下にブンブンと振る。


「お、おう…………」


 あまりにガッついているキュウビは初めて見たので驚いた。

 もう少し海の旅は続きそうだな……………………

下手クソです!

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