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第27話 エルフ、魔導通信に賭ける

人と人をつなぐ力――それは魔法でも金でも変わらない。

今回は、リゼリアが新たな市場「魔導通信」に挑むお話です。

「これが……“魔導通信塔”?」


リゼリアは首都アレイシアの外れにそびえ立つ巨大な塔を見上げた。

塔の頂点には淡い青の魔力結晶が浮かび、空に光の帯を放っている。


「魔法で遠くの街と話せるって……本当に可能なんですか?」

隣にいたルークが半信半疑で問う。


「ええ。魔力を媒介に声や情報を飛ばす――つまり“通信”の魔法よ」

リゼリアの声は冷静だったが、その瞳には明らかな興奮があった。


この技術が普及すれば、国と国の距離は縮まる。

商人は情報を即座に共有でき、冒険者は依頼を遠方で受けられる。

何より、情報の速さが新たな富を生む――。


「この技術を開発したのは“魔導工房ギルメリア”。

出資者はまだ少ないけれど、成功すれば……世界が変わる」


ルークは不安そうに眉をひそめる。

「でも、もし失敗したら……全部パーですよね?」


「そうね」

リゼリアは静かにうなずいた。


「だからこそ、ここに賭ける価値があるの。

多くの人がまだ気づかない“芽”を見つける――それが投資家の目よ」


彼女は懐から水晶板を取り出し、魔力で契約の印を刻む。

光が弾け、株式の契約が成立した。


「……完了。これで“ギルメリア”の出資者ね」


その瞬間、空の色がわずかに変わった。

通信塔の魔力が安定し、遠くの都市との交信が成功したのだ。


「リゼリアさん! 本当に繋がりました!」

ルークの声が弾む。塔の頂点から声が響き、別の街の研究員が応じた。


『こちらギルメリア支部! 成功です! 成功しました!』


街の人々が歓声を上げた。

リゼリアは空を見上げながら、静かに呟いた。


「情報が、世界を変える。

魔法が人を救う時代は終わり……

これからは“知る力”が人を豊かにするのよ」


ルークが感嘆の息を漏らす。

「リゼリアさんって、本当に未来を見てますね……」


「未来は見えない。でも、“見ようとする姿勢”は誰にでもできるわ」


その笑みは穏やかで、どこか寂しげでもあった。

長命のエルフにとって、時代は何度も変わる。

だが彼女は、その度に前へ進むと決めている。


――たとえ、誰よりも長く生きるとしても。



今日の学び


・未来は「見える人」が掴むのではなく、「見ようとする人」が掴む。

今回は“魔導通信”=現代で言う通信革命の話でした。

次回は、この発明をめぐって各国の思惑が動き出します――

リゼリアが新たな決断を下す第28話、お楽しみに✨

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