一次試験終了
視界が真っ暗だ。頭がボーッとしており、何も考えることができない。
だが、何かの上に俺が座っている事だけは分かった。
「……………崎さん! 神崎さん!」
誰かが俺の名前を呼んでいる。俺は、暗闇の世界から脱出するために、ゆっくりと目を開ける。
「神崎さん! 私たち全員合格ですよ!!」
「ん……………? ミツレ?」
俺に声をかけていたのは、隣の椅子に座っているミツレだ。頭が回らない俺は、ボーッとしながら辺りを見回す。
「あれ? こんなに人数少なかったっけ?」
確か、椅子に座っていた人は全部で400人ほどいたはずだ。それが今は、半数ぐらいしかいない。
「悠真くん、頭がまだボーッとしてるようだね。私も少し前までボーッとしてたんだよ。」
ミツレの隣に座っている氷華が、身を乗り出して俺を心配そうに見る。
「神崎悠真、流風たちは合格したんだぞ? いい加減目を覚ませっ!!」
氷華の隣に座っていた流風は、立ち上がって俺の額に思いっきりデコピンをする。その衝撃で、俺はよろりと体が揺らぐ。
「いってぇ! あ、ここは最初の…………」
氷華のデコピンのおかげか、俺の思考はいつも通りに戻る。
「あ! ここにいるってことは俺たち合格したのか!?」
そうだ、思い出したぞ! 確か、400人を200人に減らすための試験だったはずだ。
ここに残っていると言うことは合格したと言うことだ!
「だから、何回も言いましたよ……………まぁ、四人とも合格したのは良かったです。」
ミツレは俺を呆れた顔で見たが、ハァとため息を吐くと少し笑顔になる。
「四人とも合格したのか! いやー、良かった良かった!」
俺が、安堵して体を伸ばすと、床に何かが落ちる。
「ん? 何だこれは?」
俺の足元に落ちた何かの用紙を拾い上げる。
「それは今回の試験の成績表みたいなやつだよ。順位とか加点とかが書いてあるんだ。」
不思議そうに用紙を見ていた俺に、氷華が自身の用紙を見せて教えてくれる。
「なるほど、見てみるか……………は!?」
成績表らしきものに書かれていた俺の順位は、200位。
そして討伐数6、戦闘補佐1、特別加点25と書かれており、合計32と記載されていた。
「神崎さん、そんな死にかけのカエルみたいな声上げてどうしたんで………………に、200位!? ギリッギリじゃないですか!」
死にかけのカエルみたいな声を出した俺の成績表をミツレが覗き込んで、驚きの表情を浮かべる。
「ええ!? 200位!? ギリギリじゃん………………」
「200位………………」
ミツレ達3人が驚いている。だが、無理もない話だ。だって、今回の試験の合格定員は200人までだからだ。
つまり俺は200人中200位で、今回の試験でギリギリの滑り込みで合格したと言うことだ。
「そんなに俺の成績悪いのかな…………………」
確かに合格できたことは嬉しいことだ。だが、ここまでギリギリで合格したとなると心の奥底からは喜べないのが人間というものだ。
「私の成績は、討伐数4、戦闘補佐0、特別加点90と神崎さんよりも特別加点というものを除いたら、低いのに順位は30位です。」
たしかにミツレは俺よりもソウルハンターを倒した数だけで言ったら低い。
「まぁ、たしかに俺より倒した数も低いよな。でも、この特別加点ってやつが高すぎないか!?」
特別加点の意味はよく分からないが、90という数字は確実に高い方なのだろう。
「ミツレちゃんは、スネークっていう難敵を倒したから評価が高いと思うよ。」
氷華が、ミツレの成績表を見ながら言う。
そうだ、ミツレは倒すのが難しいと言われているスネークを倒したのだから、それなりの評価があっても良いはずだ。
「ちなみに私の成績は、討伐数15、戦闘補佐20、特別加点25で順位は110位だったよ。100位切りたかったなぁ〜」
どうやら氷華は、俺が思っている以上にリザードなどを倒していたらしい。
「この流れで言わせてもらうけど、流風の成績は討伐数25、戦闘補佐15、特別加点25で順位は98位。まぁ、まずまずね。」
流風も俺が思っていたよりも倒していたようだ。
それにしても、流風と氷華の二人ともに該当することなのだが、そんなにリザード達っていたかな………………
「二人とも俺よりも全然良いじゃねぇかよ。ていうか、そんなにリザード達って個体数いたか? 俺とミツレの場所にはそんなにいなかったんだ。」
「言い訳は情けないぞ、神崎悠真。」
流風が、ニヤニヤしながら俺の肩に手をやる。
「言い訳じゃねーよ! 本当に少なかったんだ!」
「神崎さんの言う通りです。私たちが向かった先は明らかにリザード達の個体数が少なかったです。」
ミツレが、少し険しい顔で俺を見る。何か、思ったことがあったのだろうか。
「どうしたのミツレちゃん? 怖い顔は似合わないよ。」
険しい顔をしていたミツレに、氷華が口角を上げる素振りを見せる。
「あ、はい。すいません氷華。」
「ミツレ、何か思ったことでも?」
少し様子が変なミツレに、流風が問い詰める。たしかに、俺の目から見てもミツレの様子は変だ。
「………………これは憶測なのですが、私と神崎さんが向かった場所では少し前に何者かが大多数のリザードなどを倒した後だと思うのです。」
「誰かが倒した後? なんでそう思うんだ?」
試験が始まってから、そこまで時間をかけることなく俺たちはあの場所に行ったはずだ。その短時間で多数のリザード達を倒すことは可能なのか?
「私たちがあの場所に着いた時、神々廻光理さんと入れ違いになったじゃないですか。」
「神々廻? アイツがほとんど倒したって言いたいのか?」
確かにあの時、神々廻とは入れ違いになった。だが、それだけの理由でアイツが全部倒したと言えるのか?
「あくまで憶測です。ですが、まるで逃げるかのように瀕死のリザードの背後にいたのはあの人です。そして、まるで全ての敵を倒し尽くしたから次の狩場に移動するかのように、何処かに消えました。」
そうだ、今思えばあのリザードは変だった。フラフラとおぼつかない足取りだったし、俺が倒そうとしたら神々廻が、自分の獲物と言っていた。
つまり、あの場所一体のほとんどのリザード達を倒したのは、ミツレの言う通りで神々廻なのか?
「それに、あの人はきっとかなりの実力者です。魔力量も十分にありますし、何よりあの人の目は幾度も戦場を潜り抜けた人の目をしていました。」
ミツレが固唾を飲み込む。魔力探知の得意なミツレが言うのならば、神々廻は十分な魔力を持っていて実力者なんだろうな。
「ていうか、神崎さんはあの人の事を何か知らないんですか!? 同じ七聖剣の持ち主なんでしょう!?」
神々廻について何も知らない俺にミツレが、鋭い眼光で睨みつける。
「い、いやー、俺もアイツの事は名前ぐらいしか知らないし……………」
ミツレは大きなため息をつき、呆れた顔で俺を見る。
「は、はぁ!? 神崎さんの」
「えー、テステス。次の二次試験こと最終試験の説明するから先着いてくれよー。」
どこからか現れた須防が、再び壇上に上がりマイクを握る。
さっきまで辺り一体に散らばっていた、一次試験に合格した受験生は席に座る。
「はぁ、後でしっかり問い詰めますからね。神崎さん、私に神々廻さんの事で何か隠してる事あるようですし。」
須防のおかげで俺はピンチを切り抜けられた。
ていうか、本当に神々廻の事は何も知らないんだよなぁ。
隠している事って言っても、七聖剣定例会議の事だし……………
俺にどうしろって言うんだよ! あの会議は秘密にしとけって言われたんだよこっちは!
やっと一次試験が終わりました! まだ盛り上がる場所があまりない章ですが、二次試験で盛り上がるので読んでくれたら嬉しいです!
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