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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第4章 国立神対策高等学校
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闇に喰われる

「うわあああああ!? い、痛いいいい!! 血が、血が、血があああああ!!」


 目の前で、足をもがれたバッタのように、のたうち回る一匹の醜い豚。

 そして、ざわめきが止まらない会場。だが、俺にも何も分からない! 

 だって、俺は()()()()()()()() 右手が勝手に動いたんだ!


「悠真……………」


 坂田が、目を丸くして俺を見る。その目は、もちろん心配してくれている目だが、その奥底では恐ろしいものを見てしまった目をしていた。



「ふははははははは! 見ろ、小僧! 貴様の憎き四項家の人間の片腕を吹き飛ばしてあげたぞ! 我に、感謝しろ!」


 まただ、耳元いや脳内で、しわがれた声が響く。


「てめえ! 何をしやがった! 俺は、何もしていないぞ!!」


「何って…………… 我は、貴様の望みを叶えようとしてあげているのだぞ? そこは、感謝の言葉をするべきだろう」


 コイツ…………! ふざけた事を言ってやがる! 確かに、俺は三門龍介が殺したいほど憎い。

 だが、それはあくまで自分の手で奴に報復するための口実だ。

 しかし、コイツは違う! コイツは、自分が暴れたいためだけに、俺の右手を乗っ取り、勝手に三門龍介の右腕を奪いやがった! それが、俺は許せないんだ。


「ふむ、貴様の憎しみの奥底にあるのは、あくまで自分の手で、あの豚を殺したいのか。だが、結果良ければ全て良しだっ!!」


 その瞬間、再び右手に凄い力が入る。いや、勝手に右手が動いてやがる! 


「う、うわああああああ!?」


「神崎さん!? どうしたんですか! しっかりしてください!!」

 

 ミツレの目は、坂田と同じように心配している目だ。

 だが、やはり坂田と同じで、その目の奥底では恐ろしいものを見てしまった目をしている。


「くそっ………………! 止まれ、止まりやがれ!!」


「ふはははははは! 久しぶりの外の世界だ! 興が乗るわ!!」


 だめだ、完全にコイツのペースだ! 側から見れば、独り言を喋り、右腕が暴走しているのだから、恐ろしいものを見る目をしてしまうのは、無理もない。


「ひ、ひいいいい! く、く、来るなぁ!!」


 右腕が肩から無くなり、その断面を抑える三門龍介の間合いまで、もう少しだ。

 三門龍介は、後退りをしており、もう完全に試合を諦めている。


「次は、どこを壊してやろうか!」


 右腕が、三門龍介目掛けて、大きく振りかぶられる。もちろん、俺の意思では無い。


「おのれええええ! 千手 指人形!!」


 振りかぶられた瞬間、三門龍介の左手から薬指が射出される。

 だが、大きく振りかぶられ、三門龍介の頭上目掛けて拳が撃墜する。


「ゴホッ! 凄い砂煙だ…………!」


 右手で殴ったはずだが、感触が無い。どうやら、感覚までもコイツに乗っ取られたらしい。


「ぬぅ、これが指人形………… 小細工な手だ」


 砂煙が収まり、視界が安定する。そこには、大きく陥没した地面の中央に、もう人間の形をしていない肉片が現れた。


「っ…………! マジかよ…………」


 その肉片は、三門龍介の身代わりとなり徐々に光に包まれて消えていく。



「なんて威力だ! あれは、悠真なのか…………?」


「分かりません! 右腕が変になってからおかしいです!」


 ミツレと坂田も驚きの顔を浮かべる。もちろん、会場全体の、ざわめきがピークに達する。


「なんなんだよ、アレは! 神崎悠真は立つのも限界だったのに、おかしいぞ!」


「たった拳一振りで、あそこまでの威力を出せるなんて…………」

 

 ざわめきが止まらない。だが、無理もないな。

 俺だって、観客席に座っていたら驚きの声を漏らし、恐ろしいものを見る目で観てしまう。


「砂煙が、収まり視界が安定したな。ふむ、ヤツの指人形とやらは、指一本を犠牲にするのか。面白い術だ」


 尻餅をつき、ガタガタと震える三門龍介。三門龍介の残りの指の本数は、中指、人差し指、そして親指の三本のみだ。


「さぁ、まだまだ我は止まれんぞ! ふはははは!!」


 再び、右腕に身体全体が引っ張られる。そして、よく見ると、今の一撃で右腕の服が吹っ飛んでいる事が分かった。

 神の攻撃も軽減する契約具だぞ!? なんて、パワーだよ…………


「と、と、止まりやがれ!! テメェの、好きにさせてたまるかよ!」


 右腕を、体全体で押さえ込む。左手で、右腕を押さえ込むが、右腕は暴れる。


「おのれ、小僧! 貴様にも利点はあるのだぞ!」


「うるせぇ! 俺自身の手で、アイツをぶん殴るだよ!」


「貴様ぁぁ! 我に任せれば良いのだ!」


「なんだと……………? くそ野郎が!」



「お、おい! 神崎悠真!!」


 しわがれた声のクソ野郎と言い合っていると、醜い声が俺の耳に入る。

 その声を聞いた瞬間、しわがれた声の主も黙る。


「き、き、貴様が負けてくれるのならば、僕ちんの屋敷の女をやろう! ど、ど、どうだ? 良い考えだろう?」


「は……………?」


 その瞬間、俺の心の奥底に眠るドス黒い何かが、ゆっくりと込み上げてきた。

 ドクン、ドクンと心臓の音が鼓動する。

やっぱり、分割して投稿した方が読みやすいと思い、半分にして投稿しました!

うーん、この流れでいったらあと3話で終わりそうです。

なんか、終わる終わる詐欺してるみたいで申し訳ないですね笑

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