苦痛と快楽
「ガアアアアアア! くそがああああああ!!」
ミシミシと骨が軋む音が、骨を伝って俺の耳に届く。
「ブッヒャッヒャッヒャ! 最高だ! あぁ! 面白い!!」
両手を天に掲げて、三門龍介は喜びを全身で体現する。
コイツ、狂ってやがる。心の底から腐りきってやがるんだ!
「あー、でももう飽きたなぁ。ちょっと趣向を変えてみよう。」
顔を真っ赤にして興奮気味だった三門龍介は、不気味なぐらいに急に真顔になる。
「何をする気だ………………!」
だめだ、痛すぎる。意識が朦朧として口がうまく回らない。
「あ? その反抗的な目をまずやめてから、僕ちんに口を開けよ。あの女狐と言い、お前と言いウゼェんだよ!
俺を睨みつけたかと思うと、三門龍介は黄金の腕を操って、俺の腰あたりを力強く握りしめて円の外目掛けて放り投げる。
「うわあああああ!?」
勢いよく放り投げられた俺は、上空で体制を崩して観客席の方に向かって行く。
まずい! このままだと観客席の人たちと衝突してしまう!
観客席の観客たちも、ザワザワと騒ぎ出す。
「なっ!? ガハッ……………!」
観客席の心配などする必要はなかった。観客席は見えないバリアのようなもので覆われているらしく、そのバリアに俺は背中から激突する。
「まずい! このままだと地面に落ちる!」
激しく後頭部をぶつけたことにより、更に意識が朦朧とする。
観客席のある地上から10メートルほどの高さから、俺は頭から落下する。
だめだ! この場所から円の内側に戻ることは不可能だ!
地面に向かって落ちて行く中、円の外で倒れている俺の姿が見えた。
そして、その向こう側には円の内側で立っている三門龍介と、その円の外側で同じように倒れている三門龍介の姿が見える。
どうやら、今こうして動いている俺と三門龍介は本体でなく、瑠紫達との仮想現実で行ったような分身のようなものなのだろう。
あ、だめだ。もう地面に激突する。こんな大変な時に変な事を考えている時点で、俺はもう戦闘を放棄している証拠だ。
「ここまでか………………!」
地面との距離が1メートルになり、俺は歯軋りをしながら目を閉じる。
だが、俺が地面に激突して2時試験敗退をする事はなかった。
「ブッヒャッヒャッヒャ! まだ面白いのはこれからなのに勝手に落ちようとしてんじゃねーよ!」
俺は、汚い声の主の黄金の腕によってくるぶしを掴まれたのだ。
そのおかげで、俺は地面に激突する事はなかったが、頭を下に向けたままダラリとぶら下がっている状態だ。
「え………………?」
コイツは何がしたいんだ? 三門龍介は俺を脱落させる為に場外に吹き飛ばしたのではないのか?
何故、わざわざ俺を助けるかのように足を掴んだのだ。
俺を、円の外に出していたのだから、何もしなければ勝てていたのだぞ!?
「一体何をしたいんだ…………………?」
だめだ、今この体勢でもがいたら地面に落下してしまう。
それは、この試験を脱落するということであり三門龍介に負けて、神高入学は果たせないと言う事だ。
「何って、そりゃぁ…………………」
俺の足を黄金の腕で掴んだ状態で、三門龍介は俺の方にゆっくりと歩み寄る。
俺は、片足を掴まれている状態でぶら下がっているため何もできない。
「面白いからに決まっているだろ! お前は僕ちんを睨んだ前科があるからなぁ! 躾けないといけない! ブッヒャッヒャッヒャ!!」
ニタァと笑みを浮かべ、三門龍介は俺の身体を思いっきり空中で振り回す。
「うわあああああああああ!?」
片足を掴まれた状態で、カウボーイの縄のように振り回されているので、足の関節が外れそうだ!
「ブッヒャッヒャッヒャ! ハエみたいだ! よーし、次はハエ叩きだ!」
空中でクルクルと振り回されている俺を見て、三門龍介は声をあげて大声で笑う。
そして、今度は円の内側の地面に向かって俺を勢いよく投げつける。
「グハァっ!! う、うぅ…………………」
顔面から勢いよく地面に叩きつけられた俺は、何とかフラフラだが再び立ち上がる。
身体を空中で振り回されていたので、目眩が酷い。視界がうまく定まらない。
「丈夫なハエだな。もっと踊って見せろよ!!」
ボロボロで立ち上がった俺に休む暇もあげずに、三門龍介は黄金の腕で追撃をする。
「グアアアアアアアアア!!」
体全体を無数の黄金の拳で殴られる。身体中が悲鳴を上げている。
「おっと! 円の外に出てしまいそうだ。リセットといこうか。」
ふと足元を見てみると、円の内側のギリギリに俺は立っていた。
そして、三門龍介は黄金の腕で、俺の首を力強く締め上げると、円の中央に向かって勢いよく投げる。
「グハァっ!! ハァハァ…………………」
だ、だめだ! もう身体が限界だ! このままだと気絶してしまいそうだ……………!
「おいおい、もう少し僕ちんを楽しませてくれよ。」
地面に伸びた身体を、起き上がらせようと踏ん張ると、俺の顔の目の前でしゃがみんだ三門龍介が汚物を見るような目で見ている。
「お前は何がしたいんだ……………」
コイツが俺を躾けと称して痛めつけるのが目的だとは分かっている。
だが、その先に何があるというんだ? その先には何もないはずだ!
「え、下々の民って理解力なさすぎだろ。僕ちんは偉いから遊んでるの。お前は、道端のアリンコを小さい頃に踏み殺していただろう? それと同じさ。」
あぁ、だめだ。コイツと話していると頭がどうにかなりそうだ。
コイツは、心の奥底からドブのように腐ってやがる。俺たちとは、根本的から考えが違うんだ。
「ハァハァ…………………どうしてだよ! 俺が何をしたって言うんだ!」
俺は、醜い醜体を晒しながら声を漏らした。その言葉に対して、三門龍介が発した言葉は赤子でも分かるものだった。
「いや、だから言ったじゃん。睨んできたからウザかったって。偉い僕ちんを睨むなんて許せないっしょ。」
ウザいから? たったそれだけの理由で俺にこんな痛い目を合わせたのか?
しかも、あの時睨んだのはお前がミツレや坂田さんに酷いことをしたからだ! お前が、100パーセント悪いじゃないかよ………………!
「そうか、よく分かったよ。」
「おお! 下々の民でも分かってくれたか! いやぁ、僕ちんって教える才能もあって困っちゃうなぁ。」
コイツだけはやはり許せない。一神のような四頂家もいるだろう。
だが、今俺の目の前にいるコイツは四頂家が何だろうと関係ない。許されないことをやりすぎだ。
「お前だけは絶対に許せない! 少しは人の気持ちを考えろよ!!」
このままだと俺は確実な負けるだろう。だが、負けても良いんだ。今までコイツに嫌な思いをされてきた人たちの分も、俺が晴らしてやるんだ!!
俺は、三門龍介の両眼に向かって右手の人差し指と中指で目潰しをしようとする。
「遠隔起動。」
だが、俺が三門龍介の両眼を貫く事は出来なかった。
三門龍介の足元の地面から、黄金の腕が一本出てきたのだ。
そして、その腕は俺の人差し指と中指を包み込むように握りしめる。
「万が一を考えて、地面に一本埋めておいて助かったぜ。ったく、下々の民はなんと野蛮なことを考える!」
そう言うと、三門龍介は俺の人差し指と中指をしっかりと掴んだ状態で、反時計回りに勢いよく捻る。
「アアアアアアアア!? う、うわああああああ!!」
それにより、俺の人差し指と中指は骨がバキバキに砕かれて見るも悲惨な状態になる。
特に酷いのは人差し指だ。中指は骨がバキバキに砕かれているのだが、人差し指は第二関節からの指が今にも外れそうになっており、骨が露出してしまっている。
「ブッヒャッヒャッヒャ! あぁ、最高だぁ!!」
右手を左手で抱え込み、苦痛の声も漏らす男の傍には、その光景を煌々と眺めている男がいる。
片方の男は悲痛な声を地の底まで響かせ、もう片方の男はその高らかな笑い声を天高く轟かせているのであった。
地味に投稿頻度が上がっている作者です!
でも、こんだけ投稿頻度が上がってもブクマも何も増えないんですよね笑
やっぱり、初期の方の見るも耐えない文が原因かなのですかね?
でも、ここまで100話以上あるので修正するのもかなりの苦労なんですよね笑
どうしたら良いと思いますかね?