「第八話」《遠乗りの『約束』》
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カイの朝は早い。朝食を作り、子供たちを順番に起こす。年長の子たちが起き始めたら、小さい子を起こさせ、自分は朝食の準備をする。
「ほら。学校だぞ。早く準備しろ」
アルディアでは七歳から十二歳まで、身分に関わらず、学校へ通うことが義務付けられている。今日はこの孤児院の子供たちが登校する日だった。
「いってきまーす!!」
「気をつけて帰ってくるんだぞ!!」
走って街へ飛び出していく子供達を見送ると、残った六歳以下の子供たちと皿を片付け、その手を拭う頃には、もう、今日の予定を思い浮かんでいる。
「全員いるな。今日はマリンダさんが来てくれる。俺は街に出る。いいか?」
『あい!』
「いい返事だ。さぁ、マリンダさんをお出迎えに行こう」
先程一応鳴らすという約束のベルがなった。今頃マリンダさんは洗濯機を回してくれている頃だろう。風呂場を覗くとマリンダさんがいた。
「マリンダ先生!」
「おや、お出迎えご苦労さん」
子供たちはマリンダに抱きつく。
「じゃあ、すみませんが、晩御飯まで子供達をよろしくお願いします」
「ゆっくりしておいで」
カイは子供達に夕食には戻ると伝え、作っておいたお弁当を持ち馬小屋へ行く。
「エル」
主の声でエルは勢いよく立ち上がる。
「エルナのところへ行くぞ」
エルは鼻息を荒くし、馬具をつけやすいように屈む。
「エルナに忘れてたなんて言うなよ?」
エルはそっぽを向く。最近はカイよりエルナの方がお気に入りらしい。カイは溜息をつき、エルを外へ出す。
「いい天気だ」
空は雲ひとつない快晴。まさに遠乗りにふさわしい。
「女将さん」
「あら。お早いですね。エルナ、カイさんいらっしゃったわよ!」
女将さんがキッチンへ呼びかけると、中でドタバタと走る音が聞こえた。
「あの子ったら、昨日からお弁当を準備してたんですよ」
女将さんがふふふと上品に笑う。カイは、その笑顔を見て、お弁当を作ってこなくてもよかったかなと、少し思う。
「準備できた! カイさん!」
大きなリュックサックを背負い、頬を少し赤くしたエルナが出てきた。
「でかいな…リュックサック」
エルに乗せられるかどうか少し悩む。
「エル君のおやつ入ってるの! ほら、リンゴ!」
リュックサックから一つリンゴを取り出してカイに見せる。カイの口角が少し上がった。
「それならエルも乗せるしかないな」
外で待っていたエルのもとへ向かう。立派な黒馬は、道行く人々の視線を浴びていた。その視線を誇らしげにエルはビシッと立っていた。
「ほら。エルナ乗せるから動くなよ」
エルの背中にエルナを乗せ、カイは大きなリュックサックを背負う。馬具に足をかけエルの背中に乗る。
「いいか? 絶対に手網を離すんじゃないぞ。落ちるからな?」
目をキラキラと輝かせてエルに抱きつくエルナは、カイの話を聞いていないだろう。
「じゃあ女将さん。エルナを借ります。夕食には間に合うように帰ります」
「ええ。よろしくお願いします」
深々と頭を下げられ、カイも軽く会釈を返す。まだエルと戯れていたエルナをしっかりとホールドする。
「エル。裏からだ。行くぞ」
人混みを避け、国を囲む砦の出口へ向かう。
「カイか! エルも久しだな。おお〜よしよし」
砦の兵士とは現役時代ほとんど関わりがなかったが、今となっては顔パス状態で通してくれるほどの関係になった。そしてこの兵士が毎回エルの大好物のリンゴをくれる。それをエルも分かっているからか砦から動こうとしないのだ。今回はエルナを連れているからか、早めに出発できそうだ。
「あぁ。少し遠乗りにな。この子は世話になった宿の子供だ」
「エルナでふっ!」
盛大に噛んだエルナは顔を赤らめた。
「お嬢ちゃん、エルは足が速ぇからな! 舌噛まねぇようにするんだぞ?」
「はい!!」
いい返事だと兵士は笑い、二人を外へと送り出した。他国へ行く列から離れると、風が一気に広がった。
「さて、どこへ行こうか」
行き先を決めずに国を出てしまった。
「カイさん! 私、滝を見てみたい!」
エルナが顔を上げ、目を輝かせて告げる。
「滝か…分かった。」
カイは持ってきていたカバンから一つリンゴを取り出す。エルがリンゴの匂いに釣られて首を回す。
「ほらエルナ。エルに滝へ連れていってくれって頼んでみろ」
エルナはこくんと頷きリンゴをエルに渡す。
「エル! 私を滝のあるところに連れてって!」
エルは貰ったリンゴを器用に食べ、満足げに嘶き、首を振った。
「しっかり捕まってろよ」
エルナを後ろからしっかり抱え込み手綱を持たせる。
「じゃあ、相棒。行くぞ」
次回の更新は
2025年8月29日(金)18時00分
です。
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畸人0.1号