第4話 分散投資と剣の道
投資の利益は「株が上がったとき」だけじゃない!?
今回リゼリアが知るのは、“何もしなくても定期的にお金がもらえる”という仕組み――「配当金」!
魔法のようなそのシステムに、彼女の目がキラリと光ります。
「資産がお金を生む」ことの意味を、異世界視点でわかりやすく描いていきます!
エルフのリゼリアによる“投資教室”が、ついに開講した。
受講者はたった一人。元・勇者のアインである。
「まず最初に言っておくけど……株は、“戦場”よ」
リゼリアがテーブルの上に資料を広げる。
「敵は?」
「感情と欲望と、予測不能な市場ね」
アインは腕を組んでうなった。
「つまり、戦術が必要ってことか」
「そのとおり。じゃあ、質問。アイン、剣一本だけで魔王城に突っ込むのと、盾・弓・魔法使いを揃えて挑むの、どっちが勝率高い?」
「……後者だな」
「じゃあ、なぜ株になると一つの銘柄に全ツッパしようとする人が多いのかしら?」
「……うっ」
リゼリアは、チョークで羊皮紙に図を描く。
魔法石を埋め込んだ特製スライドは、彼女の魔力で動き、まるで現代のプレゼンのように資料を切り替えていく。
「投資の基本は『分散』。これは、リスクを減らす最大の防具よ」
「複数の武器を持て、ってことか」
「そう。たとえば――」
リゼリアは3つの銘柄の例を出す。
・王都の交易会社(安定成長株)
・魔導機工房(成長性高いが波がある)
・地方酒場チェーン(高配当だが衰退気味)
「この三つを組み合わせれば、仮に一つが落ちても全滅は避けられるの」
「なるほどな……。それって、“パーティ編成”と同じだな」
アインの顔に、ようやく生気が戻り始めた。
「そうか……俺、今まで“剣一本”で世界を救おうとしてた。だから、魔王を倒したあとは何も残らなかったんだ……」
「そうよ。剣だけじゃ、老後は守れない」
リゼリアの言葉は、投資だけでなく、人生そのものにも響いていた。
「ちなみに……勇者時代に貯めた報奨金って、まだ残ってる?」
「えーと……五百金貨ほど」
「それ、すぐに使わないお金なら“長期枠”に回せるわね。今の相場なら、年利4〜7%狙えるわ」
「年利ってなんだ?」
「一年あたりの利益率。仮に5%で複利運用すると――」
彼女は魔法式を紙に走らせ、アインに見せる。
《元本×(1+利率)ⁿ=資産》
「……20年で約2.6倍。30年なら4倍以上になるわ」
「すげえ……!」
リゼリアは微笑んだ。
「でも忘れないで。投資で一番大事なのは、“続けること”」
「戦うんじゃなく、生き残るってことか」
「そのとおり。市場は戦争より長く続くわ。エルフの寿命でも、振り回されるくらいにはね」
その夜、アインはギルドの宿に戻り、手持ちの金貨で証券口座の登録を始めた。
かつては剣で世界を救った男が、
今、分散投資という“盾”を手に入れようとしていた。
剣を置き、金貨を持った勇者。
次の戦場は、経済だった。
読んでいただきありがとうございました!
「持ってるだけでお金がもらえる」なんて、まるで幻術みたいですが、
現実の世界でもちゃんと存在する仕組みが“配当金”です。
リゼリアは、まだまだ投資初心者。
次回はついに、最初の株購入に挑戦します!
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