「第二十一話」《『卒業』の時間》
「へえーここが、ミロとルカの学校か!!」
「ヴィン、静かにしてろ」
今日は、ミロとルカの卒業式。
二人の希望でカイ、ヴィン、マリンダの三人で式場へ向かうことになった。
二人に渡されていた席に座る。国の端の地域であるためか、軍関係者の顔はほとんど見られない。
席を見渡せば、周りは女性ばかり。それがどういう意味を示すかは、今日卒業する子供たちはまだ分からないだろう。
「久しぶりの卒業式だねえ。最近は卒業生がいなかったから」
「確かにそうですね。ミロとルカの上の学年は、自分も知らないです」
「あの子たちは今、何をしてるのかねえ」
照明が静かに落ち、ざわめきが一拍遅れて消える。
「卒業生の入場です。拍手でお迎えください!」
場内に声が響き、波のような拍手が広がっていく。
ヴィンが、身を乗り出して、小さく口笛を吹きそうになったのをカイが肘で押し戻す。
「卒業式ってこっち側から見るとこんなふうに見えてんだ」
「なんだ、ヴィン。お前は"お偉いさん側"か」
「そうだね〜あっち側しか座ったことないや」
アルディア国内で行われる卒業式の来賓席に出席するのは、軍本部所属の総本部長、地区長、そして政を行う大臣たちから一名だ。ザルガス側の来賓事情は知らないがそう大差はないと考えられる。ヴィンの身分を考えると頭が痛くなる。
「お前が、向こうの国王と血縁関係じゃないことを望むよ」
「さあ〜? わかんないよ?」
「冗談だろ」
国王と血縁関係があり、勅命がくだり謁見できる身分など絞られてくる。
「かいっち! ミロとルカ、出てきたよ!」
ヴィンの弾んだ声に顔を上げる。
入場口に目を向けるとそこには、拍手を浴びながら誇らしげに歩く、二人がいた。
鼻の奥なツンと熱くなる。
ミロと初めて会った――いや、"出会わされた"あの日のことが蘇る。そしてルカとも。
「おやおや、もう泣いてるよ。立派な親だねえ」
「ほんとだー!! かいっち、泣いてる!!」
「あんたは静かにしていないとしょっ引かれるよ」
「この国にいていい人間じゃないんだからね」とマリンダに言われ一瞬、静かにしたもののヴィンは周りに見えないように肘をついてくる。
もうすぐミロとルカがカイの目の前を通るというのに、一筋、溢れた涙は止まるということを知らない。カイはぐいっと、こぼれる涙を乱暴に拭き取る。
その様子に気がついたルカが前を歩くミロの裾を引っ張る。そして「あっち」と、カイを指差す。
二人の視線がカイに向いた瞬間、ミロは額に手を当て、「やれやれ」と首を振る。ルカは口を抑え肩を震わせた。そして揃って、小さく手を振る。
二人が「あ」と口を開けた時にはもう遅かった。
そこでカイの涙腺は崩壊した。
式のあいだ中、涙がかれる気配などなく、周囲のご婦人方に睨まれた。
____
「カイさん!」
「マリンダ院長!」
式が終わり、会場の外で二人が出てくるのを待っていると、背中に勢いよく抱きつかれた。
「カイさん、泣くの早すぎですよ。入場の時から泣いてたじゃないですか」
「ほんと! マリンダ院長は泣いてないっていうのにさ!」
「かいっち〜ほらほら言われてるぞー」
カイは、わざとらしく一つ咳払いをした。
「……とりあえず、二人とも卒業おめでとう」
「うん!」
「ありがとうございます」
二人の姿は、初めて会った時と似ても似つかない。
背は伸び、目つきも強くなり、笑った時の顔が大人びて見えた。
その事実が、胸に押し寄せた瞬間、また視界が滲む。
「ダメだねえ……今日は使い物にならないね」
「かいっちどんなけ泣くの〜?」
二人の声などカイの耳には届かない。
「お前たちは、俺の宝物だ!!」
抑えきれない感情のまま、カイは二人を力いっぱい抱きしめた。
「わ!? 重いってば!! 鼻水つくし!!」
「カイさん?! ちょ! 苦しい……!!」
二人の可哀想な悲鳴は他の家族たちを振り向かせ、空を飛んでいた鳥たちすら驚いて軌道を変えたようだった。
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2025年12月12日(金)18時00分
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畸人0.1号




