O:CARAT《オー・カラット》事変 朝は誰もが辛い、
色々と迷ったが投稿することにした、
全寮制の慎ましやかな子女が揃うファリスタ学園。一見聴こえの良いそれ、けれど実態を覘けばdimじゃなくても嫌気が差す。起床時間は朝の05:00で寝坊は反省文五十枚、但し十枚ずつの研究課題として提出すること。授業内容と被らない分野で、と注釈までつく。一度、体験すれば二度と寝坊できなくなる性質の悪さだ。
そして校則も決まって厳しい、髪の長さ、色、果てには私服の彩色まで事細かに述べる生活指導が控えている。私服については実際、個人の裁量に委ねられているものの。生活指導に華美な装いが見付かれば、一時間正座して説教を拝聴せねばならない、態度も悪ければ延長される。曰く勉学の徒である我々に色気づく必要性は皆無であるとか。実はdimと生活指導は意見が合う為、説教されたことは一度も無い。贔屓だと言うのならば君も喪に服したように仄暗く生きてみるかい?
前任者に恩を感じているdim。よって現生活指導の教師とも、争ってみる意味を見出せないのだった。ただ仮に意見が合致しても仲が良いわけではないのだ。
dimは成績が良い、寝過ごしても怒られないほどに―一度だけ好奇心に抗えず人当たりの良くない教授の講習で顔を伏せてみた―優良な生徒と判断された現在のdimに敵はない。学園に併設された図書館にはとても快適な個室がある。勤勉な生徒には夜間以外、例外なく借りられるのだ。dimもこれを利用していた、大半は勉めるのではなく寝るために借りるのだが。今日は彼是、数年の日課を実行しようと思う、そう外に出るのだ。
四六時中見張れるわけがない、そして食事時間をずらしたdimは個室から一旦出る必要も無い。さすがにamenityまでは内部に無いけど、熱中すると数時間は出てこない連中が左右隣を使っている。dimが数時間ほど現れなかったとして誰も疑いを持たないわけだ。そして、『外に出る』という発想が学園の人々にはない、幾ら都会と言っても治安に不備が無いわけではないのだ。
態々世間知らずの自負がなくとも、彼らは歩く身代金である。
例外としてdimに限った話だが。鴨に認定されるはずもない、何故か?って―だって、dimは数年前まで***に居たのだから。そして、そのなかでも一等貧しい地域の出身者だ。貪欲なものが何を標的にするか、よくよく熟知している―薄汚れた襤褸と言っても程々な少年を、誰が実入りの良い学園の生徒だと思うのか?