表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイ★スター  作者: みっち~6画
第3章 レオと赤目
53/56

53獲物。

 その夜。レオは硬い石畳の上で、何度も寝返りを打った。赤目と仲間の幾人かが仕事をする間、レオたちは交代で宿屋を警戒していた。初めに見張りに立ったあと、レオは植え込みの影で丸くなって眠った。

 相変わらず硫黄の匂いが辺りに漂い、レオは懐かしさに心躍らせる。祖母の湯治の付き添いで足しげく通った温泉は、まったく変わりなくレオを迎えてくれていた。

「レオ、レオ。起きろ?」

 優しげに肩を揺すったのは、ヒドラではなかった。

「赤目?」

 彼の大きな手に抱えられていたのは、レオの盗まれた……大袋。ありがとう、とレオがつぶやくのを満足そうに見やり、赤目は立ち上がった。

「簡単すぎて、物足りないな」

 興奮したように赤い目を輝かせる。

「次の獲物をねらおうか」

 月が、天高く昇っている。

 仲間たちが次々に赤目の元に集うのを、レオはぼんやり目で追った。

 ――なぜ。レオの家の事情に、彼はこうもくわしいのだろう。

「こっちに来い、レオ。今度は総出でかかる大仕事だ」

「ああ……」ヒドラの声に、あいまいな笑みを返す。

 ――なぜ。

「レオ!」

 つぃ、と赤目の腕がレオに伸びた。

「来い」

 その手を、取ってもいいのだろうか。理由の分からない奇妙な不安が、レオの指先を戸惑わせている。

「待たせたな! 地図を持ってきたぞ、赤目」

 どこか聞き覚えのある声が、どかどか近づいてきた。ハッとしたレオは、そっと胸の前で手のひらを握る。

「メイジャー?」

 赤目からの荷物をヒドラたちに分け与えていた、彼だ。レオたちから少し離れた石畳の上で立ち止まり、彼は赤目の指示を待った。

 確か彼は扉をくぐっていないはず。いぶかしげに見つめていると、赤目は懐から紙片を取り出し、何事か書き付け始めた。それを、垣根の上に置く。わずかな間を置いて、それをメイジャーが取り上げた。

 目を滑らせ、こくりとうなずいてから、メイジャーは来たときと同じようにするりと街道の向こうに消えていった。

「彼との連絡は筆記で行う」

 赤目はレオに向かって説明すると、今度はヒドラたちに向き直った。

「次の仕事が決まった。首都には強欲な判事が住んでいる。今夜の獲物とは……格違いの大物さ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ