「第二十三話」《憧れの『部下』》
カンッッッッ
「しゃぁぁ!!」
ルカに一本とられ、嘆くミロ。最近は珍しい光景でも無くなってきた。ルカの成長スピードは凄まじく、竹刀の扱いを教えだして3ヶ月で、ミロ相手に3本に1本は取れるようになった。
「油断してないのに……なんで」
「そりゃ、毎日稽古つけてもらってるからな!」
空に向かってガッツポーズをしていたルカが答える。
「次は、カイさんだからな! 覚悟しといてよ!」
「俺が、ルカに負ける日なんて向こう千年は来ないさ」
「あー! 言ったな!! すぐ負けさせてあげるから待ってて」
やる気に満ちるルカを他所に、ミロは帰る準備をしている。
「じゃあ、カイさん。僕は仕事があるので」
「あぁ、またな」
ミロの背中を見送り、ルカの稽古を再開する。
「カイさん」
先程帰ったはずのミロの声がした。
「なんだ? あぁ、ハルか」
ミロが、連れてきたのはハルだった。
「カイ中尉が、ご飯奢りに来てくれないんで、来ちゃいました」
「そんなことも言ったな」
竹刀を置き、外に持ってきていた水を飲む。
「竹刀すか? 拳銃とかじゃなくて?」
「あぁ。まぁ、そのうち教えるつもりではあるが、今はまだいいだろう」
「へぇ〜」と、ハルが竹刀を持ち上げる。
「扱えるのか?」
「まさか? 新兵の訓練は普通、銃からすよ」
「そうだな。聞いた俺が間違ってた」
「なんですかそれ」と項垂れるハル。
「ハルさん!!」
ルカが、ハルに向かって敬礼をした。その、敬礼は見よう見まねだろうが、やる気には満ちていた。
「え、ちょっとカイ中尉? 俺、こういうの慣れてないんすけど……」
など、ほざきながらも、敬礼を返す。
「俺、あなたに憧れてて!! それで! 兵士になりたくて!!」
顔を、ルカに向けたまま、視線だけをカイに投げた。その視線に気づいたカイは目を逸らす。
「なんて言うか! その! 入隊したらハルさんの隊に入れてください!!」
「えっと……心意気は分かったすけど、所属する隊を決めるのは上なんで……」
「カイさんが、口添えしてやるって言ってました!」
またまた、睨まれるカイ。今度は顔ごとハルから背けた。
「ちょっとカイ中尉? お話できます?」
ハルはルカに声が届かないところまでカイを、引っ張る。
「いいんですか? あの子を兵士にしても」
「本人たっての希望だからな」
「それでもですよ? ほら、だって死ぬ可能性もあるじゃないすか」
ハルにしては珍しく、狼狽えている。
「しっかりしろ。お前は、ルカの憧れだぞ?」
「いや、嬉しいすけど……嬉しくないかも……止めないんすか?」
ハルが恐る恐る、カイに聞く。
「どこの親が、子供のやりたいことを否定する」
カイは、孤児院を継ぐと決めた時に誓っていた。
子供達がしたいことを応援すると――
こんなところでそのツケが回ってくるとは思っていなかったが。
「まあ、危険なことはしないでほしいがな」
ハルは諦めたように首を振った。
「分かりましたよ。死なないように育ててくださいね?」
「誰が教えてると思ってるんだ」
「そりゃあ、『英雄』が嫌で逃げた中尉ですかねー」
「……痛いところをついたな」
カイはハルの背中をバシッと叩いた。
ルカを預けるならこいつがいい。
兵士なりたいと言い出したルカを見て、初めから決めていた。
例え、昔の上司、部下に恨まれようが、ルカの配属先には口を出すつもりだ。
「死なせるかよ。その前に止めてやるさ」
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2025年12月26日(金)18時00分
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畸人0.1号




