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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第1章 悲劇の始まりと終わり
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溢れた思い

「私と契約してくださいませんか? 私も、あなたと同じように神がとても憎いです。一緒に神と闘いませんか?」


 そう言うとキュウビは、俺の前で頭を下げた。会ったばかりのやつに頭を下げるほど、この子は神が憎くて憎くてしょうがないのだろう。

 だが、俺はキュウビの願いには答えられない。だって、俺は大切な人やペットを守れなかったんだ。

 そんな俺が人を神達から守れるはずがない。俺の復讐は、誰にも迷惑がかからないように一人でやるんだ。


「どうですか? 私と契約してくれますか?」


 キュウビは、頭を上げて綺麗な眼で俺を見つめる。


「ごめん、 俺には人を守るなんて事は出来ない。沢山の人が俺の前で死んだのに何もできなかった……………」


 キュウビは、俺の手をギュッと握る。俺は驚き、キュウビの顔を見る。キュウビは、少し困ったような顔をしている。


「似ていますね……………」


 少しだけ、悲しそうな表情でキュウビは俺を見つめる。


「え?」


「あなたは、昔の私と似ています。あなたの眼からは、憎悪、憎しみ、怒りそして、悲しみ。そんな感情が溢れています。」


 コイツに何が分かるんだ!? 俺は、大切な人を目の前で殺されたのに何もできなかったんだ! 


「そんな事は無い! 俺は! 俺は………………!」


 キュウビを頭ごなしに罵倒しようとしたが、俺の口からは何も出ない。

 身体が震えて俺を哀れんだのか、キュウビは俺をギュッと抱きしめる。抵抗しようと、腕を振り払おうとするが、徐々に俺の身体は、キュウビの温かい体温に包容される。


「あなたが、責任を感じる事はありません。あなたは、何も悪くないです。自分に素直になってください。」


 俺は、その言葉で体の奥から何かがこみ上げてきた。この感じはなんだ? とても暖かく、安心できるこの感じは………………

 その時、体の奥から込み上げてきた何かは大きく破裂した。


「俺は、大切な人が目の前でいなくなるのが嫌なんだ! キュウビと契約したら、また俺の前から大切な人が奪われてしまう…………………そんな事はもう嫌なんだ!!」


 俺は、涙が止まらなかった。会ったばかりの女の前で泣くのは、男としては恥じるべき行為なのかもしれない。

 だが、今の俺にはそんな事はどうでも良かった。俺は、キュウビの胸の中で赤子のように泣きじゃくる。


「泣かないでください。全部、神が悪いんです。それに、私はあなたの前から絶対に消えませんよ? ずっと、あなたの隣にいます。 絶対に………………」


 キュウビは、再びギュッと抱きしめる。泣きじゃくる俺をなだめるキュウビの手は、ほんの少し震えていた。









 どれくらい泣いたのだろうか、いつの間にか寝落ちしており、目が醒めると俺の身体は横になっていた。

 しかし、頭が何か柔らかい物にのっている。俺は不思議に思い、体制を変えて正面を向いてみる。

 そこには、長い銀髪の少女がいた。


「うわあ!?」


 俺は、とっさにキュウビの膝から落ちる。


「やっと、起きましたか? もう大丈夫ですか?」


 俺は、嫌な予感がしたのでキュウビに質問をしてみることにした。


「俺、どれぐらい泣いてた? あと、どれぐらい寝てた?」


「30分は泣いてましたよ。あと、1時間ぐらい私の膝の上で寝てました。」


 キュウビがそう言った瞬間、俺の頬は一気に赤く染まり上がる。

「1時間!? そんなに寝てたのかよ!?」


「はい。寝てましたね。寝顔もバッチリ拝見させてもらいました」


 そして、追い討ちをかけてきたキュウビの言葉で、もっと頬が赤くなる。


「頼むから、泣いてた事は黙っててくれ………………」


 すると、キュウビは立ち上がり、衣服についた土埃を払う。


「はい、考えておきます」


「お前絶対に言うだろ!? 顔が少し笑ってるぞ!」


「い、いえ! 誰にも言いませんよ……………」


 そう言うキュウビだが、そっぽを向いており、さらには肩が少し震えている。


「おいいい! 絶対に笑ってるだろ!」


 コ、コイツ! 絶対に笑ってやがる!


「プッ! アッハッハッハ!」


 キュウビは、クルリと体をこちらに向け、口を大きく開けて笑う。

 堅苦しかった今までの彼女からは、想像出来ない満面の笑顔だった。キュウビの笑顔に俺は、少しドキッとした。


「わ、笑ってるじゃん!」


「だって……………さっきまであんなに悲しそうな顔をしてたのに、もうこんなに元気になっていて……………アハハハハハハ!!」


 もしかしたら、キュウビなりの気遣いだったのかもしれないな。落ち込んでた俺を励ますために、わざとオーバーに笑っているのかもしれない。

 でも、その笑顔が今の俺にはとても効くな…………………


「笑いすぎだろ!  でも、ありがとな。なんかキュウビのおかげで吹っ切れたよ。」


 キュウビは、自分の長い九本の尻尾で涙を拭く。


「いえいえ、私はあなたなら立ち直れるって信じてましたから。」


 いいや、キュウビは間違っている。俺は、キュウビがいなかったら立ち直る事は出来なかっただろう。

 もし、あの場にキュウビが来なかったら俺は死んでたし、助かったとしても絶望に支配された俺は、神に対して悪い復讐の仕方をしていただろうな。


「そっかな……………」


「さ! 避難所がある山口県まで行きますよ! 多分、空を飛べる妖獣が辺りにいるはずです。あ! いましたよ! おーい!」


 キュウビが手を振る先の遥か上空には、大きなドラゴンがいた。ドラゴンは、俺たちに気づくと急降下をする。


「マジモンのドラゴンだ…………」


 RPGでしか見たことがない赤色のドラゴンが、俺たちの目の前に降りてくる。ギロリとした凶暴そうな眼、全てを引き裂きそうな鋭い爪と、大地を踏み締める脚はまさにゲームの中にいるドラゴンそのものだ。


「誰かと思えばキュウビか! 今まで、10人ぐらいは救助したな! でも、この見た目だからよお…………怖がられて大変だぜ……………」


 見た目が怖い割には、優しそうな声をした赤色のドラゴンはゆっくりと着陸する。その大きさは、15メートルはありそうだ。


「バハムートでしたか。山口県まで良いですか? 私は空は飛べないんで…………」


 どうやら、キュウビは空を飛ぶ事は出来ないらしい。まぁ、翼が無いと飛ぶ事は出来ないよな。


「おお! 良いぞ! 乗った乗った!」


 バハムートと言われたドラゴンは、威勢の良い声をあげる。そして、バハムートは俺の方をギョロリと見る。いくら、味方のドラゴンとは言えど、その眼で見られたら少しだけ身体が慄いてしまう。


「大丈夫だったか? 身体中ボロボロじゃないか!早く行くぞ! 兄弟!」


 兄弟? まぁ、よく分からんが良いやつそうだ。


「きょ、兄弟? よく分からんが頼む!」


 俺は、バハムートの背中にまたがる。ゴツゴツとした背中には、鱗があるが意外に乗っても痛くない。強いて言うなら、鱗は硬いのでケツに食い込んで少し痛い。


「全速力で飛ばすぞ! しっかり捕まれよ!」


 大きく翼を羽ばたかせて、バハムートが宙に浮く。す、すごい! 本当に空を飛んでいる!


「ええ、よろしくお願いします」


「行くぞ〜!」


 バハムートは、目的の山口県に向かって飛び出す。それにしても、めちゃくちゃ速い。新幹線ぐらいあるんじゃないか?


「あわわわわわわわ!! 速い!ヤバい! 落ちる!」


 俺が、慌ててふためいていると、俺の前に座っているキュウビが後ろを振り向く。


「しっかり! 私の腰辺りに掴まってください!」


「あ、ああ!」


 プニュプニュとした何かを俺は掴んでしまった。柔らかいな………… しかし、少し膨らみが小さい。

 何か視線を感じたので、俺は前を向く。向いた先には、顔を真っ赤に赤面させたキュウビがいた。

 どうやら、俺はキュウビの胸を両手でがっしりと掴んでしまったようだ。


「 これは、わざとではなくて、掴まってって言われたからその……………!」


「言い訳は聞きません! 破廉恥!」


 容赦なくキュウビの平手打ちが、俺の頬を直撃する。その衝撃で、俺は体勢を大きく崩す。


「ヤバい! 落ちるぅぅ! うわああああ!!」


 俺は、遥か上空から落ちた。落馬ならぬ、()()である。


「あ! 神崎さん! ゴメンなさい!」


「ゴメンなさいの前に助けてくれぇ! うわああああ!!」


 一瞬にして、キュウビの声が聞こえなくなった。ヤバイ! このままだと死ぬ!


「バハムート! 神崎さんが落ちました! 助けてあげてください!」


「助けてあげてって……………お前が突き落としたみたいなモンだろ!? ったく………… しゃーねーな!」


 さっきまでゴマ粒ぐらいの大きさでしか見えなかったバハムートは、体勢をほぼ垂直にして俺の方に急降下する。


「助けてくれぇ!!!」


「神崎さんの声です!」


 横10メートルほどのとこにいるバハムートと俺の目が合う。


「そこか! 待ってろ!」


 バハムートは、体勢を今度は横向きに変えて、俺の方に飛行する。


「神崎さん! こっちです! 私の手を!」


 そして、キュウビの差し出した手に掴まる。なんとか助かった………………


「し、死ぬかと思った………」


 まだ、心臓がバクバクとしている。今日だけで、何回走馬灯を見たんだ?


「ったく、女子の胸を触るからです! もう触ったりしたらいけませんよ!」


 も、もう触れないだと!? それだと、俺は一生童貞のままじゃないか! 


「もう、一生触れないのか!?」


「また、突き落としますよ?」


 キュウビの目が、ゴミを見るような目で怖かったので、これ以上は言わないでおこう。

 空の旅はもう少し続きそうだ……………

下手クソです!

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