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出生

死の圧みたいなもので押しつぶされそうだ。

ぎゅうっと目頭が熱くなって、視界がぼやけた。

あ〜だめ、泣いちゃだめ。すぐ泣くんだからってあの人にからかわれちゃう。

咄嗟に上を見上げてこぼれそうな涙をこらえた。質素な電球がさっきの地鳴りでぐらんぐらん揺れている。

ていうか東京に来て、ううん、来る前から死にたいって思うこと何度も何度もあった。

うちは放任主義の家で片親なことで周りからどう見られてたのかも知っている。働きっぱなしの母親はどんな仕事をしているかもしれない。人に公にして言えるような仕事じゃないのは幼心でもわかっていた。

家事まで手が回らず荒れ放題な家には家庭訪問とかもなく教師も寄り付かなかった。

肩身の狭い学生生活。持ち物や姿からか、はたまた狭い地域のせいでくるくるよく回る噂話のせいかろくに友達もいなかった。

ブランド物を持ち始め、楽しそうにテレビの話、スマホでSNSの話、流行りのコスメ、新しくできたカフェ、

私には全くと言って何もなかった。

自分で稼げるようになっても生活費や学費で精いっぱいだし、勉強する時間も取れなくて頭は悪いし、母親は働きすぎで、気づいた時には遅かった。そして私が天涯孤独になるのも想像していたより幾分か早かった。

何とか高校を卒業した私はなけなしのお金で上京した。それで、、手っ取り早く夜の仕事についたのだ。そしたら紹介してもらった保証会社を通して家も借りれたし、初めてブランド物を身につけることだってできた。でもそこに至るまでは大層辛かった。しんどかった。

いっぱい騙されたし、裏切られたし、簡単な話ってほんんとない。

私、アホだったから優しくされたら好きになって、でも捨てられて、愛ってまじむずい。まじ死にたかった。

何なら一回死にかけてる。上京したてで始めたできた女の子の友だち。仲良くしてくれてて、メイクとかドレス買うとことか、おすすめのバーとかなんでも教えてくれて誘ってくれて、歌舞伎町のこと何でも知って、ちょーーかわいい友達が居たんだけど、、ゴタゴタしてなんか刺された。マジで。

泥酔して救急車で搬送されてまじ申し訳ない恥ずかしいし、もう乗りませんっ!てことも何度かあるけど、

こんときはまじ救急車救急車お願い早く来て!ってすんごい思ったし、痛くてだんだん冷たくなっていって、意識も朦朧としてて、辛かった学生生活の時ですら頼らなかった神様にまでお願いしてた。

そのおかげなのか、全然ピンピンしてるけど今。生命力強すぎてな。


なんかその時に思ったんだ。

私が死んでも悲しんでくれる人ってそんなにいないし、別にその時死んでもよかったんじゃん?って。



ごっ、ごっ、ごっ

どっ、どっ、どっ


地鳴りが続く


人生ってまじエクストラハードモードなの。全然やってらんない


私はそうひとりごちながら、ショッパーにぶら下げていたキックボクシング用のグローブ

を装着した。

私今ちょーダサい。笑。


くるんと呑気に栗色ヘアーが視界の片隅で揺れた。

無事に生きて帰れたら深山さんに綺麗に髪巻き直してもらわないと。上がる気も上がらない

まあ死ぬ時も棺の中に入れる私のヘアセットはバッチリ決めてもらうけど!!



こーきくんの香水で結界を大きめに構築する。もうこれは手慣れたもんだ。こーきくんここまで感謝したことない。

そしてもしこれを破られる時は覚悟を決めて戦うしかない。


ぎゅっとグローブの中で手を握りしめた。



魑魅魍魎。

土埃と共に動物?の枠に収まらない獣たちが向こうのほうから降りてくる。



どっ、どっ、どっ、ど



ああ、拝啓私の白馬の王子様

今までなんで来てくれなかったのって張り倒したいところだけど、今ならぜーーんぶ許してあげる。



パンッパリン


うすはりのガラスのコップみたいな結界が儚く砕ける音がして、私は覚悟を気めった。


「パーーーーーーーーンチ!!」


そこからはがむしゃらに拳を振るった。

昨日のスライムみたいなやつは水色の他に緑も赤のもいる。ツノが生えたウサギ、膝くらいの高さの木?もわさわさ頭を揺らして葉っぱを落としながらこちらに向かってくる。

昨日の感じから割と簡単に倒せる?とは思っていた通り、1、2発ぶん殴ればポコポコ消えていくんだけどなにせ数が多い、、


覚悟を決めただけあって、割と奮闘した方だと思うけど、攻撃という名の体当たりを全部避けれるわけなくて、しかも角ウサギが痛いし、殴り続けるのもそろそろ限界、、

何か手立てはと思ってとりあえず結界も砕けたことだし、、逃げるが勝ち!!


敵に背後を見せるなんて!と思うが逃亡した。部屋のカウンターの中に扉が開いているのが見えて、階段があるのに気がついたのだ。


「もぉーーー痛い痛い痛いいいい」


扉を何も入ってこないように素早く閉めて階段を駆け上がった。

何部屋かあるみたいだが扉が開いていた部屋に駆け込み、香水を入り口に撒き散らかす。

さっきからピコンピコン鳴り響いていた機械音声。頼む頼む、私に頼れるものはこれだけ!!音声さん!!


『緑スライム を倒しました。経験値12取得しました。

赤スライム を 倒しました

マンドラゴラを倒しました。

レベルが1上がります

一角ウサギ を 倒しました

青スライム を倒しました

レベルが4になりました』


まとめてください…!!!

どんっ、どんっ


はっと我に返って目を音のする方に目を向けると、扉に体当たりが繰り返されているのか震えていた。

しかし結界は壊れない。あ、レベルアップしたから結界のレベルも上がっているのかな。ひとまずホッと息を吐いた、暇もなかった。

体当たりの音がなくなったのもつかの間、ががんっと扉が文字通り吹っ飛んだ。私が香水を纏っているお陰か破片などがはじき返されたが、さすがにそんなのもう、もう、死んじゃう、、!!


ギュウッと目をつぶった私に降りかかったのはモンスターではなく


「ッおい!大丈夫か!!?」



街に待ち焦がれた白馬の王子様だった。薄れゆく視界の中に見えた王子様は白馬なんて似合わない、どっちかっていうと黒馬だし、てかなんならライオンとかに乗ってそうな風貌…

そこで私の意識は途絶えた。


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