TEXT23:獣と鬼と
深夜の首都高、横浜へ向かうその道中で海市蜃楼側より差し向けられた二対のデウスロイド、シグマとタウに美琴とアルファはすぐに戦闘の構えを取った
「・・・で、アルファ。この二対の情報とかあるわけ」
「・・シグマに関しちゃ〝暗器と太極拳〟、タウは〝少林拳とカポエイラ〟の使い手だ。下手に踏み込むと痛い目みるぞ」
「ふーん・・・・」
アルファの言葉に美琴はそう言葉を返すと黒涙を構えて二人に殺気を向ける。確かにこの二体から放たれる殺気はまさしく達人のソレ。何も考えずに踏み込めばこちらが負けるのは目に見えている
ーーー だが、それがどうした
「会話ができて動けるのなら・・・・壊せるって事でしょ?」
「!・・・美琴、お前・・・」
抜き放たれた黒涙の刃先が常夜灯と車のヘッドライトに照らされて鈍く光る。夜風になびく青灰の髪が、そして二対を射抜くように睨む瞳はもはや〝鬼〟のソレへと変化していた
「アルファの兄弟機だろうが、関係ない。」
地を蹴り、黒涙を構えたまま美琴は一気にタウへ距離を詰めるとその復讐に燃える刃を一気に振り上げた
「ーーー !」
しかしソレを紙一重で避けるとその反動を利用してタウはカポエイラを美琴に食らわせようとするが
ーーー ギィイン!!
そのタウの素早くも鋭い一撃をアルファの両腕が食い止めた
「ほぉ・・中々やるな」
楽しそうに笑うシグマだったがその隙すら与えず美琴がその首元に向けて高速の突きを繰り出す
「ーーーー 三段突き。」
夜風を切り裂かんばかりの鋭い三段の突きは的確にシグマの急所、〝脳と連結しているであろうデウスロイドのCPU部分〟を突き崩さんとその牙を向けるが
「俺が何も仕込んで居ないはずがなかろうよ!!」
シグマの両腕がガシャン!と音を立てて開いたかと思えばそこから鋭利な刃物が飛び出し美琴に襲い掛かった。
「ッ!!」
寸での所でその飛び出してきた飛び道具、鏢を避けたがその一本が美琴の額を掠め〝赤色〟があたりに飛び散った
「ーーーーー 、」
どろり、と美琴の頬を赤色が染めてゆく。だが、美琴はそれでも痛みに蹲る様子を見せない
「・・・・ あ、あぁ・・・あ、」
生きている証し、己が内に燃え続ける復讐の炎の動力源、
ただの女ならば悲鳴をあげて逃げ惑うだろう。だが、〝この女〟は違う
「ーーー っは、あははは!!!」
その赤色が零れた瞬間。美琴の中に眠る復讐の悪鬼が目覚めるのだ
「・・いいよ。シグマ、タウ。」
静かに口元に邪悪な笑みを浮かべて黒涙を構えてシグマとタウを見据え愛刀を構える
「お前ら、ここで斬り伏せる。」
そしてその美琴の言葉が〝合図のように〟
「----- てめぇらァあ゛ああああああ!!!!!!」
〝獣の咆哮〟が闇夜に木霊した。




