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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第4章 国立神対策高等学校
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希望の一閃

「一の力! 牛刀荼毘!!」


 周りの空気が熱されて、額に汗がじんわりと滲む。

 そして、刀に集中していた魔力は少しずつ形を帯び始める。


「ハアアアアアアアア!!」


「この魔力! 下民のくせに生意気だ!!」


 辺りの空気が熱し、ただならぬ雰囲気なのに三門龍介は下がらない。

 それどころか、こちらに向かってきている。だが、俺からしたら都合が良い!


「ハアアアアアア!!」


 全ての魔力を送り切ると、刀の周りに炎が纏わりつく。

 そして、その炎は大剣の形を模しており、横が1メートル、縦の長さが4メートル程の青き炎の大剣と化す。


「っ…………………!」


 流石に、ここまで大きな大剣が生成されるとは思っていなかったのか、三門龍介は少し食い気味に後退りをする。


「どうせ見かけだけだろう! 行け! 僕ちんの輝かしい黄金の拳よ!」


 少しだけ怖気付いた表情を見せたと思ったのだが、すぐに先程の憎たらしい目つきに早変わりする。

 そして、無数の黄金の拳が俺の元に襲いかかる。この勢いは、手加減抜きで脱落させにいってるな。


「俺には、まだやらなくちゃならない事が沢山あるんだ。」


 右足を力強く一歩前にやり、右足を軸に地面に足を踏ん張る。

 そして、青い炎の大剣である牛刀荼毘の持ち手を両手で握りしめて、刃の先を自分の後ろの方に向ける。


「だから、こんなところで負けてたまるかよっ!!」


 更に持ち手の部分を力強く握りしめる。その度に、身体中が軋むが歯を食いしばる。

 三門龍介の攻撃による身体の負傷と、牛刀荼毘の大幅な魔力消費によって、あと数分も俺の体は持たないはずだ。

 

 だが、コイツだけは許せない。コイツに一度でも()()と言うものを味合わせてやらないと俺は死ぬまで後悔してしまう。


「この下民がぁ! 死に晒せっ!!」


 三門龍介が放った黄金の無数の拳が、遂に俺の目の前まで来る。


「うおおおおおおおお!!」


 間合いを見極めろ。黄金の腕の本数は、約三十本だ。一度に全ての腕を破壊して、再生が追いつかないうちに三門龍介を倒すっ!!


「見えた! ここで決めるっ!!」


 全ての黄金の腕が、5本の指を全て開いて俺の頭や身体を掴もうとしたこのタイミングこそ、同時破壊のチャンスだ。


「このゴミがああああ!!」


「ハアアアアアアアア!!」


 三門龍介の無数の黄金の腕と、俺の牛刀荼毘が激しくぶつかる。


「おのれおのれおのれ! 何故だ! お前の原動力はなんなのだ! お前は体力も魔力も空っぽなはずだろ!!」


 疲れているはずの三門龍介だが、さすが四項家と言うべきなのか、牛刀荼毘と黄金の腕がぶつかったまま引き下がらない。


「原動力だと? クッ……………!」


 少し、体が後ろに押されてしまう。ダメだ、踏ん張るんだ俺!!


「そうだ! 貴様の身体はもう限界なはずだ! なのに、何故僕ちんに抗うんだ! 謝れば良いと言っているだろうが!!」


 三門龍介の力が更に強くなる。そして、着実に俺は足の裏が地面に擦れて後退していく。


「謝れば良いだと? 笑わせんな! それはこっちのセリフだ!」


「き、き、貴様ァ! 僕ちんは四項家だぞ! 高潔なる世界の頂点なんだぞ!!」


 三門龍介は顔を真っ赤に染め上げ、更に力が強くなる。一気に、円の線内側ギリギリに俺の踵がピタリとつく。


「四項家だと?」


「何度も言わせるなっ! 貴様ら下民とは生まれながらに違うのだ!! ドブネズミどもが巣食う会場に足を運んであげただけでも喜ぶべきなのだ!」


 目を血走らせ、三門龍介は唾を口から吐きらしながら叫ぶ。

 三門龍介の、四項家と言えど許されるべきではない言葉に、会場がざわめく。


「生まれながらに違うだと? どこが違うんだ? どこからどう見ても同じだ! いや、お前風に言うなら()()()()とでも言うべきか?」


「ぼ、ぼ、僕ちんが貴様ら下民と同じだと!? それは間違っている! お前の目が腐りきっておるのだっ!!」


 三門龍介は、目がはち切れるばかりに目をカッと開き、その目で俺を睨みつける。


「これ以上は無駄なようだ。俺は絶対にお前を許さないっ! 杏先輩や坂田さん、そしてお前が傷つけた全ての人に謝るまではな!!」


 俺は、右足を一歩前に進める。次は左足、そして右足と確実に一歩ずつ前に前にと進んでいく。


「ぬ、ぬうううう! 何故、下民の貴様らに僕ちんが謝らなくてはならんのだ!」


「謝ってくれるのなら、俺はこの試合を辞退してやってもいい。」



「か、神崎さん!? 何言ってるんですか!」


 俺の一声で、会場が更にざわめく。たしかに、辞退すると言う事は神高には入学できないと言う事だ。

 だが、三門龍介が杏先輩達に謝ってくれるなら辞退してやってもいい。


「貴様らに謝罪するなど天地がひっくり返ってもあり得ない事だ!」


 まぁ、こう言うと思っていた。三門龍介はプライドが高く、下衆な奴だ。コイツが、頭を下げて謝罪するとは到底思えない。


「そうか、なら遠慮なくお前を倒す! うおおおお!!」


「なっ!? な、なんなのだコイツの力はっ!! そのボロボロの身体で僕ちんに近づいてきているだと!?」


 もう一歩、もう一歩………………! もう少しで黄金の腕ごと三門龍介を斬れる!


「おのれおのれおのれおのれおのれおのれ! ふざけるなあああ!!」


 三門龍介も、更に力を加える。今までで一番力が強く、押し返されそうだ。


「ここで俺が倒れても、お前だけは絶対に許さない!! 虐げられた者の気持ちを理解しろ!」


「理解などするものか! 反吐が出るわ!!」


 両手で握っていた持ち手の部分を、力強く握りしめる。

 負傷した右手の人差し指と中指が、ボトリと地面に落ちたが関係ない。今は、コイツの首だけに集中しろ!


「うおおおおおおおお!!」


「おのれええええええ!!」


 歯を食いしばり、足腰に力を入れて中腰の体制になって、大剣を握っている手元に全神経を送る。

 そして、地面を思いっきり蹴って前方に身体を移動させる。

 大剣を身体を捻って振り上げて、その刃を醜い豚と豚に似合わない黄金の腕に振り下ろす。


「このクソ豚野郎がああああ!!」


 約30本の腕と三門龍介の首を肩から断ち切った。肉を斬ったという手応えは手にジンワリと残っている。

 土埃が立ち込めて周りがよく見えないが、三門龍介の体が地面に横たわる音が響いた瞬間、会場は今日で1番の歓声に包み込まれた。

少し投稿期間が空いてしまって申し訳ありません! 

実は、一人暮らしをすることが決まりまして、忙しかったのです笑

あとほんの少しで、この章も終わりです! 最後まで見ていただけると作者冥利に尽きます!

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