TEXT54:Scylla~進行度1~
スキュラシステム。
ヴィクターグループがマキナロイドにのみ搭載した対殲滅用システムであり、マキナロイドの意思とは関係なく所有者の発動キーの信号を受け取り、痛覚が残されたまま骨格パーツが戦闘パーツに変形する使用になっている。
そして、その美しいマキナロイドが悍ましい化け物へと変ずる様から
スキュラの名前がこのシステムに使われたのだ。
「アルバ・・・・」
その無残にも敗れた赤いドレスの下に隠していた夥しい数の節足を蠢かし天井の照明器具にしがみ付きながら、アルバは蜘蛛のように美琴に忍び寄ってきた。無理やり引き裂かれた人工皮膚からはいびつな鎌のようなブレードと機関銃が見える。
「あ・・・あぁ・・・aaa・・・AAA・・・」
開かれたその美しいルビー色の瞳からはぽたり、ぽたりと人口血液がまるで涙のように滴り落ち豪華な絨毯を濡らしていった
「・・・・ツヴァイ。廻くんを急いでヤタガラス新宿支部に」
「おいおい・・まさかお前ーーー」
「頑張って時間稼ぎしておくから、増援呼んできて。」
ツヴァイにそう指示を出せば美琴は静かに右手を翳し神結システムを起動させ、ツヴァイとのシンクロパスを繋いだ。
・・・本当に、時間稼ぎ程度にしかならないのだが
「これで、少しはアンタの動きが私の体にも伝わる・・躱し続けるくらいならなんとか」
「・・・・美琴」
「・・・・信じてるよ。」
そう呟いた美琴にツヴァイは小さく舌打ちをすれば無理やり廻を担ぎ上げ玄関へと走り出した。
「は、離せって・・アルバが・・・アルバ、が・・・」
「いいから黙ってろ。」
ツヴァイが一旦戦線から離脱した事を横目で見て安堵のため息をつけば美琴は静かに日本刀を構えて、背後に居るマックス達に声をかけた
「・・・アンタらも、フランを連れて離脱しな。」
「天使食らい・・・」
「ここでアンタらのどちらかが助太刀なんてされても、私の敵になるかここで自爆されるのは目に見えてる。・・・だったらフラン連れて離脱してもらったほうが楽なんでね」
「ーーー!!・・・やれやれ、そんな事までお見通しか」
美琴の言葉にマックスはやれやれとため息をつく。その通りだったのだ
ヴィクターは自分以外は誰も信じていない。それゆえにデウスロイドやマキナロイドにも、もし自分の考えに反する行動をした場合の処置装置が埋め込まれているのである
マックスは美琴を見つめて、それからカスパールを見て静かに頷けばフランを抱きかかえて静かに玄関に向けて歩き出した
「・・・・天使喰らい。」
不意に投げかけられたマックスの言葉に美琴が静かに目線を向ける
「スキュラが発動しちまった以上、もうアルバは元に戻らねぇ。・・・・情けなんざかけるな。壊したやるのがアルバのためだ。」
「・・・・・わかってる。」
そう短く答えを返した美琴にマックスは小さくうなずくとそのままカスパールと共にフランを連れて店から離脱した。
その瞬間、アルバの剝き出しになった節足に搭載された機関銃の銃口が一斉に美琴に向き激しい銃撃音が響き渡った
「あっぶね!!!」
ツヴァイとのリンクが繋がっていた事が幸いだったのか、自身に向けられた銃撃の雨を間一髪で潜り抜け美琴はバーカウンターに身を隠した
「・・・ヴィクターの外道。なんつー物仕込んでんだか」
深くため息を吐き、バーカウンターに身を隠しながらさてどうしたものかと思案していると脳内にツヴァイの声が響いた
『ったく・・・冷や冷やさせやがって』
「ツヴァイ!・・・その、廻くんは?」
『あぁ、気絶させた。ちょっとやそっとでくたばるポンコツじゃねぇだろうさ』
「よかった・・・・」
ツヴァイの言葉に廻への心配は今のところ不要であると判断した美琴はすぐに日本刀を構えて周囲を見回した
「さて・・・問題はこっからなんだよなぁ」
『10分は持ちこたえろ。・・・必ず戻る』
「わかった・・・それまではあの自動小銃の雨あられ、なんとか凌いでみせるわ」




