「第十七話」《戦争の『足音』》
城門の前に立つと、聞き慣れた声が飛んで来た。
「よォ! 久しぶりだな! カイ」
「あぁ、元気そうで良かった」
子供たちを城壁の外へ連れていくため、大人数になる。最近、国王が事前許可制にしたらしい。許可が下りないことが増えてきたなんて噂もある。
「外出の許可をとりに来たんだが……これが書類だ」
リストを差し出す。人数と年齢が一目で分かるようにまとめてある。
「おう。あ〜……この人数じゃ、許可は降りないかもな」
ペラペラと執拗にリストを捲り、兵士は唸った。
「なぜ?」
兵士は一瞬、声を潜めた。
「ほら、最近聞くだろ? 戦争がまた始まるってさ」
とりあえず上に確認してくる、と兵士は事務所の中に入って行った。
「噂が――ここまでも」
ヴィンに聞いた時から、いやその前から。
なんとなく、いや解っていた。
テオの墓参りに行ったあの時
新兵が増えていた時から。
戦争は起こる――
揺るがぬ事実だ。
戦争を止める。
覚悟を決めなくては――
カイは高鳴る胸を押さえ、呼吸を整える。
すぐそこに、あの地獄が待っているのだ。
「カイ……悪い、やっぱ許可降りねえとさ」
すまんなと頭をかきながら兵士が出てきた。
「そうか……厳しくなったな」
周りを見れば、同じようなやりとりをしている人々がたくさんいた。
逃げるためなのか、はたまた、ただ外に出たいのか――
これがすべて国王には不都合なのだろう。
人が減れば戦力は少なくなる。
つまり戦争に負ける可能性が増えるというわけだ。
一度は忠誠を誓った相手だが、今はそんな気にはならない。
「ああ。まだ商隊は止められてないから、物資には困ることはないだろうがな」
「それも時間のうち、か」
二人が、腕を組み唸っていると、兵士に連れられ、外に出される人を見つけた。
「あれは?」
「ん? あれはザルガスのやつだよ。次の戦争相手ってあっちの同盟国なんだろ? だから追い出しが始まってるんだとさ」
強制帰還――
本格的な戦争が始まる前に、ヘイトの矛先になる人々を返す行為。
「まっさか、『英雄』殿がザルガスの奴なんて匿ってないよな?」
「……当たり前だ。敵だぞ?」
「そろそろお触れが出ると思うが、匿うと"罪"だとさ」
カイの心臓が飛び跳ねる。
自分がやっていることが"罪"になる――
そう思えば、一般人であれば手を引くだろう。
だが、カイには引くという選択肢はない。
子供たちが犠牲になるのだ。やるしかない。
これは自分に課せられた使命だ――
カイはそう思っていた。
「子供たちを遊びに行かせたいんだろ?」
「ああ、いいところを知らないか?」
「それだったら、王城の裏はどうだ? あそこは穴場だろ?」
カイは少し考え込んだ。
少し遠い、そしてカイ自身が行くのを断った場所である。
「まあ、考えてみるよ。ありがとう」
「おう。……気をつけろよ、カイ」
気をつけろ、か――
それはただの別れの言葉か、それとも、何か知っての忠告か。
こんな城壁のお守りをしている場合ではない人材。恐ろしいやつだ、とカイも背を向けて歩き出した。
王城の裏か――
考えなくては。子供たちを連れて行く場所を。
ヴィンに、子供たちに何と伝えようか。
カイは考えを巡らしながら歩き続けた。
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次回の更新は
作者が修学旅行のため一週間お休みいただきます
そして、一話が、少し短くなっていること、
ご迷惑おかけしますゆえ、謝罪申し上げます
とりあえず、楽しんでまいります!
2025年11月14日(金)18時00分
です。
またのご来場お待ちしております
畸人0.1号




