他力本願この上ない・・・
初めまして、秋畑秋穂です。
処女作ですが、頑張って書きました。楽しんで頂けたら幸いです。
偉大なる神が創りし光とマナに満ちた世界、『エルスフィア』。
世界一の大国『エルグランド王国』では、為政者たちの圧政により、多くの王国民が辛く、苦しい生活を送っている。
されど、圧政に苦しみながらも、多くの者が希望を持っていた。
「いつか、いつかきっと誰かが何とかしてくれる。」と・・・。
◇◇◇荒野にて◇◇◇
王都南西の森を抜けた先にある荒野に影が二つ。
黒いローブを纏った青年と、赤いローブを纏った女性。
二人の間には沈黙が漂っている。
「ふぅ。他力本願この上ないな」
沈黙を払ったのは青年。
下を向きながら、深い溜息をした青年は王国民の気持ちを知っている。
「まぁ、でも。俺も一緒なんだけど・・・」
そう呟きながら青年は前を向く。
青年の目に映る大地には、直径500mはあろうかというほどの巨大な円。円はいくつも重ねられており、円と円の間には、幾何学的な模様が所狭しと描かれていた。
「そんなことはありません。あなたはこの五年間、十二分に勤めを果たしました。その結果がこの魔法陣です。」
「と、言われましても。やはり自国のことは自分たちで何とするべきですよ」
「その件に関してはもう何度も議論したではありませんか。さ、始めますよ」
「・・・わかりました」
苦虫を噛み潰したような表情をする青年は、魔法陣と女性が呼称した円に向かって右手を翳す。
翳した右手から青く光る粒子が魔法陣へと向かって行く。
「他力本願でもなんでもいいのです。もう、私たちに出来る事はありません。諦めも肝心だと教えてくれたのは、賢者様、あなたですよ?」
女性はどこか儚げな笑みを浮かべて言う。
悔しいのだろう。王女でありながら自国の歪みを正すことが出来なかったということが。
「ふぅ、これは一本取られましたね」
ハハ、と笑いながら、賢者と呼ばれた青年は、粒子に触れたことにより輝きだした魔法陣を見る。
自分たちでは、自国の歪みを正すことが出来なかった。
ならばと。ならば誰かを頼るしかないと。
誰を頼るというのか・・・
大国であるエルグランド王国に、革命を起こせる者などこの世界には居ない。
そう、この世界には・・・
この日、賢者アルベルト=ティンバーレイクとラティナ=エル・グランド第三王女は一年間に及ぶ魔法陣作成を完遂させた。
魔法陣の名は『異世界への門』