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マイ★スター  作者: みっち~6画
第2章 レオとヒドラ
49/56

49果実酒。

 きょろきょろ視線を移ろわせていると、ちょうど空いたばかりの席にヒドラが勝手に座ってしまった。店は、たくさんの客でごった返している。こういう場合、案内されるまでは勝手に座らないのが常識だと注意したが、ヒドラはまったく聞く耳を持たない。

「ちょっと、おい! ヒドラ!」

 そればかりか、厨房をのぞき込んだヒドラは、ひょいひょいつまみ食いを始めた。辺りを警戒しながら、レオはすぐにすっ飛んでいった。

「悪い、悪い。ちょっといたずらしたくなってね」

 真意が読めず、レオは首をかしげた。

「じゃあ、これとこれ……あとはそっちの料理をいただいていこうか」

 きれいに盛り付けられた料理を手に、ヒドラはさきほど陣取った席に戻っていく。

「そんな勝手なことばかりしていたら、店の人に追い出され…………ないの?」

 店の主も、料理を運ぶ男も会計係の女も、まるで何も見えていないとばかりに、自分たちの仕事にかかりきりだ。

「どうだ? すごいだろ?」

 得意げにふんぞり返ってレオを見やると、ヒドラは骨付き肉を口いっぱいにほお張った。

「それじゃあ、ここらでひとつレオに質問でもしようか」

 いまだ周囲を見渡してびくびくしながら、レオは小さくひとつこくん、とうなずき返す。

「オレたちのすみかに赤目たちが来たとき、不思議だとは思わなかったか? まるでさ、オレたちの声が聞こえていないみたいな態度でさ」

 レオは身を乗り出した。

「それ、本当に聞こえていなかったんだとしたら?」

 厨房で弟子を叱りつける親方の声が、レオの耳に飛び込んでくる。

「おれには……聞こえる……見えるよ。ここの主の声も、みんな……」

 ヒドラは、わざわざ片耳の後ろに手をやって、よく聞こうとするしぐさをした。

「オレたちには聞こえる。でも、向こうの人間には聞こえない。もっと言えば、扉をくぐった者に、向こうの人間は干渉することができないんだ」

「メイジャーは?」

 レオは急いでまくし立てた。

「聞くと思った。彼は扉をくぐっていない。だから、オレたちとの連絡役をしていたんだ。……あぁ、もう! レオも食えよ。大丈夫だから。いくら勝手に食っても、店主が追いかけてくることはないよ。あとで赤目がまとめて支払うことになっているんだから」

 なかなか手を出そうとしないレオを前に、ヒドラはようやく種を明かした。食卓の料理は、すでに半分以上がヒドラの口の中に吸い込まれている。ちろりと厨房に目をやったレオは、そこに果実酒のかめが置かれてあるのに気づいた。

「いいねえ、果実酒。飲むか?」

 察したヒドラが、すぐに立ち上がる。

「ここはジゲンが違うんだって、赤目は言ってた。くわしくは彼に聞けよ」

 レオは弾かれたように顔を上げた。ようやく、彼に会えるのだ。



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