O:CARAT《オー・カラット》事変
全寮制の校舎からある人物が白昼堂々と抜け出した、別段教師なり庭師なり、業者なりなら怪しくない。しかし、件の人物は制服を着ていた。通りは狭くも無いが広くも無い場所でその時は人子一人見当たらなかった。
検視していた・・・は重い息を吐き出した。最近、何かと物騒な事件が頻発しているのだ、おちおち寝ても居られないのだ。
「こう、関連性も無いのが続くと厭に為りますねぇ」年若い部下が愚痴る。
「滅多な事を言うな。」そうでなくとも事件なんぞ、起こらないほうが平和なのだ。
「でも、そしたら仕事、無くなっちゃいますよ…」日の浅いくせに辛く笑った。
雑然とした街並み。O-ctはメリハリの無い街だ、良くて当たり障り無い気性の住人が多い。曖昧に笑っていればそれなりに過ごせる、割り切ってしまえば非常に都合の良い街。それがO-ctだ。掻く言う俺も、―ニヤリと口角を上げた、帽子のつばを指であげて見せる―常人ならざる在り方をしているし、なぁ?男の顔は白昼においても黒々としていた。
ん?何だ、俺のことが知りたい?―男は虚空に向かって己を指で示してから首を振った―ダメ、ダメ素人や一般の人間が一時の好奇心で…、いや、冥土土産って言うなら遠慮なく(無雑作に手を突き出した)。おや?もう良いのか、何?興味が失せた?もったいない―と男は自分が脅しつけたのを棚に上げて―俺みたいな奴には、そうそう御目に掛かれやしないのに。けど、そうだな≪ふつう≫は命が惜しいもんだよな…。
顔の無い男はけれど、溜息をつく。
何だ、未だ居たのか。そろそろ、俺も活動時間だ。あんまり目障りだと御前から―。まあ、いいや、御前みたいな奴にもそうそう会うことも無し。今回だけは見逃してやる、あ、けど。もし御前の口が滑ったらその時は、覚めぬ夢に御招待だ。何、思いつく限りで一番(俺が)楽しいことを提供してやるんだ。それも悪くないだろう、男はそう言って帽子を深く被り直すと立ち去っていった。
ニヒルな笑みを置き土産に。(しかし、彼に口等…、もっと言えば表情を形作る顔すら寸前まで無かったはずだ...)
再度、修正...