神崎悠真vs.四頂家 三門龍介
「一の力 起動!」
黄金色に輝く三門龍介は、きっと戦闘経験はない筈だ。
だとしたら、一次試験を一位突破はおかしいな。いや、考えるのは後だ! 今は、コイツを倒すことだけを考えろ!
「先手必勝だ! もらったぁ!!」
霊炎を刀に纏わせて、俺は三門龍介目掛けて走り抜ける。
痛みは現実と同じらしいが、俺はコイツを許す事はできない。首を一撃で断ち切らせてもらう!
「僕ちんに、近づくな不敬だぞ。」
俺の刀が奴の首に近づいた瞬間、何かによって俺は真横に思いっきり吹き飛ばされる。
「グハァ!! な、なんだ!?」
左半身が地面に押し付けられたかのように痛い。ギリギリ、円の外に出なかった俺はフラリとしながらも、なんとか立ち上がる。
「高貴なる僕ちんに触る事は許されない! ブッヒャッヒャッヒャ!!」
立ち上がり、三門龍介の方を見る。そこには、背中から無数の金色の腕を生やした男がいた。
背中から数十本生えた黄金の腕は、ユラユラと動いており別の生き物のようだ。
「あれが、アイツの契約魔力か? 手が沢山生えてて不気味だな………………」
俺は、自分が言った言葉の重大さを言った後に思い出した。
まずい、こういう言葉に三門龍介は敏感だ!
「アイツ? 不気味………………? 許さない許さない許さない許さない許さない許さない! 僕ちんの美しさを分からない下民なんていらない!!」
気が狂ったように叫び散らすと、無数の手が俺の方に向かってくる。
一本一本は大した速さではないが、何十本も向かってくると非常に厄介だ。
「くそっ! はあああああ!!」
黄金の腕を一本一本避けて、三門龍介の首を斬ろうと思っていたが、埒があかないので向かってきた腕を一本切断する。
痛覚がもしかしたら共有されているかと思い、断ち切ってみたが三門龍介は痛がる素振りをしない。
どうやら、この黄金の腕には痛覚はないようだ。
「このクソやろうが! 僕ちんの芸術を一本斬りやがって!!」
更に逆上した三門龍介は、背中から無数の金色の腕を再び出す。銃みたいに弾切れの概念はなく、ほぼ無限に出てくるようだ。
「だめだ! これ以上切っても埒があかない!」
迫り来る無数の金色の腕を何度も何度も切るが、俺が腕を切るよりも、三門龍介が背中から腕を生やす速度の方が数段早い!
「ブッヒャッヒャッヒャ! 一度でもこの腕に捕まったら死あるのみ!」
だめだ! このままだと捕まってしまう!
「くそっ! どうしたら……………そうだ!」
迫り来る無数の金色の腕を切れないならば、その根本を断ち切ってしまえば良いんだ!
「三の力、起動!」
俺は、三の力を起動して右手にナイフを握る。そして、それを思いっきり三門龍介に向かって投げつける。
「ブッヒャッヒャッヒャ? そんな見え見えの攻撃当たるわけないだろうが! このバカが!!」
やはり、コイツは三の力の能力を知らない。一気に畳み込む!
「龍介! 気をつけろ! その小僧、何かを企んでいる!」
俺が、ナイフを投げた後に三門龍麻呂がステージに向かって叫ぶ。
おいおい! そんなのアリかよ! アドバイスじゃないのか?
「何言ってんのパパ? こんな下々の民がそんな事をするわ」
「気をつけろ! パパの予感は絶対だ!」
三門龍麻呂は何かを察して、叫び散らすが三門龍介は舐めきった表情を浮かべている。
「遠隔起動っ!」
「あ、あれ? アイツはどこに行った!?」
三門龍介が、そう言った瞬間にはもう遅い。俺は、瞬間移動をして奴の背後に回り込む。
「龍介! 背後だっ!!」
「何言ってんのパパ………………ヒ、ヒイイイイイイイ!?」
三門龍介が、後ろを向いた時にはもう遅い。俺は奴の背中から生えている黄金の腕めがけて、刀を振り下ろす。
「もらったぁ!! 」
30本ほどの黄金の腕を叩き切り、その勢いで首を切ろうとしたが、それは距離を取られて避けられる。
だが、奴の攻撃手段と守備手段であった黄金の腕は根本から断ち切ったぞ!
たしかに無数に生えていたが、根本から一気に切り離したら再生するのは時間がかかるのか、中々元通りには戻らず、切り口がグニグニとトカゲやヤモリの尻尾の断面図のように動いている。
「これで、攻撃手段は無くなったな。自分から線の外に出てくれるなら、俺もお前の首を切らなくて済むんだがな。」
「ヒ、ヒイイイイイイ!」
尻餅をついた三門龍介は、逃げるように後退りをする。
「いや、だめだ。許す事はできない。」
俺は、神を殺す術を学ぶ為に神高を受験した。こんね奴でも一応、人間だ。斬りたくはない…………
なんてな、そんなのは表だけだ。コイツが憎くて憎くてしょうがない! 躊躇う事はない、実際には死にはしないのだから!
「終わりだ!」
三門龍介の背中から切り離された、無数の金色の腕を踏みつけて、俺は奴の首に斬りかかる。
奴の首まで数メートルのところで、それまで怯えていた三門龍介の表情がガラリと変わる。
「ばっかだなぁ、僕ちんは演技の才能があるかもしれねぇなぁ! 」
な、なんだ!? 急に表情が変わったぞ!? いや、今はコイツの首を切る事に集中しろ!!
「遠隔起動。」
三門龍介がそう言った瞬間、奴の首まで1メートルのところだったが、俺は何かから襟を掴まれて宙に放り投げられる。
「な、なんだ!?」
俺は、その何かを確認する為に、吹き飛ばされた先である上空から地面を見る。
だが、その時にはもう遅かった。
「死ね。」
俺の視界の中心にいるのは憎き三門龍介。そして、奴を囲むかのように、地面から生えた黄金の腕が俺めがけて飛んでくる。
そう、先程三門龍介の背中から断ち切ったはずの腕は、タケノコのように天を仰ぎ俺に勢いよく向かってきているのだ。
先ほど、俺の羽織の襟を掴んで上空に吹き飛ばしたのも、切り離した腕の一部だろう。
「くそ! このや」
俺が声をあげるよりも前に、視界が金色に染まる。地面から生えた黄金の腕は、俺の腕や足、首などを掴み、俺を上空で固定する。
「身動きが取れねぇ………………!」
黄金の腕から固定された足首を振り離そうとするが、びくともしない。
「ブッヒャッヒャッヒャ! 良い眺めだぁ…………… まるで、蜘蛛の巣にかかった虫ケラみたいだ!」
ニタニタと吐き気を催す笑顔を浮かべ、三門龍介は下から眺めながら俺に近づく。
「くそっ! 離せよ!!」
何度も何度も黄金の腕を振り離そうとするが、びくともしない。
このままだとやばい…………………!
「あー、少しうるさいな。芸術作品は静かに鑑賞しないといけないってパパも言ってたし。」
三門龍介はそう言うと、上空で固定されている俺に向けて右手を向ける。
「な、何をする気だ!」
「黙れ、下民が。」
そして、手のひらを向けたかと思うと、勢いよく右手を閉じる。
その瞬間、俺の足首を掴んでいた黄金の腕の力が強くなる。
「アアアアアアアアアア!! う、うわああああああああ!!」
掴むなんてものじゃない! コイツ、俺の骨を折ろうとしてやがる! 骨が軋む音がハッキリと聞こえている!
「ブッヒャッヒャッヒャ! これだ! これこそが芸術だ! ブッヒャッヒャッヒャ!!」
「グアアアアアアアアアアアア!!」
汚い高笑いをする男と、苦悶の声を漏らして思わず耳を塞ぎたくなるような叫びをしている男の、二重奏が辺りに奏でられる。
私の記憶が正しいのであれば、地味に投稿頻度上がってないですか!?
まぁ、今書きたいところだからってのもあるのかもしれませんが笑
それにしても、小説って書きたい場面に行くまでの道のりを執筆するのが苦悩じゃありませんか?
あれ!? もしかして私だけ!? 共感してくれる人がいたらいいなぁ笑