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ANGEL EATER  作者: 平藤夜虎
ヴィクターグループ編
40/47

text40:【Re:verb】

【夕方18:00 NEO六本木 】


「・・・ここが要ちゃんの言ってたお店かぁ・・・」


要から店の場所を聞いた美琴とツヴァイは、夜の帳が降りたNEO六本木に足を踏み入れていた。数多くの高級クラブが立ち並ぶ一角、そこに少し古臭いながらも玄関先に赤い絨毯がひかれ、内開きタイプの豪華な装飾が施されたドアには【welcome】と書かれた金のプレートが取り付けられた店が静かに佇んでいる


―ーーー 高級クラブ、【Re:verb】である。



「・・・ほう。随分と洒落た箱じゃねぇか」


「こらこら!まだ開店準備中でしょうに・・」


制止も聞かず、重たいドアを押し開けて中を覗き込むツヴァイに美琴はやれやれとため息をつくと同じようにドアの隙間から中を覗き込んだ


店の中は少し薄暗く、紫と藍色のネオンライトが交差し、スモークの中に微かに香水とオゾンの匂いが混じっている


「“NEO六本木”って響きから想像してたよりも、ずっと静かだな・・・。客より“選ばれた会話”が主役ってわけか」


「はぁ~・・・・こりゃまた・・・まるで生きた美術館みたい」


ふと、足元にはガラスの床になっていて流れるように光る電子文様の下、無数のデータコードが川のように流れている。時折、ギミックなのか魚のホログラムがゆらりと、美琴とツヴァイの足元を流れるデータコードの川を静かに泳いでいった


別世界のようでありながらも、どこか高級感ただよう店内に二人が思わず見惚れていたその時、複数ある座席スペースのテーブルを掃除していた一人の女性が声をかけてきた


「・・・すみません。当店はまだ開店準備中でして」


赤いドレスに身を包んだ女性。月光のような肌、血のように深い紅の唇


ーーーー しかし、瞳だけが“機械の光”を宿していた



「あ、すみませんいきなり・・・・って、もしかしてマキナロイド?」


「はい。ここでホストを務めているマキナロイド《アルバ》と申します。・・・失礼ですが【美琴】様と【ツヴァイ】様でしょうか?」


「え?なんで名前・・・」


「・・・顔バレしてやがるな」


無機質なアルバの瞳が静かに二人を見つめてくる。その様子にツヴァイは少しばつが悪そうに頬をかく


「・・・あのぉ・・・もしかしてウチのエロデウスロイドが何かご無礼を・・・?」


「・・・貴方のデウスロイド個体──ツヴァイ氏が過去に一度、当店の監視網へ“侵入”した記録がありまして。その時、貴方の識別コードが同時に検出されました」


「こらぁ!帰ったらお説教決定だからね!?ツヴァイ!」


アルバの口からでたツヴァイの過去の行動を聞いて美琴は軽く拳を振り上げるも、当の本人は悪びれる様子もなくポケットからブラックデビルを取り出してそのまま火をつけた


「・・・へぇ、記録まで残してたのか。だが、あの時は“遊び半分”だったはずだがな」


「・・警戒システムの中枢”が綺麗に抜き取られた形跡も確認されております。・・・〝遊びの範疇〟の域を超えていると思われますが。」


「本ッッ当にすみません・・・・」


「〝仕事熱心だった頃〟の話さ。だがもう時効だろ?・・・水に流してくれや。な?」


アルバの言葉にツヴァイがそう軽口を返した時、店の奥にあるVIPルームから一人の男性が現れてこちらに近寄ってきた


「アルバ~♡なんだよも~!いきなり外に出てくからどうかし・・・・うげ。なんてそのホスト野郎が居るわけ?・・」


フード付きのパーカー姿にジーンズスタイル、しかしその髪型や顔のつくりは要の相棒である朔にどこか面影がある。


現在はヤタガラス諜報戦略係にその身を置き情報収集やハッキングなどを巧みに操るデウスロイド。廻の姿は、当初は笑顔を浮かべていたものの、美琴の隣に立つツヴァイを見つければジト目のままアルバの傍に近寄った


「?・・・お友達ではないのですか?」


「ち・が・い・ま・すぅ~!!俺昔コイツに苛められたんだからぁ~!」


首をかしげるアルバに、廻は泣いている動作をしながらツヴァイを指差してわざとらしく抗議をする。しかし、そんな廻の様子にツヴァイはタバコをくわえて片手をポケットに突っ込んだまま、舐めたような目つきで悪い笑みを浮かべた


「おいおい・・・・出たな、“六本木一のうるせぇ電子サーファー”」


「はぁ~?俺まだメモリの傷残ってんですけどぉ~?あの時の“口撃ログ”……リセットしても残るぐらいのトラウマなんだからなぁ!・・うっ、うっ・・アルバ・・可哀そうな俺を慰めて・・・」


「……ハッ、覚えてんのかよ。自分のボキャブラリ全部AI辞書から拾ってた時代のことを」


「俺を旧型のポンコツパソコンと一緒にすんじゃねぇし~・・はぁ・・アルバ・・俺、ふか~く傷ついたかも・・抱きしめて・・・」


ツヴァイの煽りスタイルにめそ、めそとアルバの背後にわざと隠れる廻。その様子にアルバは慣れた手つきで優しく廻の頭を撫でた


「廻、心配はありません。今のような煽り行為で貴方のCUPに破損が見られた様子はありません。」


「アルバのその事務的天然ボケがたまに悲しい・・・」


「い、いやぁ・・ごめんねぇ廻くん。ウチのツヴァイが・・・」


苦笑いを浮かべて謝罪をする美琴に廻が頬を膨らませ、ツヴァイを指差したまま声を上げる



「美琴さん、この人ホントえげつないの!“ログに残らない口のナイフ”ってあだ名ついてるんだよ!?デウスロイド・・いや!AI界のサディストだよ!?」


「・・・誰がそんなセンスのねぇあだ名つけたんだ。まさかお前じゃねぇだろうな」


「〝一被害者〟としての意見ですぅ~・・美琴さん気を付けなよ?コイツ絶対脳内で美琴さんに〝アブノーマルな事〟しようと企んでるから!」


廻の言葉に軽く眉間に青筋を立てるツヴァイに美琴は思わず笑みをこぼす


「っぷはは!ツヴァイが人に“サディスト”って言われるの、なんか新鮮だね」


「・・・笑いごとじゃねぇぞ美琴。こいつ、俺が一言でも返すたびに、バッテリー残量10%まで落とした奴だ」


「落としてません~!情報操作!情報操作反対~!」


「・・・皆様、当店では騒音も迷惑行為になります。お控えください。」


目の前で言い合いを始めるツヴァイと廻に、アルバは静かに諭すとそのまま傍にあったVIPルームに続く階段に手をかけた


「・・・ですが、廻のお知り合いであるなら、もてなすべきお客様である事に変わりはございません。どうぞ。・・ご案内します。」


「・・・おっと。まさかの“同伴席”か。面倒くせぇ展開になってきたな」


「まぁまぁ、せっかくだし・・・・情報聞けるかもしれないし?」


やれやれとため息をつくツヴァイに美琴がその肩をぽん、と叩けば廻が笑みを浮かべる



「美琴さんノリ良いじゃん~・・じゃあ、あの時の仕返しも──じゃなくて、再会の乾杯でもしよ?」


「・・・なぁ美琴。俺、今のうちに帰っていいか?」


「ダメ。アルファいない間、私の護衛はツヴァイでしょうが」


「・・・チッ。やっぱりこうなるんだよな、いつも」



美琴の言葉にツヴァイはしぶしぶ頷くと、そのままネオンの光が差し込む店内の奥へとさらに足を踏み入れたのだった



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