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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第4章 国立神対策高等学校
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三門龍介、再び

「ブッヒャッヒャッヒャ! あの時の威勢はどうしたんだぁ? 僕ちんが怖くて怖くてたまらないのか?」


 三門龍介は、ズンズンと俺の方に近寄ってくる。いや、俺はコイツが怖いわけではない。

 何故、奴がここにいるのかに驚いて声が出ないだけだ。


「では、二次試験を始めるぞ。両者、青線のところに移動してくれ。」


 須防は、まるで俺らを仲裁するかのように発言する。その声音は、震えていた。


「あぁ? 僕ちんに命令かぁ? まぁ、合格する事が目的だし、パパからも大人しくしてるようにって言われたから言う事聞くけどさぁ。」


 三門龍介は、須防の方をギロリと睨みつけて、渋々と俺から少し離れる。

 俺は、須防から指定された場所の青線まで移動する。俺の青線から向こう側10メートルほど先に、三門龍介がいる。


「二次試験、第一回戦を始める! 一次試験()()()()、三門龍介!」


 須防の声が響き渡る。だが、その瞬間辺りがざわめく。 

 一位だと!? 三門龍介は一次試験を一位で突破していたのか!? それほどの、実力者だったとは……………


「おいおいおい! 須防とか言ったかぁ? 今、高貴なる僕ちんを呼び捨てにしなかったかぁ? いくら、生徒と教師の間だろうと、それはあってはならんだろ!」


 そう、辺りがざわめいた理由は三門龍介が一位突破したことではない。須防が、三門龍介の名前を()()()()で言ったことだ。

 三門家に俺とミツレ、坂田が行った時には、坂田は年下である三門龍介に対して様付けで名前を言っていたのだ。

 それだけの存在だという三門龍介に対して、須防は呼び捨てにしたのだ。そりゃ、ざわめくだろう。


「っ……………! すいませんでした。一次試験突破三門龍介様!」


 須防は、生徒に対して様付けをするのに抵抗があり、苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべ、苦悶の声でその名を言う。


「ブッヒャッヒャッヒャ! それだよ、それ! 本当だったら不敬罪で殺しちゃうけど、今の僕ちんは機嫌が良いから見逃してあげるよ!」


「…………………………っ!」


 やはり、須防はこんな事は言いたくなかったらしい。須防の表情は、顔を下に向けているが怒りに震えている。


「あ? 返事は?」


「っ! はい…………………」


 だめだ、この場所には三門龍介を止められる者はいない。

 三門龍介の須防に対するこんな酷い扱いは、見たくない。それは、観客席に座っている他の人達も同じで、皆んな苦悶の表情を浮かべている。


「で、では! 対戦相手の紹介をしよう! 一次試験ではあまり良い順位では無かったが、連携した戦いを見せてくれた神崎悠真!」


 俺の名前が言われる。この場合、普通だったら拍手喝采を浴びるはずだが、三門龍介の後だ。そんな自殺行為をする奴は誰一人としていない。


 パチパチ……………パチパチ!


「神崎さん! 頑張ってください!」


 誰の応援もないと思っていた俺が間違いだった。遠くの客席に座っている銀髪の少女が、立ち上がり俺に向けて拍手をする。


「ミツレ………………!」


「あの、女狐ぇ!」


 三門龍介の視線が、立ち上がったミツレに向かう。だが、ミツレは屈する事なく三門龍介を睨みつける。


「悠真! 頑張れよ!」


「悠真くん! ベストを尽くして!」


「神崎悠真、負ける事は許さない!」


 ミツレに続き、坂田そして氷華、流風が立ち上がって俺に拍手喝采と応援を送る。

 それに釣られてか、観客席に座っていた他の受験生達も拍手喝采を俺に送る。その中には、応援する言葉なども含まれていた。


「貴様らぁ!! 麻呂の息子の龍介には何も無しとはどう言う事だ!」


 観客席の中でも、一際目立つ周りから隔離されているゴージャスな席に座っている太った中年男がマイクを持ち、怒鳴り上げる。


「龍麻呂様! 落ち着いてください!」


 そう、一度だけ会ったことのある三門龍介の父親である三門龍麻呂だ。四頂家の一つ、三門家の長である男だ。

 三門龍麻呂は、駆けつけた神高の教師らしき人物に宥められるが、頰に平手打ちをする。


「落ち着くわけがなかろう! このたわけ共が! 今から、龍介にもあの男よりも数倍の拍手喝采を送るのだ!」


 三門龍麻呂は、顔を真っ赤に染め上げる。それにより観客席にざわめきが訪れる。


「貴様らぁ!! 四頂家の言う事が出来んのか! 一族諸共殺処分されたくはなかったら、龍介を讃えるのだ!」


 だめだ、言っている事がめちゃくちゃだ! だが、四頂家ならやりかねないぞ。


 パチ…………パチパチ! パチパチ!!


 誰だって殺されたくはないのだ。今、拍手喝采をしている者を咎める者は誰もいない。

 三門龍介に対して、俺の数十倍の拍手喝采が送られる。


「そうだ! それで良い! やればできるではないか!」


「ブッヒャッヒャッヒャ! きもっちええ!! 下々の民の拍手喝采は僕ちんの高貴な身に沁みるなあ!」


 三門親子の、汚い笑い声が辺りに響き渡る。こんな、拍手喝采は間違っている………………!

 



 十数分続いた三門龍介に送られた拍手喝采は、収まる。


「では、二次試験 模擬演習を始める! 両者、構え!」


 拍手喝采が収まり、須防の甲高い声が響き渡る。


「ブッヒャッヒャッヒャ! 消し炭にしてやるよゴミカス!」


 そう言うと、三門龍介はポケットから()()を取り出して、それを片手で粉々に粉砕する。

 何を割ったのかまでは遠すぎて見えなかったが、割れた音からして石のようなものだろうか。


「……………音、起動! 」


 眩い光、そして凄まじい風が俺を襲う。割った瞬間に、光と風が三門龍介の周りを覆ったので、奴が何て言ったかは聞こえなかった。


「ブッヒャッヒャッヒャ! 高貴な僕ちんの姿を崇めよ!」


 光と風が収まり、俺は目をゆっくりと開ける。そこにいた三門龍介は、ついさっきまでの三門龍介ではなかった。

 

 憎たらしい体型や顔などは一切変わっていないが、修行僧のような服装に身を包んでおり、髪の毛が逆立っている。

 それよりも、三門龍介の服装は修行の身の僧侶身につける筈であるはずなのに、黄金色に輝いており奇異な目をしてしまう。


「契約起動! 」


 俺は、深呼吸をして自分を落ち着かせて高らかに叫ぶ。いつものように、黒色の着物と新撰組みたいな青色の羽織を身につける。


「では、始めっ!!」


 三門龍介と俺が、契約起動をした事を確認すると須防が開戦の声を上げる。


 俺は、コイツを許してはならない。杏先輩や、今までコイツに虐げられた人の為にも勝たなくちゃならないんだ!


この章の盛り上がりどころが始まりました! 個人的に、ここの話はお気に入りなんですよね〜

いつも、行き当たりばったりで執筆していますが、良い感じに進んでいると思っていただけているのなら幸いです!

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