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ANGEL EATER  作者: 平藤夜虎
海市蜃楼編
28/47

TEXT28:ノイズ


『・・別行動、頼めるかな』


そう、美琴に頼まれたツヴァイは一人薄暗い桃源城の廊下を気配を隠しながら進んでいた。途中何人か警備用のデウスロイドや武装した人間は何人か居たが、かつてプロメテウス最強と歌われた己の手にかかれば大したことは無かった。


「・・・チッ。」


ーー 感情無き殺戮兵器。それが本来の自分だったはずが、あの雨の日に美琴と出会ってから自分の中の演算式が少しづつ狂っていった


美琴が笑えば無いはずの心臓が軋む感覚を覚えたし、美琴が泣きそうな顔をすればその苦痛をどうにかして取り除きたいと考えるようになった。


ーーー そして今、自分の演算機能を狂わせた女が()()()()()()()に注意を向けている事がどうしようもなく己を苛立たせていた



あのまま、アルファを救出後にヤタガラスへ引き渡せばよかったはずだ。


あのヘタレな代表様はデウスロイドやマキナロイドに対してどうしようもなくお人よしな訳だし、あの坊やの身の安全や生命活動に困らない環境ならいくらでも用意できたはずなのに



「ーーー 地獄の道を歩くなら、〝側にいるのは俺だけでよかった〟はずだよな?」


誰に問うわけでもなく、己の口から発せられた冷たい声色が闇に溶けて消えていく。自分だけでよかったはずなのにと、そんな弱い感情が小さく己の胸に痛みを与えてくるのだ


あの坊やをどうして自分のそばに置いたのか、本来ならその隣は自分だけでよかったはずではないのか?


そんな疑問ばかりが浮かび、そしてアルファが美琴に触れるたびに演算機能に支障が出るのだ


人間でいう所の感情・・・これが、嫉妬と言うものなのだろうか。静かに愛銃に弾を装填し終えればポケットから煙草を取り出し火をつける。


闇の中に吐き出した紫煙が静かに消えていくの目を細めて見つめればまた静かに暗い廊下をツヴァイは一人歩き出した



「・・・なぁ、俺のマスター。あんまり嫉妬させないでくれよ」



自分の隣に居ない、美琴に向けてツヴァイはぽつりと小さくつぶやいた。


美琴の復讐のために自分ができるすべてを差し出す覚悟はとうにできている。だが、それよりも自分の演算機能に、そして脳内にノイズが走るのだ



ーー 自分以外にその瞳を向けないでほしい、と




「・・・さもなきゃ、俺はうっかりお前に引き金を引いちまうかもしれねぇからさ。」



冷たい眼差しを闇に向けて静かに引き金を引く真似をする。美琴に拾われた際に見た古い映画で恋人を失いたくない女がラストで男に引き金を引く場面があったのを思い出した


もしかしたらこの〝ノイズ〟がさらに強くなったその時はあの映画の女のように自分も引き金を引いてしまうかもしれない



そうなる前に、だから



「ーーーーー 〝理解して(わかって)〟くれよ。愛しいマスター。」
























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