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マイ★スター  作者: みっち~6画
第2章 レオとヒドラ
35/56

35大人のいない家。

「行こうぜ。おまえ、なかなか見込みのあるやつだ。みんなに紹介したい」

 楽しげに笑い上げるヒドラに続いて狭い路地を進んでいくと、たくさんの少年たちがたむろしているのが見える。ひとりがこちらを向いた。反射的に身構える。

 コイツは大丈夫、とレオを指してさも愉快そうにヒドラが笑った。無遠慮な視線を送ってくる彼らの前を、すばやく通りぬけていく。

 その先にあったのは、隠れ家にするにはもってこいの古い廃屋だった。

「違う、こっちだ」

 昔は何かの店を構えていたのだろう外装に見入っていると、ヒドラの声が呼ぶ。彼は壊れて地面に打ち捨てられた何かの看板を踏みつけて、レオを手招きしていた。

 レオが追いつくと、にやりと口元だけで笑い、足をどけてその看板を持ち上げる。その下になわで編んだはしごが見えて、レオも満足そうな笑みを返した。今にも切れそうなはしごを慎重に降りていくと、温水パイプがいくつも重ね合った不思議な空間に出た。

 手彫りのあとがうかがえるむき出しの土壁で囲まれた空間は、それでもひと通りの家具がそろえられている。奥をのぞくと、細い通路が続いているようで、同じような空間がいくつも連なっているのが想像できた。

「もうじきメシの準備ができる」

 温水パイスに足を乗せて温めながら、ヒドラが言った。

「行くとこないんだろ? 見りゃあ、分かるよ。だったら、好きなだけここにいろ。ここには、うるさい大人はだれもいないから。……なぁ、おまえも捨てられたのか?」

 レオは慎重にうなずく。いてもいなくてもどちらでも構わない存在というのは、捨てられたのも同然だ。

「元気出せ。ここにいるのはみんな、同じだ。世の中が荒れているのかねぇ」

 妙に大人ぶった言い方がおかしくて、レオは破顔した。

「なんだ、何がおかしい」

 不満そうに唇をとがらせたヒドラだが、それでもその目元は笑っている。

「君ってさ、意外と……若い?」

 レオは唇をもごもごさせた。

 辺りに群がり始めた少年らと比べても、ヒドラはきゃしゃで細い体つきをしている。それをどう表現したらいいのか迷い、微妙な言い回しになった。

「オレか?」ヒドラは、ぐん、とレオを見上げる。唇を引き結び、心外だと言わんばかりにまゆ根を寄せた。

「あ、ごめん。別に他意はないんだ。ただ、おれと同じくらいの歳かなって思ったから」

 慌てたレオは、まっすぐにヒドラの目を見つめて言いつのる。

「オレがほかのみんなより……小さく、見えるのは仕方ないんだ。オレ……オレ、違うから。みんなとは違って……」

 なぜか真っ赤になったヒドラは、レオのぼさぼさの金髪をにらみ据えた。

「オレ、女だから。みんなみたいに背が伸びないのは仕方の無いこと、だ」

 驚いたレオは、しげしげとヒドラを見下ろす。



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