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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第5章 ようこそ、国立神対策高等学校へ
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制服って良いよね

「ふぃ〜、ただいま〜!」


 毎朝のランニングを終えて、俺と坂田は千葉神対策局に帰ってきた。

 いつもよりも雑談を多くしてしまい、帰り道は少しだけ足を速めたのでクタクタだ。


「神崎くんと坂田さん、おかえりなさい。朝ご飯の準備は出来ておりますので、お食べてください」


 玄関で靴を脱いでいると、女将さんがやって来た。


「分かりました。悠真、今日は入学式だから早く食べに行くと良い。タオルとプロテインのボトルの片付けは、俺がやっておこう」


 そう言うと、俺の肩にかかっている白のタオルと腰に付けていたプロテインのボトルを、坂田はヒョイっと取り上げる。


「あ、ありがとうございます! 先に頂いておきますね!」


 坂田は、俺に背中を向けて手を振る。そして、その後に女将さんはついて行く。


「よし、坂田さんの言う通り今日は入学式だし、早く食べないとな」


 首の骨をゴキゴキと鳴らし、俺はいつも飯を食べているリビングに向かう。


「あ! 神崎さん! おかえりなさい!」


「悠真くん、今日は入学式だよ!」


「お、神崎悠真か。いつもより少し遅いおかえりだな」


 俺がやってきたのに最初に気づいたのは、ミツレと氷華、そして流風だ。

 今日から、神高で新一年生として在籍する俺の仲間達だ。


「クククククク……………… 同盟者よ、汗をかいて疲れておるだろう。そう言う時は、塩気の強い漬け物などを食べると良い」


 椅子に座って、木製のおひつから白米を装っていると、愛染が沢庵を三切れ白米の上に乗せる。


「ありがとうございます、愛染先輩っ!」


「クククククク……………… 造作もないことよ」


 ドヤ顔で愛染先輩はこちらを見る。重度の厨二病だが、性格は面倒見が良くて優しい人だ。


「蓮! 今日は入学式の準備で、いつもより早く出なくてはならないぞ」


「しまった! 油断しておったわ! 暫し待たれよ、契約者よ」


 歯磨きをしながら現れたのは、愛染の契約者である黒上だ。

 あまり感情の変化が無くて、坂田さんと同じような強面の持ち主だが、その心はとても暖かい人だ。


「では、先に失礼するぞ、同盟者よ」


 そう言うと、愛染は白米を急いでかき込んで、上の階にある自室にバタバタと向かう。


「朝から忙しそうだなぁ〜 ねぇ〜、悠真クンっ!」


 背後から、何者かから抱きしめられた。背中に柔らかくて大きな二つの物が当たる。


「おわっ!? 美香先輩、急に抱きつかないでくださいよ!」


「え〜、何〜? 照れてんの〜?」


「い、い、いや! そんなんじゃな……………はうっ!?」


 俺と向かい側に座っているミツレが、ゴミを見るような目で俺を見ている。

 そして、その隣に座っている氷華は苦笑いをし、流風はミツレと同じようにゴミを見るような目をしている。


「み、美香っ! 早く行かないと遅刻しちゃうよ! 私たちは、会場の設営だから愛染先輩達よりも早く行かないとまずいよ」


 オドオドとした声で、美香の襟元を引っ張るのは白土だ。

 美香の契約者で、ギャルみたいな性格の持ち主である美香とは対照的な性格の持ち主だ。


「えぇ!? うわっ! もうそんな時間じゃん! じゃ、悠真クンとミツレちゃん、そして流風ちゃんと氷華ちゃん、行ってきまーすっ!」


 バタバタと駆け足で美香は玄関に向かう。その美香の後を白土も追う。


「ギリギリだが間に合いそうだ。四人とも、先に待っているぞ」


「クククククク…………… 苦難を乗り越えた四人の同盟者よ、遥か彼方の理想郷で待っているぞ」


 黒上と愛染も、二人の後を追うように玄関に駆け足で向かう。

 二人とも、同じことを言っているのに、ここまで言葉は違うのだな。日本語とは、難しいものだな。


「そういえば、()()()()さん、今日はいつもよりもお帰りが遅かったですね。何をしていらしたんですか?」


「うぅ、悪かったよ……………」


 ミツレは笑ってはいるが、目は笑っていない。目の端の方がピクピクと震えている。


「まぁ、別に特に大した事は無いぞ。ただ、少し悠真と話し込んでしまっただけだ」


 俺が、ミツレから睨まれている時に隣に坂田が座って来た。メシア、イズ、坂田ってやつだ。


「坂田さん! すいません、片付け任してしまって」


「いや、問題ない。それよりも、お前たち、食べ終わったら、段ボールに入っている制服を着てくれ。サイズは大丈夫だとは思うがな」


 坂田が指差す方向には、段ボール箱が四つ並んでいた。

 あの中に、制服などの学校で使う物が一通り入っていると、先日言っていたな。


「ごちそうさまでした。分かりました、私たち3人はちょうど食べ終わりましたし、身支度に取り掛かりたいと思います」


「段ボールに名前が書いてあるから、自分の部屋に持ち帰って準備してくれ」


「分かりました」


 ミツレはそう言うと、食べ終わった後の食器を重ねて炊事場に持って行く。

 そして、流風と氷華も同じように食器を重ねて炊事場に持って行く。


「じゃ、準備し終わったら下に行きますね」


「おぅ、頼んだ」


 そして、3人は段ボールを両手で抱え込んで、自室のある上の階に向かう。





「準備終わりました」


「えへへへ、中学の時よりも可愛い制服だ〜」


「ふっ、悪くないな」


 朝ご飯を食べ終わり、俺も着替えてこようと思った瞬間、ミツレ達が降りて来た。


「おぉ、サイズはピッタリのようだな」


 坂田は、コーヒーを飲みながらミツレ達3人を見る。まるで、実の娘を見るかのような暖かい目つきだ。


「ど、どうですか、神崎さん? 制服と言うものは初めて着るので、自分でも似合ってるから分かりません………………」


 流風と氷華はキャッキャウフフしているが、ミツレは少し自信がなさそうだ。


「いや、そんな事はないぞ。めっちゃ似合ってるよ」


 平然を装っているが、中々にやばい。ただでさえ、ミツレは謂わゆる美少女なのだから、制服と合わさったら尊さの二乗というやつだ。

 神高の女子生徒の制服は、深い紺色のブレザーと一年生は真っ赤なリボンが胸元に付いているのが特徴だ。

 そして、膝上の青と黒のチェックのスカートを着ている。ブレザーとスカートは学校指定だが、寒い時に上に羽織る服や、靴下などは華美なものでなければ特に指定は無いらしい。ミツレは、黒色のタイツを履いている。


「そ、そうですか? えへへ…………」


 少し照れたのか、ミツレは頬を赤らめる。それにしても、綺麗な銀髪と紺色のブレザーが映えるな。


「神崎悠真も早く準備をしたほうが良さそうだぞ? 時間は有限だからな」


「入学式から遅刻はまずいからね〜」


 俺とミツレが雑談をしていると、氷華と流風がこちらに来た。

 氷華と流風も同じ服装だが、氷華は白のニーハイソックスで流風は流風はハイソックスだ。性格の違いが服装にも出るのだろうか。


「そうだな、俺も急いで準備してくるよ!」


 白米と味噌汁を一気にかき込んで、俺は段ボールを片手に自室のある上の階に向かう。




「さーて、中身は何が入ってるのやら………………」


 段ボールを開くと、中には制服と靴下、そしてスクールバッグが入っていた。


「おぉ! この新品の服の匂い、たまらなく好きなんだけど同じ人っているのかな?」


 制服を段ボールの中から取り出し、机の上に並べる。


「ブレザーとワイシャツ、そしてネクタイとスラックス、うん、これぞ制服って感じだな」


 とりあえず、下で人が待っているので早く着ることにする。

 ワイシャツに袖を通し、鏡を見ながら赤のネクタイを結ぶ。

 そして、紺色のブレザーと青と黒のチェック柄のスラックスを身に付ける。


「よし、行くか!」


 鏡に映る姿は、まさしく高校生。通う高校は少し特殊な高校とは言えど、れっきとした高校生だ。

 俺は、黒色のスクールバッグを片手に、ミツレ達が待つ下の階に向かう。




「ジャーン! どうだ! 俺の制服姿は!」


 颯爽とリビングに俺は現れる。そして、ミツレ達3人からは賛美の声が聞こえてくるだろう。

 だが、それは大きな間違いであり、自惚だった。


「普通ですね」


「うーん、普通だね」


「あぁ、普通だな」


 3人の顔は、何とも言えない表情を浮かべており、俺は肩からガクッと崩れ落ちたのであった。


「いや、俺は主人公だからなぁぁぁぁぁぁ!?」


 主人公、いや見た目は完全にモブにしか見えないどこにでもいる高校生が爆誕した瞬間であった。

お久しぶりです! 更新頻度が遅く、本当に申し訳なく思っている底辺作家のKINOKO です。

更新していない時に、ブクマが増えるのは感謝感激雨嵐ってやつですよね。


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