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ANGEL EATER  作者: 平藤夜虎
海市蜃楼編
25/47

TEXT25:緑の目の獣

ーー 弱かったはずだ


戦場に赴き、ただ無残に壊れていく〝ゴミ〟に情けをかけるだけの弱者だったはずが


我ら兄弟に嬲られるだけの存在だったはずが


人間どもの欲のはけ口にされおぞましい目にあい続けた無様な存在が



「今度はてめぇが一方的にぶちのめされる番だぜシグマ・・・覚悟の時間も与えてやらねぇから、そこ動くんじゃねぇぞ。」



ーー ありえない。


お前の瞳は濁り切っていたはずだ。怯えと絶望に濁り切っていたはずだ



そんな目をお前が




()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「図に乗るなよ雑魚の分際で!!!」



アルファの今まで見たこともないような覇気に圧倒されたのか、シグマは怒りの声を上げると両腕に内蔵していたサブマシンガンを展開して美琴とアルファに向けて放つ。


ーーー しかし、もう結果は見えている



()()()()()()()


「っ!?」


鈍い音を立ててアルファの両腕からドゥルガーとカーリーが外され、それは美琴を守る盾のように前に立ちふさがった。


その一瞬の隙をつきアルファは腰に装備していたホルスターから二振りのダガーナイフを抜き放ち一気にシグマと距離を詰めたのである



「てめぇらよく言ってたよなぁ・・・」


「いつの、間に!?」


獰猛な肉食獣はその口元に凶暴な笑みを浮かべ、構えたナイフ(その牙)をシグマの喉元に向むけ吠える


()()()()()()()()()()()、もう敗北は決まってるってなァ!!!」


その剛腕から放たれた鋭い牙を避けきる事など不可能に近い。まして、シグマのデータには【海市蜃楼(あの頃)のアルファ】のまま記録されていたのだ。


傲り。自分が今まで一方的に痛めつけていた存在に自分が負けるなどけしてあり得ない。そんな小さな傲りが命取りになったのだ


たしかにアルファは海市蜃楼でも強者に入る。しかし、彼の中にある【己は一生このままなのだ】と言う呪縛が彼の本来の力を封じていたのだ



ーー そう。あの夜までは



あの日、自分よりも華奢な女に命を救われ。


そしてその女が()()()()()()()()()()()()()と言う無謀な事を成し遂げようと躍起になるその姿に



ーー 自分の振るうべき力の場所が、そして自分が存在する意味をやっと理解したのだ




檻など壊せばいい。鎖も引きちぎればいい


それを、世界が否定しようとも〝この女〟が笑って許すのならば




「神結システム起動。CHORD最大出力。」





ーー  俺は喜んで世界を終末させる獣になってやる。




「ーーー  アルファ!!!!!」



美琴の声が鼓膜に伝わる。ナイフを握る腕が高熱をおび、刃先が灼熱色に染まる



「あばよ・・・クソ兄弟ィ!!!」



ーー ドン!!!


貫いた怒りの炎熱を帯びたその一撃はシグマの体を貫き粉々に吹き飛ばした。最後の断末魔も与えない、今までの抱え込んできた怒りの全てを込めた懇親の一撃により、決着はついたのだ



「・・・他の兄弟機も、あのクソババアもすぐに地獄に送ってやるよ。」


夜風が頬を掠めれば、アルファはそう呟き、後ろを振り返る


「お疲れ。アルファ」


過去の自分とはこの戦いで決着をつける。


ーーー もう今の自分には檻など必要ないのだから



「お疲れじゃねぇ。もっと褒めろ」


「大型犬かあんたは!!・・いや、猛獣?」


首を傾げる美琴の頭を少し乱暴に撫でればアルファはそのままトラックの荷台から美琴を抱えてツヴァイが運転する車に飛び乗った。


「少しはマシな顔つきになったか?坊や」


「うるせぇぞ女王サマ。黙って運転しやがれ」


悪態をつくアルファにツヴァイはやれやれとわざとらしく肩をすくめるがすぐに真面目な顔つきになり美琴に声をかける


「・・・そろそろ敵の根城につくぜ。覚悟は・・まぁ、できてるか」


「当然。」


眼下に現れたネオ横浜のチャイナタウンの夜景。に美琴は鋭い目つきのまま、そう短くつぶやいた






















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