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マイ★スター  作者: みっち~6画
第2章 レオとヒドラ
26/56

26盗賊の心。

 彼の姿を見た。

 屋根から屋根を跳び歩き、夜風に銀の髪をなびかせて。赤いまなざしは強く、しっかとかなたをにらみ据える。

「赤目! おれを連れて行って!」

 伸ばした指先が、むなしく空をかいた。

「待って、待って……待ってよ!」

 優美なしぐさで空を仰いだ赤目は、ゆるりとレオのほうに体を向ける。どくり、と心臓が脈打った。重力を感じさせない軽やかな足取りで地上に降り立ち、ぬらりと長剣を引き抜いていく。

「……あぁ」

 レオは腰が抜けたようにして石畳にへたり込み、息を吐き出した。

 ――隻眼。

 やはりあの夜のできごとは、夢ではなかったのだ。ぽかりと穴の開いたむき出しの眼窩を隠そうともせず、赤目の口元にはわずかな微笑がたたえられている。

「おまえらか」

 風のささやきのような赤目の声音は、レオの耳にくっきりと残った。

(オマエラ?)

 レオは弾かれたように振り仰ぐ。

「待ちかねた」

 隆々とした体躯の男らが、不敵な笑みを浮かべてレオの背後に居並んでいた。皆、赤目と同じ長剣を腰に差している。

「行くぞ」

「あっ、待って! 待ってください! おれも、おれもいっしょに連れて……いって……」

 レオは駆け出し、赤目の着込んだ外套に手を伸ばした。

「……あれ?」

 いくら握り締めようともレオの指は宙をかき、何もつかめない。ばたばた指を動かすレオを取り残し、赤目はきびすを返した。

「赤目! ねえ、赤目!」

 仲間と共に、再び宙に踊り上がっていく。

「……ああ」

 ――レオの声は赤目に届かない。

 レオは鋭い視線を感じて、身を震わせる。

「まさか、赤目が戻って?」

 慌てて首をめぐらせたレオは、外出用の外套を羽織ったままの養父と目が合った。なぜか外套はびしょぬれで、まるで深い海の中から這い出てきたかのようにも思える。

 レオが見ていることに気づくと、養父は一歩前に進み出た。

「帰ろう、レオ」

 養父は笑う。にこりと、似合わぬ笑顔で。

 ――雨が降り始めていた。



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