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戦勝国の敗将  作者: 畸人0.1号
第二章
23/26

「第二十二話」《『英雄』の理由》

 バシッッッ


 木刀が空を舞う。


「これで10本だな」

「手加減してよぉ……」


 ダリスの店で言ったように、ルカは毎日、夕方から孤児院へ来てカイに稽古をつけられている。


「手加減して勝っても嬉しくないだろ」

「それはそうだけど」


「また負けたぁぁぁ」と叫ぶルカを横目に頭から水を被る。

 頭のてっぺんからつま先まで、濡れスッキリする。


「カイさん。この季節にそれは風邪引きますよ」


 ミロも孤児院へやってきた。


「俺は風邪を引いたことがないから心配するな」

「だからといってこの先、風邪引かないという理由にはなりませんよ」


 外に干してあったタオルを丸めてミロがカイに投げる。豪速球だ。


「ミロ! 俺と一本勝負しろ!!」


 ルカが何を思い立ったか、木刀をこちらに投げた。


「なんでだよ……勝てないって」

「ふふん。手加減してやるからな!」


 ルカが鼻の下を擦り、木刀を方に置く。


「おい、ルカ。やめろ」

「なんだよ! 兄には勝てないってか?」


 ミロの顔が一段と険しくなる。


「いいよ。やろうか」

「そう来なくっちゃ。俺の弟じゃないからな」

「誰が誰の弟だって?」


 ミロとルカは同い年だが、双子のどちらが兄か、姉かの戦いがあるようにここにもその戦いがあったのだ。


「ルカ……ミロ……もう知らないからな」


 ミロが持ってきた荷物を受け取り、危険があればすぐに止められるところへ移動する。


「カイ様? どうかされましたか?」


 街から帰ってきたリアがカイへ話しかけてきた。


「模擬戦をやるんだと。止めたんだがな」

「あら、これはルカくんの圧勝ですかね」

「いいや」


 二人の木刀が激しく打ち合った……と思われたが、またまた空高く舞う木刀。


「ミロの圧勝だ」


 だからやめておけと言ったのにと、カイは頭を抱える。


「なぜお分かりになったのです? ミロ様の圧勝だと」


 項垂れるルカを傍目にカイへ、リアが問いかける。


「手を見てみろ」

「豆の多さは圧倒的にルカくんですが……」

「違う」


 リアが、眉を顰め、頭を少し傾ける。


「皮の厚さだよ。どう見てもミロの手の方が厚いだろ」


 カイからミロの手へ視線を移動させる。


「なるほど」

「まだまだ、だな。ルカもあんたも」

「あんた、ではございません。リアです」


「そろそろ名前で呼ぶのも慣れて頂かないと」と、リアに言われるが、名前で呼ぶのは小っ恥ずかしいのだ。


「ルカ」

「カイさん……え、怖いよ? その笑顔」

「相手の力量も測れない癖に喧嘩を打った罰だ」

「え……ちょ。やだ、その笑顔……」

「腕立て伏せ、500回!!」

「あァァァァ!!!!」


 ルカが頭を掻きむしるのをみて、ミロが鼻で笑う。


「これで、僕が兄だな」

「なんだと!! 俺に決まってる!」

「負けたヤツが何を言っても意味ないんだよ」

「こんにゃろ! もう1回だ!」

「ルカ〜?」

「はい。つびません」


 1、2と、数を数え始めたルカをミロが煽り続けている。


「全く……こいつらは何しに来たのか」


 ミロとルカは、この孤児院を出て街で一人暮らしをしている。ルカは土木現場、ミロはパン屋で働いているという。街に家があるというのにこの孤児院へ度々帰ってくるのだ。


「私と手合わせしていただけませんこと?」


 リアが落ちている木刀を拾い上げ、カイへ刃先を向ける。


「……はぁ、なんでこうも血気盛んな奴しかいないのか」


 カイは刃先を向けるリアに向かい合い、手を上げる。


「……なんですか?」

「俺の得意武器は」

「銃火器ですよね?」

「そうだ、俺は銃以外全く扱えない。つまり、やらなくても結果はわかる。リア……さんの勝ちだ」


 カイは手をおろし、孤児院の建物の中へ進む。


「なぜですか……なぜ! 私が刀を使えないという可能性を捨てたのですか!」

「立ち方だよ」

「立ち方……? なぜ、そんなものが分かるんです?」


 カイは、少し遠い目をした。


「相手の得意武器が分かれば、それに対応できるだろう」


 そう。それが分からなければ、


「対応ができなければ、死だぞ。死ぬ気で覚えるに決まってる」


 だからこそ、カイは『英雄』として、アルディア国内に名を轟かせているのだ。ただ、重要要塞を落としただけではない。その観察眼で、多数の人々を助けてきたのだ。それは、民間人から、国の上層部までに及ぶ。


「だから、目をつけられたのですよ。カイ様」


 リアが呟いた言葉は誰にも届かない。だが、それはカイが選ばれた重要な理由だった。平民も、貴族も、分け隔てなく助ける。命を正義とし、奪うものを悪とする。


「だから、あなたは――――」



『英雄』なんですよ

続きも読みたいと思っていただけましたら、ぜひ、評価、感想等々よろしくお願い致します!

励みになります!



次回の更新は


2025年12月19日(金)18時00分


です。


またのご来場お待ちしております


畸人0.1号

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