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第02話:裏の捜査(超法規的処置による特別調査)
警視庁地下、第七課の特別室。
澱んだ空気と、安いコーヒーの焦げた匂いが充満している。
ゴリさんが淹れた泥水のようなコーヒーを啜りながら、
俺は猛烈な勢いでキーボードを叩いていた。
俺の能力は『ネットマスター』。
あらゆるネットワークに精神ごと侵入する、最強のクラッカーだ。
だが、その代償は大きい。
「掴みました…!」
キーを叩く指が止まる。ディスプレイに映る座標を睨みつけながら、
俺は鼻筋を伝う生温かい感触を手の甲で拭った。
鼻血だ。精神の消耗が、現実の肉体を蝕み始めている。
「このモール周辺の失踪児童データが、海外の闇サイトに流れています。
人身売買だ…クソッ!」
「…続けろ」
数分後、俺は湾岸地区の廃倉庫の座標を映し出した。
「犯人の能力も特定。『収納』です。
人間一人を丸ごと異空間に隠蔽できる…だから防犯カメラにも映らなかった」
「上出来だ。…だがネット、令状請求にはまだ早い」
ゴリさんは冷めたコーヒーを飲み干した。
「物的証拠と電子的証拠(能力特定)だけでは、
ボスは動かん。組織メンバーの『自白』が必ず要る」
ゴリさんは受話器を取り、内線で「彼」を呼び出した。




