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ANGEL EATER  作者: 平藤夜虎
海市蜃楼編
26/47

TEXT26:その先にある物のため


「・・・ここが敵の本拠地だね」


車から降りた美琴たちは絢爛豪華な大門を潜り抜けてそのまま目的の場所である【桃源城】へと歩みを進めた。深夜だというのにも関わらずネオチャイナタウンは活気にあふれており多くの人々が行きかっていた


ーー その活気と華やかさが非合法でなければさらに良かったのだが


「・・・・」


気にせず目的の桃源城を目指し進むその道すがら目に映るのは〝廃人のような目をした達磨状態のデウスロイドやマキナロイド〟そしてそのパーツをばら売りする闇業者や


「さぁさぁいらっしゃい!本日は目玉商品も入ってるよ!」


〝幼児であった物〟の瓶詰やその〝各パーツ〟を売る承認などがちらほら見えた



「・・・下種共が」


そうぽつりと呟いた美琴の肩にアルファがぽん、と手を置いた



「・・・お前の怒りは至極当然だ。だからこそ、今日ここでその息の根を止める。」


「アルファ・・・」


「心配すんな。俺も腹は決めたんだ・・・・今夜、過去に清算をつける」


やがて、目的地である桃源城がだんだんとその姿を現してきた。


ネオチャイナタウンが誇る一大娯楽施設【桃源城】


先の大戦前は全天候型エンターテインメント施設だったのだがソレを海市蜃楼が買い取り金と快楽、そして恐怖と闇が支配する場所へと姿を変えたのだ


「・・・お出迎えが居るみたいだね」



ふと、その入り口前に一人のチャイナ服を着た男が立っていた。


黒髪を後ろに流し、水の揺らめきのようなグラデーションの唐装を身にまとい穏やかながらも覇気を纏わせている男は小さく笑みを零しうやうやしく礼をした



「お待ちしておりました。・・・天使喰らいご一行様。」


男の言葉にに美琴たちは身構えるが、彼は穏やかな雰囲気を崩さずに会話を続けた


「海市蜃楼の戦闘型デウスロイドのデルタと申します。」


「・・・テメェ」


「久しいねアルファ・・・元気そうで安心した。」


にこりと笑みを浮かべるデルタにアルファは舌打ちをして言葉を続ける


「思ってもいねぇ事を並べるんじゃねぇ。吐き気がする」


「態度は相変わらずか・・・」


「目的はわかってんだろ?あのババアを出せ。ブチ殺してやる」


獰猛な殺気を放ち睨みつけるアルファにデルタは困ったように苦笑いを浮かべるとさらに話をつづけた


「悪いのだけれどそうはいかないんだ。・・・代表からは言伝を預かってる」


「言伝だぁ?」


「・・お前と天使喰らい殿が、()()()()()()()()()()()()()()面会を許してやる。と」


デルタの言葉にアルファの表情が険しくなった。その様子を見て美琴は出発前にアルファから聞いた事を思い出す。


桃源城地下にある闘技場施設。同じデウスロイド同士や人間、そして非人道的に作られた化け物を戦わせる掃き溜めのような場所


「・・・・ふざけた条件だしてくるな。お前たちの代表ってのは」


「デウスロイドは創造主には逆らえませんので」


美琴の言葉に笑顔でそう言葉を返すデルタを見てアルファは自分の拳を掌にパン!!と叩きつけるとにやりと笑みを浮かべた


「いいぜ。受けてやるよ」


「っ!?あ、アルファ!?」


「但し、俺もてめぇらの命乞いなんざ一切聞かねぇ・・・それでいいな?」


アルファの言葉に先ほどまで穏やかだったデルタの目つきが鋭くなる


「・・・本気で我々に勝つつもりかい?」


「あァ。・・・・当然だろうが。今夜、海市蜃楼は俺たちが叩き潰す。」


「・・・・それが世界に影響を及ぼしてもかい?」


アルファの言葉にデルタが言葉を続ける


「人間の歴史というのは非人道的な行いをして発展を続けてきたようなもの・・・確かに褒められたものじゃあないが。海市蜃楼の力で潤った企業や食べるのに困らなくなった人間も居る。・・海市蜃楼、ヴィクター、そしてプロメテウス・・・この三社が存在することで世界の均衡は保たれてるというのに、ソレを壊して何になるんだい?・・・新たな火種が生まれるかもしれない。海市蜃楼が無くなることで多くの恨みが・・お前たちに向けられるのかもしれないのだよ?」


首を傾げるデルタの言葉に今度は美琴が前に出る。







「ーーーー ()()()()()()()()。」



「・・ははっ」


「・・ま、そう言うよな。お前なら」


まっすぐデルタを睨みつける美琴にアルファ、そしてツヴァイは呆れたように・・しかしどこか安心したように笑みを浮かべた




「随分と身勝手な事を言うのだね天使喰らい殿。」


「指導する側にはいはい従うだけなんてただの機械だろうが。確かに海市蜃楼が無くなって困る人間は出てくるだろうさ・・けどな」


そう言いかけて、美琴は腰に携えた黒涙を引き抜き空にかざす




「それでも、自分で考えて行動して、()()()()()()()()()()()()()()()()の方が!!海市蜃楼(お前ら)より何倍も良い物を作り出すんだよ!!!」


美琴の覚悟が籠った叫びが木霊する。その様子にツヴァイ、そしてアルファは互いに目を合わせて笑みを浮かべる


「トーナメント、受けてやる。・・・丹韻(あのババア)に伝えておけ。・・・首を洗って待ってろってな。」




・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・



同時刻。プロメテウス本社ビル屋上。



赤い満月が怪しくかがやくその下に、ひとつの影があった。


白いミディアムウルフの髪は夜風に揺れ。その人物が身にまとう白いタキシードにはどころどころ赤いしみがついている。そしてその腕にはウエディングドレスを着た〝美琴によく似た〟ぬいぐるみ


鉄床に無造作に投げ捨てられた小さなレコーダーからはオペラ、トゥーランドットの名曲【Nessun dorma】が流れていた



「・・・いい月だね。僕と君が再び再開するには、とても良い」


歪み、濁ったローズレットの瞳が狂気的に輝けばその背から機械じみた羽が展開される



「さぁ、行こう。・・・僕の花嫁に会いに」




あたりに鳴り響く警報音を背に、その影は赤い月を背に飛び去って行った。




『緊急コード発令!!場所は白の部屋!!!』


『急いでエイブラハムCEOに連絡を!!!』












『ーーー   アインツが勝手に外に出た!!!!!』







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