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六日目

男はレグルスに促され、普段は脱がないローブのボタンを外す。


―――開いた瞳はサファイアのように青く、フードの外れた髪は銀色。

その身体は人形と言う事実を認識させるに十分な位細く、節々がマリオネットなどと同じく継ぎ目があった。


「ふむ……ブレるとな。」


レグルスは眉を潜めて考えていた。


―――記憶でも戻ったか。

または―――そのきっかけを掴んだか。



レグルスは男から離れて話し出した。



「わしがお前に出来ることはない。身体に不具合がある訳でも、期限が来たわけでもない」


「では何故………?」


男は青い瞳を瞬いた。老人は躊躇うように口を開く。


「………目覚めたのだ。」


レグルスは詳しく説明した。


「お前が持たない記憶の切っ掛けとなる何かを、お前は掴んだ。―――だからブレが生じたのだ」


男の身体が人形―――


即ち、男は魂が入った「人形」である。

ただ、並の人形とは違い、寿命も長く、消える条件も異なる。


「……確か私が人形で無くなって消えるのは、全ての記憶が戻った時―――」


「そう……その切っ掛けを掴んだからこそ、ブレが生じた。」


男は複雑そうな表情で、作り物の腕を見つめた。


レグルスはそんな男の頭に手を置いた。


「――……死が終わりではないことを、お前は知っている筈だ。どんなことになろうとも…未練は残すな」


「…………はい。父上殿」



男は振り向いて一つ頷き、苦笑を浮かべる。


男はまたふわりとローブを羽織る。


フードに銀髪が隠されれば男の口元が緩む。

立ち上がったかと思えば男はレグルスに振り向いた。


「―……導いてくれて、私を生き返らせてくれて…ありがとうございます。何があろうと私は―――……」


――――あなたとの約束を果たしますれば。



男はそう言うと顔を上げた。

今まで客にも顔を隠し続けてきた男は、いつになくしっかり顔を上げて背中を伸ばし、青い瞳をレグルスに向けていた。


「では、失礼します。」



それっきり背を向けて立ち去った男を、レグルスは少し寂しげに見つめていた。


「――……励め……リオ」



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