日常が終わった日
ジリシリリリリリ……………… やかましい目覚まし時計の音と共に、少年の朝は始まる。
「悠真ー! 朝よ!起きなさい!」
目覚まし時計をかき消すぐらいの声で母親が怒鳴ってきた。
「へーい、起きますよ〜」
俺の部屋がある二階から降りると朝ご飯が出来ていた。ご飯、味噌汁、卵焼きといった、これぞ朝の定番!って感じである。ちなみに、俺は目玉焼きは半熟派である。
「本当にあんたは中学三年生の受験生なの?ほんっとに顔がだらしない! お父さんも、黙ってないでなんか言ってやってください!」
そんな、口うるさい母親からバトンタッチされた父親は、眼鏡をクイッと上げると困った顔で、
「んー、そうだな悠真。もう少し成績を上げれるように努力してみろ。努力はきっと身になるんだ……… おいテレビを見てみろよ」
俺と母親はテレビを覗き込む。そこには、一人の女性のニュースキャスターが映っていた。新人なのか、少しだけドギマギしている。
「次のニュースです。今日は神の破壊から、ちょうど50年目の年です。あの時は、とても凄かったそうです。そこで、今日はこの方に来てもらいました。政治家の上村健一さんです。それでは上村さんどうぞ」
すると、70歳ぐらいのハゲかけたお爺さんが出て来た。チラッと母親と父親の顔を見て見たら、真剣な眼差しで見ていた。俺もテレビに視線を戻すとお爺さんの話が始まった。
「あの時の事は忘れない。2090年11月2日、その時の世界は今より、ずっと文明が進んでおった。空を飛ぶ車やボタン一つで行きたい場所に行けたりしておった。」
そういえば、学校で小さい頃からよく終わってたな。人間の環境破壊に怒った神による、神の破壊。これにより、それまで人間が環境を犠牲に積み上げてきた全てが奪われ、壊されたって言ってたな。
上村は、首を横に振ると、お茶をグイッと飲む。そして、再び話を続ける。
「しかし環境は、最悪じゃった。空は曇り、水は濁り、木なんて生えて無かった。それでも人は進んだ技術を利用して室内で野菜を育てたり家畜を飼っていたりして、不自由の無い生活を当たり前のようにおくっていたのじゃ。」
まぁ、無理もないよな。技術が発展すればするほど、環境というものは悪化してしまう。これだけは、仕方のないことなのかもしれない。
「そんな自然を大切にしない人類に、神は怒ったのだろうか、急に空に何本もの光が差し込み、そこから羽が生えていたり角が生えたりした奴らが降りてきおった。人々は神達を倒そうと、数々の兵器で神に立ち向かったんじゃ。」
羽が生えたり、ツノが生えたりって………………ファンタジーの世界じゃあるまいし、そんな奴ら本当にいるのか?
上村は、机をドンっと叩き、息が荒くなる。
「しかし、神の前では全然効かなくて無力だった。そこからは、最悪じゃった。全人類の約半分が神達に、よって連れていかれた。そして、この世の物とは思えない力で街は次々に破壊されていったのじゃ。」
おいおい、マジかよ。技術が進歩していたのなら、兵器技術の水準もかなり高かったはずだ。それなのに、神に対して兵器が無力ってのは、神がどれだけヤバイ奴らなのかが分かるな。
「そして、一人の神が、こう言ってきたのじゃ「あまり調子にのるなよ。人間の分際で自然を破壊するとは。」と、言い残して人類の努力の結晶である物を全て破壊して、攫われた他の人達と共に消えていったじゃ。そして、その後の人類は」
ブツリッという音と共にテレビは消えた。テレビの鮮やかな色は、一気に真っ黒となる。
「あーあ、良いところだったのに母さん。もう一回テレビつけてよ!」
「つけてもいいけど悠真、あんた学校の時間危ないんじゃないの?」
母さんは、テレビの上にある掛け時計を指差す。
「うわっ! 本当だ! ヤベェ、仁に怒られてしまう!。行ってきまーす!」
「行ってらっしゃーい」
「あ! サクラにエサをあげといて!」
「あー、分かった〜」
そして、俺は靴箱の上に置いてあるドックフードを片手に持ち玄関に向かう。
玄関の扉を開けると、サクラは嬉しそうに吠えていた。
「ワンワンッワン!」
「よしよーし、サクラほら朝ご飯だ。じゃ、俺は学校が、あるから行ってくるな!」
ドッグフードを適量、餌皿の中に入れ、サクラの頭を撫でる。
そして、俺は駆け足で友達の仁との、いつもの待ち合わせの場所に行った。待ち合わせの場所の50メートル前ぐらいになると、バカでかい声が聞こえてきた。
「おーい悠真〜! 10分遅刻してるぜよ〜」
俺と同じぐらいの中肉中背の男、坂本仁が仁王立ちしていた。天パ混じりの剛毛な黑髪、細身ながら鍛え上げらている両手で俺に手を振る。
「ゴメンゴメン! さ、早く学校に行こう!」
「じゃ、行くとするぜよ!」
「てか、仁、お前まだその語尾を付けてるのかよ………… これを言うのを何年目かよ」
そう、この男は何何も前から、ずっと語尾にぜよを付けているのだ。もう聞き慣れたから違和感はないが、初見の人だと驚いてしまうだろう。
「それは、ワシの苗字があの坂本龍馬と同じ坂本だから仕方がないぜよ。それにワシは、幼い頃から坂本龍馬が大好きだったぜよ。」
仁は、得意げにドヤ顔で話す。この顔も何年見たことか…………………
「ま、それがお前の普通だもんな」
「そうぜよ!」
そんな話をしていると直ぐに学校に着いた。俺と仁のクラスは3年1組だ。3年1組の靴置き場に向かう。
すると、二人組の女子の会話が耳に入ってきた。見たことのない顔から判断するに、この2人は他クラスだろう。
「ねえねえ、今日の朝のニュース見た? あの神の怒りから50年が経ったんでしょう? 私、あのお爺さんの話を聞いていて疑問に思ったんだけど、神は私達、人間が環境を破壊していた事に怒ったんでしょ? それなら、なんで沢山の人間を攫ったんだろう?」
「あー、確かにそうかも! でも私達、人間がその後に環境を元どおりにしたら神は二度と来なかったんでしょ? ま、それなら別に良くない? 昔の話なんだしさ!」
「そうだね! そんな事を疑問に思う時間が、あるなら勉強しなくちゃね。私達はもう、受験生なんだから!」
「そうそう、気にすることはないよ!」
そして、女子二人組は消えていった。
確かに、俺も疑問に思っていた。環境に対して怒っていたのなら、何故何の為に人間を沢山攫っていったんだ? 街などを破壊する事は環境に対する怒りだという事が分かる。
しかし、人間を攫うのに意味はないはずだ。もしかして、神達は最初から人間を攫う計画を立てていて、たまたま環境が最悪だったからそれを理由に街を破壊し、本来の目的である人間を攫ったんじゃないか? 一体、何の為なんだ?
「おい、どうした悠真? さっきからボーッとして。どうかしたぜよ?」
俺とした事が、柄にもなく考え事をしてしまった。そんな俺を、仁は心配そうに見る。
「ん!? ああゴメン。それより時間は大丈夫なのか?」
「ああー! あと1分でチャイムが鳴るぜよ」
「何!? ヤッベェ走るぞ!」
――――――――キーンコーンカーコン
このチャイムの音はどうしても好きになれない。なんで、こんな不快感のある音にしたんだろうな。
「ふう、ギリギリ間に合ったな・・・・」
「危なかったぜよ・・・」
ガラガラという音と共に一人の若い女教師が入って来た。俺たちの担任だ。
「はいはーい 皆んな席に着いた着いた〜」
クラスメート達は席に座る。ある程度静かになってから先生が話し出した。
「えーと、今日はあの日から50年も経ちました。まあそれは置いといて、今日の一時間目に集会があります」
その事を聞いたクラスメート達はザワザワとする。なんだと、それはダルいな。一限目は寝るのが相場と決まっているのに、あんなに寒い体育館では寝れないぞ。
「はいはーい! 静かに! なんでもその人はお偉いさんだから皆んな静かに聞くように」
すると、一人のクラスメートが質問をした。
「せんせー、その人はどんな人なんですか」
「んー、私も廊下ですれ違っただけだけど、男性でかなりのイケメンで背が高かったよ」
その言葉を聞いて女子達は騒ぎ出す。しかし男子は悲しそうな表情をする。
うむ、イケメンは確かに興味がないな。それどころか、心の奥底から何かがモヤモヤと湧いてくる。
「とりあえず、朝自習が終わったら廊下に並ぶように!」
「はーいっ!」
と、生徒達は返事をする。
「悠真、どんな人か気になるぜよ!」
「うん、確かに気になるな」
まぁ、ぶっちゃけどうでもいいかな。女の人だったら少し興味があったかもしれんが。
――――――キーンコーンカーコン
朝自習の終わりのチャイムが鳴ると、生徒達は廊下に並ぶ。そして、並んで体育館に行くと全校生徒が座っていた。俺たち1組も急いで座る。
「ええーゴホンゴホン、それでは集会を始めます。」
白毛混じりの頭の校長が前に出て来た。コイツ、話長いんだよなぁ………………
「今日は皆さんに大切な話があります。今日は神の怒りから50年が経ちました。私はあの時、中学校3年生でした。そして、あの日に私は母を奪われました。とても、悲しかったです。なので、あなた達は環境を大切にして神の怒りを起こさないようにしてください。では、本題に入ります。今日は、あなた達に話があると環境省の方が来てくれました。では、皆さん拍手で迎えてください。」
すると、後ろの扉が開き中からスーツを着た30歳ぐらいの男性が出て来た。身長は高くて髪型はオールバックにしている。とても堅物そうな顔をしている。ぬぬ、確かにイケメンであるな……………
全校生徒の拍手を受け男性は校長の横に立つとマイクを握り、
「環境省から来ました坂田 修です。皆さんに話がしたくて時間を頂きました。よろしくお願いします。」
怖そうな見た目の割に丁寧な挨拶をした坂田という男は話をしだした。
それにしても、イケメンだな。いわゆる、イケオジとかいうやつか?
「先程、校長先生も話をしてたとおり、今日は神の怒りから50年が経ちました。あれから、人類は環境を大切にしてきました。環境が、元どおりになると神が来ることはありませんでした。私達、環境省はもう二度と、あんな悲劇が起きないように環境を大事にするように心がけています。皆さんは、これからも環境を大事にしてくださいね。これで私の話を終わります。ありがとうございました」
すると、全校生徒が拍手をした。坂田はそれに対して一礼をすると校長にマイクを渡したすると校長が、
「えー、では皆さん坂田さんはお仕事の都合のためこれで、お別れです。皆さん!拍手で見送りましょう」
全校生徒は拍手をし、坂田は体育館を後にする。
「おい、悠真」
俺の後ろで、あぐらをかいていた仁が、背中をトントン叩く。
「なんだ? 仁。」
「あの、坂田とか言う人の話、短かったぜよこれは集会がすぐに終わるぜよ!」
仁は、目をキラキラと輝かせて希望に満ちている。
「おいおい仁、校長の話は長いだろ……………」
「あぁ、そうだったぜよ……………」
なんだかんだあって一時間が経過した…………… あの、クソ校長がああ!!
「では、これで集会を終わります。それではさようなら」
「さようなら〜」
全校生徒は、あーあやっと終わった〜とか、言ったりケツが痛〜とか口々に言っている。坂田って人の話よりも、校長の自慢話が何倍もあったのは許せんな。
そして、3年1組はクラスに戻る。
「二時間目は体育ぜよ! しかもワシ達の得意な剣道ぜよ!」
俺と仁は、幼い頃から剣道をしていた。そして、中学でも剣道部として活動していたのだ。
まぁ、夏の大会で予選敗退で引退したんだがな………………
「おお〜、そうか楽しみだな!。久しぶりに竹刀を握るな〜」
「確かに、引退試合以来ぜよ!」
そして、俺たちは体操服を着て武道場へと向かう。
武道場に着き、防具を身に着けた。久しぶりに着けたがこの感触が懐かしい。すると、
「 悠真! 勝負ぜよ、今までの戦績は360試合中、ワシが180勝180敗ぜよ!」
真剣勝負の回数を俺たちは、ずっと記録していたのだ。そして、引退試合の数日後に最後の試合をした時は、俺が負けたのだ。
「お前、まだそんな事を。でも、いいぜ、決着をつけよう。先生、審判頼めますか?」
すると、髭面の先生が
「お! 元剣道部のキャプテンと副キャプテンの試合か! 面白い審判をしよう!」
こんな俺と仁だが、こう見えて剣道部のキャプテンと副キャプテンなのだ。長年剣道をやっているという理由だけで選ばれた俺たちだが、最終的にはジャンケンで俺がキャプテン、仁が副キャプテンに決まった。
周りに人が集まってきた。ザワザワしている。この雰囲気は懐かしいな。緊張が切り詰めていて嫌いじゃない。
「では神崎 悠真と坂本 仁の試合を始める」
合図と共にまず、俺は距離を取る。しかし、仁は突っ込んできた。俺はそれを受け流し、仁の頭を狙う。だが、それは止められた。
剣道をしていると、汗水流してたあの頃に戻れた気がして楽しい。この時間が永遠に続いたいいのに。
俺と仁の実力は同じくらい。この勝負は、勝ちたいという気持ちが強い方が勝つ。俺は仁の面に一撃を決めた。
「一本!」
周りから黄色い歓声があがる。
そして、続きが始まる。俺の小手の一撃を仁は、ヒラリと避けて、仁のカウンターの一撃が俺の面を直撃する
「一本!」
そして、激しい攻防が続いた。さっきまであった黄色い歓声は静かに消えて、皆んなが固唾を飲み込んで俺たちの結果を見守っている。どちらが勝ってもおかしくはない。
しかし、そんな戦いを遮る音が入ってきた。奴が来たのだ。
―――――――キーンコーンカーコン
「ストップ!、すまないが神崎、坂本、チャイムが鳴ったから終わりだ。また、いつか決着をしよう。」
意外な形で終わったが周りは拍手をしてくれた。くそ、引き分けか。だが、久しぶりに思いっきり体を動かせて楽しかったな。
そして、俺たちは更衣室で急いで制服に着替える。
「悠真、久しぶりにやったけど楽しかったぜよ! また、今度頼むぜよ!」
汗だくの体を拭きながら、仁は俺の隣にやってきた。
「おう、もちろん。次は決着をつけようぜ」
「ワシが勝つぜよ!」
「望むところだ!」
俺たちは制服に着替え教室に戻る。体育をした後の教室のモアっとした雰囲気は好きではない。
「3時間目は何ぜよ?」
前の席に座っている仁が、首を後ろにニュッとして俺の方を向く。
「3時間目? ああ、社会だな」
「社会ぜよか〜 体育の後は眠たくなるぜよ」
仁は頭をペチッと叩き、嫌そうな顔をする。まぁ、無理もないな、体育のあとの社会は最強にして最恐である。
「あぁ〜 それは分かる」
「おーい、席に着け!」
社会科担当の西垣が大声で叫ぶ。クラスメート達は急いで席に座る。
「では、社会の授業を始める。教科書の50ページを開け。では、前の人から読んでいきなさい」
「ん? あぁワシぜよか?」
「坂本お前、今少し寝てなかったか?」
西垣が睨んでいる。仁はヨダレを急いで拭くと、焦った表情で
「いやいや! 先生の素晴らしい授業で寝るなんて考えられないぜよ!」
と、無謀な言い訳をする。これは、終わったな。
「ほう、そうかでは坂本なぜお前は50ページではなくて36ページを開いている?」
仁はヤベェみたいな顔で俺に助けを求めている。とりあえず、俺は手でグッドとやる。
「ま、いいや、坂本お前は宿題を二倍にするからな」
「ええ〜 それはヒドイぜよ〜!」
クラス中が笑いに包まれる。
そんなこんなで3時間目は終わり4時間目の、音楽が行われる音楽室へと向かう。
音楽室に着き椅子に座っていると 、
「いや〜 さっきはヒドイ目にあったぜよ」
仁が困った表情で言ってきた。宿題二倍は確かに学生からしたら恐ろしいな。
「お前が寝るから悪いんだろ」
すると、仁は、
「む! 悠真もカクカクなってたぜよ!」
という。俺はドキッとして、
「やっぱりかー 途中、隣の女子から笑われていたんだよな〜」
扉の開く音がしたので俺と仁は喋るのをやめた。いつもの音楽の先生ではなくて担任が、音楽室に入ってきた。
「今日は音楽の担当である山下先生が風邪で休んでいるので今日は皆さん自習です。静かにやるように」
そう言い残すと担任は音楽室を後した。俺らは担任が音楽室を後にした直後に喋りだした。
結局、雑談でみんな四時間目を終えた。だが、自習ってのは喋るためにあると俺は思ってる。
教室に戻るために廊下を歩いていると、
「次は給食ぜよ! しかも今日はカレーぜよ」
仁はスキップで教室に向かう。俺は仁の後を追いながら教室に戻る。
しばらくしてカレーがやってきた。仁はカレーを3杯おかわりしていた。皆んなから底なしの胃袋とか言われていたけど、仁は、強い漢になるぜよ! とか言っていた。
そして、仁が昼休みに急に、
「日常って大切ぜよ! な! 悠真!」
とか言い出した。コイツからそんな言葉が聞ける日が来るとは思いもしなかったな。
「急にどうしたんだよ。」
すると、仁はドヤ顔で、
「毎日、ご飯が食べれて風呂に入れてそんな日常的な事が1番大切ぜよ!」
俺には、仁の考えは分からない。こんな平凡な毎日のどこがいいのだろうか? 日々、刺激的な毎日を送っている人もいるのに、俺は朝飯食って、学校行って給食食って、家に帰って夕飯食べて、シコって寝るっていう平凡な中学生男子の模範の生活に嫌気がさしてるけどな。
「そうか? 俺は日常の大切さは良く分からないな。だって、毎日同じ時間の繰り返しで飽きるだろ?」
「うーん、まあ人それぞれぜよ!」
仁は、少し考える素振りをしたが、いつものようにニカッと笑う。
「ま、そんな事より早く次の授業の準備をしようぜ」
「おう!」
こうして、5時間目と6時間目が終わり俺たちは学校を後にした。帰り道もいつもみたいに仁と一緒に帰る。分かれ道で、
「また、明日ぜよ〜」
と、仁が手を振る。これもいつもの事だ。
俺も、手を振り仁と別れる。
少し歩くと家が見えてきた。二階建ての築三十年ぐらいのごく普通の一軒家だ。鍵を開け、家に入り、部屋に荷物を置く。
「ワンワンッ!」
サクラが吠えている。いつもみたいに散歩に行きたいのかリードを咥えている。
「オーケーオーケーだ。」
俺はサクラと一緒に夕焼け空の下を歩く。夕焼け空が、焼鮭みたいだ。
いつもみたいに公園に行き、それから河川敷をまわるというルートだ。
河川敷に着くと急に空が暗くなった。おかしいな、いくら冬と言えど、こんなに早く暗くなるのか?
「ん? おかしいぞ、まだ五時だぞ」
「ワンワンワンッワン!」
サクラが吠えている。こんなに吠えるサクラは見た事ないな。
俺は、吠えるサクラの頭を撫でて、なだめる。
「なんか、空模様が変だな。真っ暗だぞ。雨でも降るのか? よし、サクラ早く帰るぞ」
その時だった、空一面に幾つもの光が差し込んだと思ったら、一瞬にして辺りには凄まじい光景が広がっていた。家は崩れ、辺りから火がでている。
視界の全てが、グチャグチャに壊れている。
「うわあああ! なんなんだ!? 」
周りから悲鳴や怒号が聞こえてくる。俺は尻餅をついた。
すると、何か生暖かいブニッとした物が手に触れた。
「ん? なんだ? うわあああ!!」
俺の手に触れていたのはレンガほどの大きさの肉塊だった。おそらく人の肉だろう、まるで破裂したかのようだ。
「なんなんだよ…………………夢なら覚めてくれよ!」
何回も、自分の頰を引っ叩く。何回も何回も引っ叩く。俺の呼吸は荒くなっていた。何故、覚めないんだ……………………!
俺は、この時、この絶望とも言える光景が現実だということに気づいた。
それと同時に、俺は日常の大切さを気付かされたのであった。
初めて小説家を投稿しました。
下手くそなのでアドバイスをお願いします!