表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイ★スター  作者: みっち~6画
第2章 レオとヒドラ
47/56

47変身。

「やぁ、調子はどうだい?」

 扉を抜けると、また声がした。レオは身を強張らせる。

「え? あの……ここって……」

 声の主は、灰色の髪をした例の青年だった。たくましい腕を交差させて組み、レオを見つめている。

「ここは首都だよ。熱湯の降った路地裏から……そうだな、一ブロック先かな」

 そうさらりと言う青年の後ろで、扉が完全に閉じる音が響いた。

 たくさんの客を乗せた乗合馬車が、がたがたわだちを越えて角を曲がっていく。

「おれは、レオといいます。レオ=パークです。さっきは、ありがとうございました」

 目を泳がせたまま、それでも頭だけはしっかりと下げる。

「遅かったなぁ、おまえ」

 やけに親しげな青年の表情に、レオはひるんだ。

「あなたはだれなんです?」

「オレ? ヒドラだよ、ヒ・ド・ラ」

「……はい?」

 だからヒドラだって、と青年はなおも続ける。レオは改めて青年の顔を凝視した。言われてみれば確かに、その灰色の髪とひとみにはどこか面影がある。それでも、この筋骨隆々とした青年がヒドラであるわけがない。

「おれの知っているヒドラは、ちっちゃくて、ぴょこぴょこ飛び跳ねて歩く、なんて言うのか……その、もっとかわいらしいやつだよ」

 青年が、目に見えて鼻白んだ。

「おまえ! ばっかじゃねえの? 何、言ってるんだよ」

 その口ぶりと表情もまた、ヒドラによく似ている。

「ねえ、本当に君……ヒドラなの?」

「そう言ったろ」

 ヒドラは女だ。それも、レオたちよりも一回りも二回りも小柄な。混乱するレオの肩を、ヒドラを名乗る青年がつかむ。

「分かる、分かる。初めはオレもそうだった。何がなんだか理解できなくて……でも、こうすれば、一発だったよ」

 強い力で引き上げられ、レオはガラスのはめられた居酒屋の窓の前に立たされた。

 ――父さん?

 すでに亡くなったはずの実夫の驚いた顔が、レオを見つめている。

「どうしてここに?」

「違うよ」ヒドラが優しげな声を上げた。

「おまえだよ。レオ=パーク。あそこに映っているのは、おまえ自身だ」

 広げた両手が、自分のものより大きい。眼前に広がる視界が、いつもよりも高い。惑って振り絞る声音も低く、うなるように響いている。

「おれ、まるで父さんみたいに……」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ