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マイ★スター  作者: みっち~6画
第2章 レオとヒドラ
34/56

34仲間と住処。

 婦人は肩を震わせて、座り込んでいる。小競り合いを抜け出した灰色の少年が、足元まで飛ばされてきた婦人の荷物のひとつを拾った。

 彼はこびり付いたどろを丁寧に払うと、婦人のもとに歩いてくる。

「はい、これ」

 そのとき。耳をつんざく笛の音が、辺りにこだました。警護団の男らが方々から駆けてきて、甲高い声音で叫ぶ。

「逃がさんぞ!」

 あっという間に地面に組み伏せられ、灰色の少年は持っていた荷物を取り落とした。

「……あいつ」

 レオは息をのんで、首を伸ばす。

「違うって、オレたちは盗みはやらねぇ!」

 激しく抵抗する灰色の少年を、警護団の男は強い力でいっそう石畳に押し付ける。違う、とレオは首を振った。

「待ってください! おれは初めから見ていました。あの人を襲ったのは、別のやつです。向こうに逃げていきました」

「口からでまかせを……」

 レオはしゃがみ込んで小石をつかむと、急いで指を動かした。

「目はこういう感じです。口元はこうで……額に赤い布を巻いていました」

 レオは、小石を握って先ほどの少年の顔を石畳に描き付ける。できる限り丁寧に、沼の底のような目を思い浮かべて。

「……あいつか」

 警護団の男が感嘆の声をもらした。

「やつは、常習犯なんだよ」

「じゃあ彼の無罪は証明されましたか」

 灰色の少年から手を離した男は、レオに目礼すると仲間を引き連れて駆け出していった。なんだよ、と灰色の少年が口元をとがらせる。

「わびもなしか」

 それでも満足そうなほほ笑みを浮かべ、灰色のひとみでレオをまっすぐに見上げた。

「おれ、絵は得意なんだ。いつも描いていたからさ……」

 急に照れくさくなって、レオは破顔する。

「本当に助かった。オレは、ヒドラっていうんだ。おまえは?」

「レオ。……ねえ君。すごく変わった名前だね。親がつけてくれたの?」

 言ってしまってから後悔した。そんなことあるはずがないのに。

「自分でそう名乗ってるだけだよ。オレに親はいないから」

 屈託なく笑う灰色の少年を見つめ、レオの胸はちくりと痛んだ。

「オレたちのねぐらに来るかい?」

「でも」

 何が不満だ、とヒドラは灰色の髪をかき上げる。



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