続 対スネーク戦
「神崎さんだけではスネークの体勢を崩すことは出来ませんでした。流風、あなたも神崎さんのようにスネークの体の上まで行ってください。」
たしかに、ミツレの言う通りだ。俺一人の力では、スネークの体勢を崩さなかった。
だが、俺と同じようにスネークの上に行ける力を待っている流風と一緒なら体勢を崩せるかもしれない。
「分かった。ヤツの体勢を崩すぐらいは流風と神崎悠真で頑張る。」
「あぁ、俺もそれで良いと思うぜ。」
「詳しいことは戦いながら指示します。今は、スネークの体勢を崩して、少しでも高度を落とすことだけを考えてください。」
「分かった、行くぞ神崎悠真。」
流風はそう言うと、地面を思いっきり蹴って跳躍する。自身の体に白い風を纏わせている流風は、みるみるうちに上昇していく。
「二の力起動!」
俺は、二の力を起動して右手にナイフを呼び出す。そして、それを先程と同じようにスネークの頭上目掛けて投げる。
「遠隔起動っ!!」
そう唱えると、次に俺の視界に入ってきたのはスネークの頭上だ。
「来たか、神崎悠真。」
俺の姿に気づいて、流風が小走りで近づいてきた。
「あぁ、なんとかな。だが、体勢を崩すとは言ってもどうする? コイツの首は太すぎて斬れなかったぞ。」
事実、俺は首を断ち斬るつもりでスネークの首に剣を突き刺したのだが、太すぎて斬ることはできなかったのだ。
「そうだろうな。だが、流風たちは少しでもコイツの高度を下げるだけでいい。」
「どう言うことだ?」
「こう言うことだ。旋風 風牙!!」
そう言うと、流風はスネークの背中目掛けて、自身のヌンチャクに纏わせた白い風の斬撃波を飛ばす。
「ガガガガガガガガガ!! B 2パーツソンショウ! ショウガイヲジョキョスル。」
流風の攻撃に気付き、スネークは再び俺と流風を振り落とそうと暴れる。
「グッ! や、やばい!」
俺の体は、スネークの振動に耐えられず宙にフワリと浮く。
「神崎悠真!」
流風はそう言うと、俺目掛けて白い風で出来たロープのような物を投げる。
そのロープの先は杭のようなものになっており、スネークの体に突き刺さっている。
「あ、危なかった……………ありがとう流風。」
俺は、流風の魔力で出来たホープを腰にしっかり巻きつける。
「例は後でいい! 神崎悠真も手伝って。」
流風は攻撃の手をやめていない。流風は魔力回復が早いらしいが、限界があるはずだ。俺も加勢しなくては。
「分かった! 一の力 起動!」
俺は、一の力を起動して霊炎を刀の纏わせる。
そして、流風が攻撃している場所とは少し離れた場所を、何度も斬りつける。
「ウオオオオ!! まだまだぁ!!」
やはり、スネークの体はとても硬い。神やソウルハンター達を運ぶ母艦なのだから頑丈に出来ているはずだ。
「B 7パーツソンショウ! B 2パーツホウカイ! 」
チラリと、流風の方を見てみると煙が上がっていた。その場に流風は居なくて、別の場所を攻撃している。
どうやら、さっきのところは壊し尽くしたようだ。
「俺も負けてられないな! ハアアアアアア!!」
何度も斬りつけていると、攻撃している箇所がひび割れてきている。
「よし、ここにアレを思いっきり叩き込めば! 二の力 起動!!」
刀を鞘に戻して、俺は二の力を起動する。右手に大きな一振りの大剣が握られる。
「コイツで終わらせるっ!!」
両手でしっかりと大剣を握りしめて、ヒビが入った場所目掛けて叩きつける。
「B 7パーツホウカイ! B 3B 4パーツドウイニホウカイ! エラー!エラー!エラー!」
どうやら、流風は計三つの箇所を壊したようだ。そして、スネークは何度もエラーと繰り返している。
「神崎悠真! こっちだ! コアらしき物を見つけた!」
煙の中から流風が現れて、俺の手を引く。流風が俺を連れてきた場所には、横幅が5メートル程の赤色の球体が剥き出しになっていた。
流風の攻撃で体内から露わになったのだろう。
「これは……………!」
「あぁ、見るからに弱点と言わんばかりだ。かなり大きいから神崎悠真も手伝ってくれ。」
「分かった、二の力 起動!」
「旋風 風牙!」
流風がまず、全体的に風牙で傷をつける。さすが、弱点とだけあって守りが中々硬いが、徐々にひび割れていく。
「神崎悠真、あとは任せた……………」
魔力を使いすぎて、流風は少しふらつく。だが、俺と同じように腰に流風自身の魔力で出来ているロープを巻き付けているので、地上に落下はしない。
「分かった、あとは任せろ!」
流風が攻撃したコアは半壊状態だ。ヒビが入り、バチバチと音がしている。
「これで、落ちろっ!!」
コアらしきもの目掛けて、思いっきり大剣を叩き込む。
「ガガガガガガガガガ!! ダイイチコアハカイ! シセイセイギョフカノウ! 」
コアは真っ二つに割れ、スネークは体勢を崩して少しだけ地面に近づく。
「やった! これで……………あ」
俺は、流風の方に駆けつけようとしたらスネークの振動のせいで、ロープの杭が外れる。
「神崎悠真!! 」
流風は俺の方に走ってくるが間に合わない。俺の体は上空に大きく振るい落とされて、地面目掛けて落下する。
だめだ! この高さから落下してら契約起動していようと即死だ!
「氷華! スネークを固定してください! あとついでにドジした神崎さんをお願いします!」
「うん! ミツレちゃん!」
だが、透き通るような声が聞こえたかとか思うと、俺が地面に落下する事はなかった。
「いたたた………………あれ? 無事だ?」
俺は、氷でできた柱の上にいた。そして、そこには氷華と流風がいる。
「悠真くん! 大丈夫?」
氷華が俺に手を差し伸べる。俺は、その手を取って立ち上がる。
「何とかな。また氷華に助けられてしまったな。ありがとう。」
「うん、全然大丈夫だよ! でも、今はあっちに集中して!」
氷華はスネークの方を指さす。スネークは氷華の氷に再び拘束されており、抜け出せていない。
「ミツレ! 神崎悠真は無事だ! 次はどうする?」
流風が、地面にいるミツレに大声で言う。
「良かったです、では氷華! スネークに氷の道を作ってください!」
地上からミツレも大声で言う。
「氷の道!? 私はまだそこまでコントロールはできないよ……………」
そうだ、氷華はまだ自分の力を上手くコントロールできないんだ。
今できるのは真っ直ぐに氷の柱を生成することのみだ。道なんて器用なことはできないはずだ。
「大丈夫です! 氷の柱を三本ほど空中に作ってください!」
ミツレは何を言ってるんだ? 氷華はコントロール出来ないんだぞ?
「どう言うこと!? 三つ柱を作って落とせばいいの?」
「そうです! 時間をずらして一本ずつ落としてください!」
氷の柱を落とす? 道を作るんじゃなかったのか?
「それぐらいならできるかな。分かった! やるだけやってみるけど期待はしないでね!」
氷華は、そう言うと両手をミツレの方に向ける。
「こんな感じかな……………蒼氷氷柱!」
すると、氷華の目の前に5メートル程の氷の柱が横向きに出現する。そして、それをミツレ目掛けて落とす。
「もう二つ……………! ハアアアアア!」
氷華は、もう一つ氷の柱を作り地上に向けて落とす。
そして、最後の三つ目の柱はスネークの方に向けて放つ。
「ハァハァ………………ちょっとごめん…………」
氷華はフラリと倒れる。それを流風が優しくキャッチする。
「ごめん、ちょっと疲れちゃった………」
「大丈夫、あとはあの女狐がやってくれる。」
「そう言えばミツレは一体何をしようと…………………はぁ!?」
俺が、地上にいるミツレを見ようとすると、何かが凄まじい速度で俺の目の前を通り過ぎる。
「神崎さん! あとは私に任せてください!」
「ミ、ミツレ!?」
そう、ミツレは氷華が放った氷柱の上を走っていたのだ。
一つ目の氷柱を思いっきり駆け上がり、落下してくる二つ目の氷柱に飛び移っているのだ。
「ガ、ガアアアアアアア!! モクヒョウホソク! センメツスル!!」
スネークの周りを覆っていた氷が壊される。そして、スネークの方に向かっているミツレに狙いを定めて大口を開ける。
「ミツレ! 熱線が来るぞ! 避けろ!」
スネークの口が、赤く光っている。エネルギーを溜めているようだ。
「大丈夫です。私だって隠れて特訓してたんですから!」
ミツレはそう言うと、二つ目の氷柱から三つ目の氷柱に飛び移る。
そして、再び思いっきり駆け上がって、スネークに向かって飛翔する。
「霊炎 母なる鎌!」
大口を開けるスネークの目の前に飛翔したミツレの右手に、少女の体に似合わない青き炎で作られた大鎌が握られている。
「あの技は! マザーの………………!」
ふらついた氷華の肩を持ち、流風がそう言う。そうだ、あの技はエキドナの……………
「母なる者から受け継がれし、この技を受けなさい!」
ミツレは、空中で大鎌を両手でしっかり持ち、スネークの頭部を一刀両断する。
「ガ、ガ、ガ、ガガガガガガガガガガガガ!! メインコアソンショウ! カツドウテイシ……………………………」
頭を真っ二つにされたスネークは、地上に真っ逆さまに落下する。そして、地上に撃墜すると爆破する。
「やりました……………」
「ミツレ!?」
ミツレは、俺たちの方にピースをしたかと思うと、スネークと同じように地上に落下する。
「くそっ! 間に合え! 三の力 起動!」
「神崎悠真!?」
「流風は氷華を見ておいてくれ! 俺はミツレを助ける!」
「分かった!」
「遠隔起動っ!」
ナイフをミツレに向かって投げる。そしてナイフがミツレを過ぎた辺りで唱える。
「グハッ!! イッテェ……………」
上空5メートルほどでミツレを抱き抱えた俺は、反射的に自らの背中を地に向けて落下したのだ。
そのため、背中がとても痛い。マジで、契約起動してなかったら死ぬ高さだな。
「神崎…………さん?」
俺の胸で抱き抱えられたミツレは、ゆっくりと目を開けて起き上がる。
あ、この体勢はやばい………………
「す、す、すすす、すいません!」
顔を真っ赤に染め上げたミツレは、急いで俺の体の上から離れる。
具体的に説明すると、ミツレは俺の股あたりに跨っていたのだ。うん、この体勢はアレだよね? ナニかは言わないけどさぁ!
「い、いやいや! 大丈夫だ!」
いや、絶対気持ち悪い顔になってるだろ! おれぇ!!
「二人とも大丈夫だった!? すごい音したけど……………って、二人とも何で顔が赤いの?」
俺たちの元に、氷華と流風が駆けつけて来た。どうやら、氷華ももう走れるぐらいには回復したようだ。
「いやいや! 何でもないぞ! それよりも氷華は大丈夫か? 」
これ以上、この話はやめよう。そのために、別の話題を振ることにする。
「すいません、氷華。無理させたみたいです………………………」
ミツレは、立ち上がって氷華に謝る。
「ううん、ミツレちゃんは謝らなくてもいいよ〜 ちょっと立ちくらみがしただけだしね。」
氷華は、ニコッと笑ってミツレの手をギュッと握る。ミツレは、少し照れくさそうに微笑する。
「ハァ、3人とも、イチャイチャしてないでアレ見てみて。」
流風が、深いため息を吐きながら言う。
「な!? イチャイチャなんかしてないぞ!」
「そうです! 神崎さんとイチャイチャなんて死んでもごめんです!」
「うーん、私もちょっとキツイかな〜」
ん? もしかして俺って今落ち込むべきなのかな? なんか、めちゃくちゃ悲しいこと言われた気がするんだが!?
「はいはい、それよりもアレ見てみて。」
流風が指差した方向は、スネークが墜落して爆破した場所だ。
スネークの体は、ゆっくりと光に包まれて消えていっている。どうやら、完全にトドメを刺したようだ。
「スネークがどうかしたのか?」
「いや、正確にはスネークの腹だ。」
「ん? なんだ、アレは……………?」
スネークの腹から、何かの残骸のようなものが転がり出ている。
そして、それはスネークと同じように光に包まれて消えているが、腹の部分だけやけに光っている。
「あ、分かりました! あのやけに光っている部分は、格納されていた他のソウルハンター達ですよ!」
どう言うことだ? 確かに細切れになった残骸をよく見てみると、リザードの手の形をしているように見える。
「てことは、ミツレちゃんは格納されていた他のソウルハンターごと倒したってこと?」
「あぁ、そのようだ。ミツレは、今回の試験で一番手柄を上げたと言っても過言ではない。」
不思議そうにスネークの前にしゃがみ込んだ氷華に、流風が答える。
「いや、それは違いますよ。」
土埃を払いながら、ミツレは俺たち3人の前に立つ。
「神崎さんと流風によるスネークの体勢崩し、それと氷華の拘束によって倒す事ができたのですから、これは私たち四人の手柄です。神崎さん、流風、氷華ありがとうございました。」
ミツレが微笑みながらそう言う。こんな微笑みをされたら童貞には大ダメージだぞ?
「ミツレらしいな。」
「へへへ、みんなで倒したか〜 良い響きだね。」
「………………そう言う捉え方もできるか。」
ミツレは、ふと我に返って少し照れくさそうにする。
「レディースアーンド、ジェントルメーン! 試験終了をお知らせするよ! 」
空から、甲高い声が聞こえる。この声は、須防だ。
「10秒後、転送するよ。そして、無事に第一の関門をクリアした上位二百名は元の席に戻れるが、脱落した者は受付所の前まで戻されるからね〜 じゃ、転送開始!」
それだけ言うと、須防の声は途絶えた。
「どれぐらいの人が残っているのかは分かりませんが、席に座っていると良いですね………………」
「うん、ちょっと不安だね……………」
「受験者数の半分だからな……………」
ミツレと氷華、流風の3人は緊張しているのか少し顔が強張っている。
こう言う時は……………
「ま、結果なんて気にしたところでだよ。俺たち四人であんなに大きなスネークも倒せたんだ。きっと、みんな合格してるよ。」
その瞬間、俺の体は光り始める。それに続いて3人の体も光り始める。
「そうですね、神崎さんの言う通りです。」
「うん、今は信じるのみだね。」
「神崎悠真にしては良いこと言うじゃないか。」
3人の顔から緊張は消えて、ほがらかな笑顔が現れる。
「あぁ、また後で会おうぜ。」
「そうですね。」
「うん!」
「フッ、もちろんだ。」
そして、俺たち四人はほぼ同時に光に包み込まれて消える。
実は、この話って記念すべき100話目なんですよね!!
正直、こんなに続けるとは思わなかったので作者も驚きです。
何年前から小説を投稿したは良いものの、投稿ペースが劇遅なので貧弱作家のままですが、これからも応援してくださると嬉しいです。