第6話「株価はなぜ動く? 魔法と市場の法則」
株価が上がる・下がる理由は「需要と供給」――シンプルですが、実際にはその背後に人々の心理や情報が動いています。
今回はそれをファンタジー世界の出来事と重ねて表現しました。
“情報=風、株価=湖面”のイメージは、現実でも役立つはず!
リゼリアは、港町の小さな喫茶店に腰を下ろしていた。
テーブルの上には分厚い帳簿と、昨日ギルドで購入したばかりの株式の証書が置かれている。
「……うーん。昨日は“良い会社”だからって株を買ったけど……なんで値段が上がったり下がったりするんだろ?」
カウンターでカップを拭いていた店主が、興味深そうに顔を上げた。
「嬢ちゃん、株の値段はな、魔物みたいに理由もなく暴れたりはしねぇ。必ず“原因”があるんだ」
「原因?」
「需要と供給だ。買いたい奴が多ければ値段は上がる。売りたい奴が多ければ下がる。それだけの話さ」
なるほど、リゼリアは頷いた。
だが、それだけでは物足りない。彼女はメモ帳を開き、さらに聞き出す。
「じゃあ、何で買いたい人や売りたい人が増えるの?」
「そりゃあ、会社の業績や、王国の景気、戦争の噂、魔物討伐の成否……何でもだな。要するに、人々の“期待”と“不安”で値段は動く」
その言葉に、リゼリアの頭の中で一つの比喩が閃いた。
株価はまるで、風を受けて揺れる湖面のようだ。
風向きは“情報”であり、湖面を揺らすのは“人の心”だ。
「つまり……株価は魔法と同じなのね」
店主は怪訝そうな顔をした。
「魔法?」
「うん。魔法も、魔力というエネルギーをどう動かすかで結果が変わる。株も、同じ“資本”をどう流すかで結果が変わる。魔法陣を描くのが投資家で、詠唱が売買。詠唱を間違えれば、爆発……つまり大損失」
店主は大笑いした。
「面白い嬢ちゃんだな! でも、確かにその通りだ。感情に任せて詠唱すると失敗するってのも同じだな」
リゼリアはペンを走らせる。
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【今日の学び】
•株価は需要と供給で動く
•需要と供給を動かすのは“人々の期待と不安”
•情報=風、株価=湖面、人の心=揺らぎ
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そのとき、店の扉が乱暴に開いた。
泥だらけの鎧姿の男――かつての勇者パーティーの仲間、剣士ガイアだった。
「リゼリア! 大変だ! 西の鉱山で魔物が暴れて、鉄の供給が止まった!」
「……それって、この前買った“アイアン・ワークス社”の株に影響あるかも」
リゼリアの瞳が鋭く光った。
鉄が不足すれば武器の値段が上がり、会社の利益も変わる――が、それが株価を上げるのか下げるのかは分からない。
「ふふ……面白くなってきたじゃない」
リゼリアは証書を握り、席を立った。
魔王との戦いの次は、市場との戦いが待っている。
いつもお読みいただきありがとうございます!
リゼリアが初めて“株価の動く理由”に気づく回でした。
次回は、鉱山の事件が株価に与える影響をリアルタイムで追っていきます。
実際のマーケットでも「事件が起きた=必ず株価が上がる/下がる」ではない、その複雑さも描いていきます。
感想や評価が物語の風となります✨




