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ANGEL EATER  作者: 平藤夜虎
海市蜃楼編
21/47

TEXT21:外道の住む城

※注意※


中々の鬱展開やグロ表現があります。読んでいて辛く感じる方は読むのを中断してください

海市蜃楼(ミラージュ)


先の大戦の勝利国の一つ、ネオチャイナに設立された巨大企業であり女帝と恐れられる蜃丹韻(シェン・ダオユン)の指示のもと多くのデウスロイドやマキナロイドが作られただけではなく、軍事産業にも手を出しはじめ


いつしか現在のネオチャイナ政府も海市蜃楼に逆らえない状態になっていた



ーーー しかし、光が強い場所に影ができるようにその発展の裏には身の毛もよだつような非人道的な行為が行われていたのだ


ある政治家が富豪の晩餐会に誘われた際に最後のデザートとして〝新生児の固められたゼリー〟が出てきた。なんて噂話や


その富豪の晩餐会に〝達磨状態にされたデウスロイドとマキナロイド〟が運び込まれ〝聞くのも見るのもおぞましい狂気の遊戯〟が毎夜行われていた


そんな蓋をしてしまいたくなるような〝黒い真実〟が跋扈するようになっていたのだ



「・・・そんな場所で俺は製造された。」


霧島たちを見送った後、ヤタガラス新宿支部オーナーへの報告をツヴァイに任せてすぐに美琴はアルファに海市蜃楼の内部状況を尋ねてみたのだ。当初アルファは少し渋ったものの、重い口を開きぽつりぽつりと語りだした


「・・・俺の他にも兄弟機が居てな。どいつもこいつも〝壊れた屑〟どもだった」


海市蜃楼にて作られた戦闘用に特化した兵器型デウスロイドは5体。その中で二番目に作られたアルファは兵器として申し分ない腕前を発揮していた


・・・ もちろん、あの大戦の前線にも兄弟機とともに駆り出された


「俺ら兵器を人間扱いする奴なんて居やしなかったさ。・・・ただ壊れるまで弄び使い使い潰す。そんな日々だった」


しかし、戦争が終わっても地獄が終わることはなかった。


ーーー むしろ、本当の地獄の始まりだったのだ



大戦後に横浜に作られた海市蜃楼の所有娯楽ビル【桃源城(とうげんじょう)


その地下10階に作られた地下闘技場にアルファやその兄弟機たちは送られたのである


「玄塔にぶち込まれる前・・俺はそこで〝商品〟として扱われてた。・・酒に溺れた観客どもの前で、同じデウスロイドや〝怪物〟どもと殺しあわされて・・生き残る度に〝娯楽用兵器〟とし値がついた」


飛び交う嘲笑と罵声。そして血しぶきと【死にたくない】と叫び絶命する命の慟哭。その映像は、声はいまでも鮮明にアルファの耳に残っていた


「あの頃の俺はただの獣同然だったよ・・・名前もなく、番号と血だけで呼ばれてな。・・利益のため、自分の欲を満たすためなら命なんざ紙屑同然に扱う。・・・苦しませ、踏みにじり、壊してその様子を見て笑う連中だ・・あそこの観客も、そして海市蜃楼の連中も・・全部同じ腐った根から生えてやがるんだ」


「そうだね・・・それに私の予想だけど・・〝性的欲求のはけ口〟にもされたんでしょ?。女だろうと・・男だろうと」


その言葉にアルファの肩がピクリと揺れて深緑色の瞳がギロリと鋭く光る。しかしこちらを静かに見つめてくる美琴の様子に観念したかのように深いため息をつくと拳を握り視線を伏せた


「・・・チッ。そうだよ。図体と体が〝モテそう〟ってだけで〝ろくでもねぇ目に何度遭った〟と思ってやがる」


唇を噛み苦く笑いながらアルファはさらに言葉をつづけた


「女にモテるなら〝まだマシ〟だ。・・だが現実ってのは違う。・・・桃源城でも玄塔でも、奴らの目に映る俺は〝戦闘兵器と玩具〟の両方だった。」


ーーーー 反吐が出るとはこの事なのだろう


もしも自分がアルファの立場だったらきっと発狂していたと美琴はそう感じた。


「・・・蜃丹韻、あのババアも同罪だ。・・・毎晩毎晩デウスロイド相手に実験と称して〝吐き気がするような〟事ばかりしていやがった・・・そして・・・」


「アルファの番になり今までため込んでいた怒りが爆発。・・・あの女に怪我でもさせて玄塔にぶち込まれた、と」


美琴の言葉にアルファは頷くと荒い息を吐きその肩をがしっと掴む。しかしその瞳には怒りよりも縋るような色がにじんでいた


「・・けどな、お前が理解してくれただけでいい。お前になら何言われても平気だ。・・・美琴は俺を嗤わねぇし、踏みにじらないからな」


そのまま深く抱き寄せ、その首筋に顔をうずめアルファはつぶやく


「・・俺がトラウマ持ちでも、汚れていても・・それでもお前は俺を傍に置いてくれるのか?」



ーーー 答えなど決まっている。


あの業火の日に心の奥にまだ燻り続けるこの復讐の炎があるのなら、どれだけ汚れようとあの忌まわしい敵の首を必ず取ると決めたのだ


腸を引きずり出してその恐怖に引きつった顔にこの刃を突き立てられるなら


・・目の前にいるこの獣はずっと耐え続けたのだ。ずっと


その恨みの炎を身に宿してずっと


ならば決まっている



「ーーー 当然の事聞かないで」


そう返して、かさついた唇に自分の物を誓いの証というように重ねる。一瞬驚いたように開かれた深い緑の瞳に美琴は笑みを浮かべた




「ぶち壊しに行くよ、アルファ。・・・アンタの今までの恨みも怒りもすべて燃やしたまま」


「美琴・・・お前・・・」




「ーーーーーー 海市蜃楼(くず共)をぶちのめす。」























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