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第28話 通信戦争の兆し

新しい技術は、いつだって人を動かす。

今回は、リゼリアが“魔導通信”の成功によって生まれる波乱に直面します。

「……国王が動いた?」


魔導通信の実験成功から三日後。

リゼリアのもとに届いた報せは、静かな衝撃をもたらした。


「ギルメリア工房の特許を王国が買い取るそうです」

報告したのは、情報屋の男――通称“黒羽のアレン”。


「技術の独占、か」

リゼリアは椅子の背に寄りかかり、静かに目を閉じた。


魔導通信が成功した瞬間、彼女はこうなることを予想していた。

情報を制する者が国を制する――

それは戦場でも市場でも、変わらない真理だ。


「問題は、他の国も黙っていないことです」

アレンの声には焦りがあった。


「北のバルゼン帝国も、独自に通信塔を建て始めました。

しかも、軍用です」


「軍用通信……」

リゼリアの指が机をとんとんと叩く。


かつて、魔王を倒すために魔力を武器にしてきた彼女。

だが今、同じ魔力が“情報戦”の火種になろうとしていた。


「技術を奪い合えば、必ず戦になる」

「じゃあ……止めるんですか?」


「止められない。けれど、方向を変えることはできる」


リゼリアは立ち上がり、窓の外に広がる通信塔を見つめた。

青い光が夜空を照らし、まるで未来を示す灯火のようだった。


「私は“通信を支配する者”ではなく、

“通信を共有する仕組み”を作る。

どの国も使えるようにしてしまえば、奪う理由はなくなるわ」


アレンは驚いた顔をした。

「そんなことが……できるのか?」


「難しい。でも、価値がある」

リゼリアは小さく笑った。


「私の寿命は長い。人が争い、後悔して、学ぶまで……

その全てを見届けるだけの時間があるのよ」


彼女の瞳に、かつて戦場で見た炎が映った。

しかしその炎は、破壊ではなく再生の光だった。


「情報を人のために。

それが、私の“次の投資”よ」


外の風が鳴り、通信塔の魔力がひときわ強く光る。

新しい時代の夜明けが、静かに始まっていた。



今日の学び

・利益より先に「信頼」を築く者が、時代を動かす。

リゼリアの決断は、世界を“情報共有”へ導く第一歩でした。

次回は、その理念に共鳴する仲間との出会い。

新たな同志が登場する第29話、お楽しみに

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