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マイ★スター  作者: みっち~6画
第1章 レオ・パーク
24/56

24常識。

「いいから、その話はあとにしろよ」

 挑発には乗るまいと、レオは医師の姿を探して首を伸ばす。レオの善意などお構いなしに、少年はせせら笑いを浮かべた。

「すきだらけなんだ、おまえは。典型的なお人よしそのものだな。田舎の」

 足を止める。

「……何を、他人事みたいに」

「愚かだな」

 あのとき忠告しただろうに、と少年は目を細めた。

 きゃしゃな少年の肩先が、わずかに震えている。そうやって発作を抑えているのだということは百も承知で、レオは精いっぱいの侮蔑を込めて少年を見やった。

 限界だった。

「おまえが盗ったくせに」

 少年は答えない。またたきを忘れた魚のように、レオは少年を凝視していた。

「泥棒。盗人。人でなし」

 最初に動いたのは、少年のほうだった。上体を起こし、「もういい」とつぶやくと、小さな銀の鈴を取り出す。

 おそらく、レオの一家が総出で働いたとしても、手に入れることは難しいであろう高価な品だ。うっとりするような光沢の表面に、さらに窓に掛けられた覆いの銀が映り込んでいる。

「見ず知らずの旅人なんか、信用するものじゃない。常識だろ」

 少年は手のひらで鈴をもてあそびながら、言い放つ。

「おまえのことか」

「……何を言っている」

 少年は、乾いた笑みを口元に浮かべた。

「やつらの狙いは、初めからあの大袋だった。中身は金なのだろう。君が階段を上がったとたん、やつが何をしたのか知りたいか?」

 ――やめろ。

 レオは、すぐに声を上げようとした。それでもなんと反論したらいいのか分からず、口をわななかせて少年をにらみ据える。

「ここにいても、問題は解決しない」

 レオの脳裏には、去り際にほほ笑んだ旅人の顔が焼きついていた。

 息苦しい。

「違う、おまえだ」

 獅子のたてがみのような金色の髪を、レオはぶるんと振った。

 少年はレオの視線にひるまない。まるで、レオを挑発することで発作を忘れようとしているようにも思える。冷ややかな青いひとみは、ないだ海のように静かだ。

 鈴がしゃらりと鳴る。すぐに乾いた足跡が近づいてきた。

「お呼びでしょうか、リヒャルト様」

 黒い服を着た男が無表情のまま、レオの傍らに立った。



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