第04話:死刑執行令状と立会人
警視庁地下、第七課分室。ボスが重々しく口を開いた。
「対象組織『ベイサイド・チルドレン』。構成員12名。
主犯格『収納』能力者1名。山さんの尋問により、被害児童の生存を確認。
一刻の猶予もなし」
ボスは重い溜息と共に続けた。
「能力犯罪の激化で、現行の司法プロセスは事実上崩壊している。
…これ以上の被害拡大を防ぐためだ。このヤマ、ゴリさんに託す」
ボスは一枚の令状をゴリさんに手渡した。
「――捜査第七課、刑法第9条に基づき、対象全員の死刑執行を許可する」
ゴリさんは令状を受け取った。
薄い紙一枚。だが、それは13人分の「命」を奪う権利だ。
その重みに、ゴリさんは無言で頷くことしかできなかった。
隣で、俺の拳が握られ、震えているのが分かった。悪を裁けるという、正義感に満ちた高揚。俺にとって、これが初の「執行」だった。
◇
湾岸地区、第八倉庫街。錆びた鉄の匂いが潮風に混じる。
俺たちの前に、執行の立会人でもある山さんが、すでに到着していた。
「山さん…。先ほどの男、どうなりました」
ゴリさんが尋ねると山さんは今しがた揉み消したタバコのフィルターを
足元に捨てた。
「司法取引だ。彼もまた、組織の被害者だ」
山さんは、鋭い視線でゆっくりと倉庫全体を見渡し、ふっと息を吐いた。
「さて、…時間だ。始めるかね」
山さんが懐中時計を仕舞った瞬間、世界から「音」が消えた。
風の音も、遠くの車の走行音も、俺たちの呼吸音すらも。
山さんの能力『無音閉鎖空間』。
指定エリアを、あらゆる物理干渉から遮断する絶対結界だ。
突入直前、俺は高揚を抑えきれずにゴリさんに尋ねた。
「ゴリさん…! ついに、俺たちの手であのクズ共に鉄槌を下せるんですね!」
「浮かれるな、ネット」
ゴリさんは銃のセーフティを外しながら冷静に答えた。
「俺たちはヒーローじゃない。法に基づき、淡々と職務を遂行する執行官だ。
子供たちを救う。それだけだ。迷うな。そして、油断するな」
山さんの声だけが、頭の中に直接響くように聞こえた。
「ゴリさん、ネット。承知の上だと思うが、この『無音』は
30分間、犯人の逃走も防ぐが、誰も出入りができない。救援も不可能だ」
山さんは冷徹な目で俺たちを見据えた。
「…必ず、生きて戻りたまえ」
俺とゴリさんは強く頷き、得物を構えた。




