TEXT34 幕間~死神の盤面・転~
その頃、ホテルブラックマンバの正面玄関には物々しい空気が張り詰めていた。いきなり訪れた黒スーツの集団にホテルのオーナーは冷や汗を流し震えた声で返答を返した
「そ、そんなこといわれましても・・金をもらってる以上は話せるわけ無いじゃあないですか・・」
そうオーナーが返した瞬間、黒スーツの一人がジャケットのホルスターから拳銃を取り出すと威嚇射撃としてホテルの天井に一発発砲する
「ひぃい!!?」
「こっちも〝国の命運〟背負ってここまで足運んでんだ・・・目的の当人出すまでは帰らねぇぞ」
両手で頭を抱えてしゃがみ込むオーナーにヤタガラス新宿支部のオーナーは深いため息をつきタバコに火をつけようとコートの内ポケットからライターを取り出したその瞬間だった
ーー ガウン!!
「っ!?」
手にしていたはずのライターは突然鳴り響いた発砲音とともに粉々に砕け散っていたのだ
「ずいぶん俺好みな出迎え方法してくるじゃねぇか・・・・国のためなら己の命もいとわない・・こんなご時世に神風スピリットを持ってる堅物集団サマが何の用で?」
声のする方向に視線を向ければこちらに向けられたデザートイーグルの銃口とまるで獲物を狙う蛇のような冷たいアイスブルーの瞳と視線があった。
「ーーーー 化け物のご登場か」
一斉に銃口を構える部下たちを静かに諫めてオーナーはゆっくりとエレベーター前にたたずむ二人に近寄るが、女をかばうように目的のデウスロイドが静かに握られたデザートイーグルのトリガーに指をかける
「おっと、ストップだ。それ以上踏み込まれたらアンタの眉間に風穴が空くぜ」
「・・・正式な契約も結びなおしてねぇポンコツが何を偉そうに・・」
「そりゃ人間側の都合だろう?あいにく・・狂犬にはそんな物痛くもかゆくもないんでね。」
口元に笑みを浮かべたまま、しか殺気を抑えることはしない対象にオーナーはめんどくさそうにため息をつくと口を開いた
「・・デウスロイド、ツヴァイ。そして京極美琴。・・俺たちはお前らを保護しに来た」
「保護?・・・・っくく・・保護、ねぇ・・・戦力として雇いたいの間違いだろう?ヤタガラスご一行様。」
ツヴァイの言葉に周囲の空気がさらに張り詰める。どうやら自分たちの素性や考えはこのデウスロイドに筒抜けだったらしい。こりゃ厄介な相手に出くわしたとオーナーはまたため息をついた
「・・・・こちらの情報がバレてるならもう建前は無しだな・・その通り。俺たちは先の大戦後敗戦国となり下がった日本を再び一独立国として立て直さんと動く秘密組織【ヤタガラス】・・お前の言う通り、戦力として迎えに来た」
「・・・・・・」
こちらを静かに見定めるアイスブルーの瞳に臆する事なく、オーナーはさらに話を続ける
「資源、人材、データ、兵器、住居、情報・・・欲しいもんがあるならこちらで全て用意してやる。・・だが・・・こちらの条件を全て飲んでもらうぞ。」
その言葉に、ツヴァイの背後に隠れていた美琴の表情が少し曇るのをオーナーは見逃さなかった。
たしかにこの主従は強い力を持っているのだろう。
しかし、方や組織で暴走事件を起こしてお尋ね者扱いをされているデウスロイド、片や戸籍などもないただの女
傷持ちであるこの二人はヤタガラスが提示した条件を飲まざる終えないのだ
弱みを握るようなやり方には少し抵抗があったがそれも致し方ない。これで二人が首を縦に振ってくれれば事は円満に収まる。
そう思っていたのだが
「ーーー 交渉の場で優位に立てた。そう勘違いしちゃいねぇか?ヤタガラス。」
しかし、その張り詰めた空気と沈黙を破ったのはツヴァイの低く、重たい声だった




