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マイ★スター  作者: みっち~6画
第3章 レオと赤目
55/56

55潜入と病気。

「ヒドラ。おれ、あの屋敷の中に入りたい」

 何を言っているんだ、とヒドラが声を荒げる。

「オレたちの仕事は、屋敷の下見をするメイジャーの補佐だろう? もう仕事は終わったんだから、勝手なまねは……」

 レオは、ヒドラの灰色のひとみを見つめた。

「あの馬車に乗っていたやつ、おれ知ってるんだよ。前に少し、ごたごたがあってね。あいつ、病気なんだ。だから性格は最悪で傲慢なんだけど……なんか妙に引っかかる」

「引っかかる?」ヒドラは首をかしげて、レオをうながした。

「うん。なんだかうまく言えないけど、あいつきっと、何か……ある」

「分かった」

 じゃあオレも行くよ、とヒドラはさっさと茂みから抜け出した。

「待ってよ!」

 逆にヒドラを追うかっこうで、レオは屋敷に近づいていく。干渉できないとは知っていても、やはり門番から遠く離れた塀を選んでよじ登った。芝生を敷きつめた広い庭を通り、白亜の壁に手をかける。

 吠え立てる犬から逃れるように、壁伝いに裏口に回った。幸い、侵入を拒む錠はかけられていない。

「さぁ、レオ? 次はどうする?」

 ほこりひとつない木彫の大型家具をじろじろ眺め回しながら、ヒドラが声を上げた。

「家主は正装していたし、たぶん帰りは遅いと思う。なぁ、オレたちだけで仕事をこなしたら、赤目はどう思うだろうな。驚くかな?」

「だめだよ!」

 慌てたレオは大声を上げ、その低くうなるような声音に自ら驚いた。

「……あくまでも、おれたちは偵察。仕事はしない」

 レオの脳裏に、リヒャルトの顔が浮かぶ。

「まぁ、いいか。どうせ赤目が根こそぎ奪ってくれることだろうし」

 不満げなヒドラは、ぶらぶら物色を始めた。

「うわぁ、なんていうか……趣味がいいのか悪いのか」

 ぶつぶつこぼしているのを遠目に見やり、レオは樫の扉のひとつを押した。

「書斎……かな?」

 高々と積まれた本の山が、レオたちを圧倒する。

「すげぇな。さすが金持ち」

 ヒドラが妙な感心している横を、レオはふらふらと進み出た。

「いいな」素直なことばがもれた。これだけの本を自由に読むことができたら、どんなにか幸せだろう。

「レオ! ちょっとこっち来てみろよ」

 ずかずか室内を通り抜けたヒドラが、続き間の入り口で手招きしているのが見えた。

「ちょ、あんまりうろついたら……」



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