1-2.『0』は次へ進む準備を始めた。
背景、母さん、元気ですか。私は結構元気になりました。
元々あったけだるさは消えて、今はエネルギッシュに活動できています。
久々にまともな車も運転できて、かなりいい感じです。
2月1日00:21
「イレギュラー...」
今目の前に立っている人を除けば、やばいです。本物の宇宙人です。やっぱりやばいかもしれません。
なんで飛び込んじゃったんだろう。早く帰りたいです。
「...イレギュラーって、悲しいことを言いますね」
「今、この札幌に存在できるのは、タロットカードの力を持つものとそれに守られたものだけだ。お前はどちらでもない。お前は存在自体がイレギュラーすぎる」
「何言ってるかわからないんですけど」
タロットカード?力?何言ってるんだこいつ
「タロットカードを...持っていない?」
お嬢さんが何か言ってます。あの服どうなってるんでしょうか。もしかしてプ〇キュアにでもあこがれている人なのでしょうか。
「世界観がバラバラですね。ウ〇トラマンなのかプリ〇ュアなのかはっきりさせてほしいんですけど」
「...何を言っている」
おっと、汽車姿の変な人がきょとん顔をしています。困惑させてしまったでしょうか。
「まあまあ、とりあえず教えてくれませんか。外がどんなことになっているのかぁ!?」
あっぶない!汽車の宇宙人さんが私のことぶん殴ってきました!やばいです。寸でのところで躱せましたけどやばいです。殴った衝撃でコンクリートの床がへこんでます。
「お前、ふざけてんだろ」
「違いますよ。私は現状が知りたいだけです」
「それがふざけてるって言ってるんだ。なんでお前に教えないといけない」
...確かに、冷静に考えてみると今私はこの人たちが話してるところに車で突っ込んできて、私は何もする気はありませんって言われても、誰も信じられません...ね...ってあれ?
「お嬢さんたち逃げてますけど」
「はぁ?何言って、て、クソ!」
お兄さん、不憫ですね。ナンパでもしてたんでしょうか。なんか悪いことしちゃったかな。
「おい、待て!」
お兄さん、駅中に追いかけて行っちゃいました...どうしましょ、殺されかけましたし...でも
「あのお嬢さんたちには、まだ今どうなっているのか聞けてないんですよねぇ...よし!」
追いかけますか!
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2月1日00:25札幌駅5番のりば
「あいつ何なの!あいつのおかげで逃げられたけど!」
「よくわからないけど、スーツの人はあの人が異常だって言ってた。何が異常なの?」
「たぶん、『世界』の現実改変の影響を受けてないからだと思う。『世界』のタロットカードは世界全体を変える能力を持っていて、耐えられるのは大アルカナを持った人間だけだから。前の戦争でもそうだったしって!そんなことより逃げるよ!」
とりあえず駅のホームについたけど、電車が一つも止まっていない。一つでも止まっていれば何とかなったかもしれないけど...
「徒歩で逃げるしかない...」
「...今思ったんだけど、頭のおかしい人が車で突っ込んできた場所から逃げればよかったんじゃ。開いてたし」
...あっ
「もう遅いぞ」
エレベーターからさっきの汽車の男が出てくる...なんでエレベーター?
「...お前らの力では、俺から逃げられない。大人しく」「ちょっと待ってくださいよー」
と思ったら、階段から車で突っ込んできた男が登ってきた。めんどくさいから浮浪者風の男ってことにしとこう。
「何が起きているのか教えてくださいってばー」
「あー!!しつこいなお前本当に!だからタロットカードで戦争しているんだって!」
「いや、何言ってんのかわからないんですって、『世界』で事象を書き換える?『全部集めちゃ世界を崩壊させられる?』知らないって、なんもわからんって。読者に優しくないなぁ。もっとわかりやすく、一から説明してください」
「こいつ、ほんとしつこい...」
...何が起きているんだろうか。今まで自分たちの命の危機だったはずなのに、なにかおかしい空気になっている。
「ああ!お嬢さん!」
やばい、矛先がこっちに向いた。
「よかった。この人『アルカナ』とか『力』とかわけわからんことしか言わないんですよ。あの、簡易的でいいので、今の札幌の状況を教えてください」
「えっと...世界の危機...だね」
「あぁ~!なるほど!わかりやすい!」
何この人...って!やばい!汽車の男が浮浪者の男の後ろで殴ろうとしてる!
「くらえ!」「いやぁ考えたんですけどっ!」
浮浪者の男が拳をスッとかわし、男の後ろに回り込む。
「自己紹介しません?ほら、名前知らないって不便ですし、ああ!私は柏崎美並っていいます。ほら、あなた...宇宙人さんの名前は?」
「俺は人間だ。俺の名前は、パワーエッジ」
「ああー!はいはい、パワーエッジさんね。そして人間...はいはい!まあいいと思いますよ。近頃はほら、自分を女と言ってる男がいたり、してますしね!多様性ですね!自分を人間という宇宙人さんがいてもいいと思いますはい...そこのグローブしてるお嬢さんは?」
「...菊理、海霊菊理」
「あーはいはい、海霊さんねぇ、はいはい覚えました。じゃあ...えっともう一人の魔法少女の方は」
「私ですか!?えっと...めいです。」
「ああ!はいはいめいさんね。ほら!とりあえず名前を教えあえば冷静になれる!名前って敵には教えないだろ?知ってたとしても呼びもしない。嫌いな奴の名前呼ぶ?呼ばないよね?
つまり今私たちが名前で呼び合えば一時的に仲良しになれるんだ。一時的だけど、今だけ
海霊さん、とりあえず、今世界が何の原因で崩壊しそうか教えてくれる?」
「...タロットカードを使っての戦争が始まって、今は22枚の」「ああ違う違う!」
この男むかつくな。
「タロットカードを使っての戦争ってなに!?タロットカードって占いで使うもので、戦う道具じゃない!入ってこないよ!国語ドリルやりなよ?私はやってる。小学生のドリルからね。めいさん、わかりやすく教えてくれる」
...全員が立ち尽くしている。こんなおかしい状況に乗ってくる人なんて
「えっと」
めいちゃん!?
「22人のスーパーパワーを持っている人がいて...」「ふむふむ」
「そのうちの一人の能力のせいでたぶんこの世界から人が消えていて」「ほおほお」
「今、私達二人がやられたら、完全に世界が崩壊する...的な感じです」「あーなるほどね!」
「だから、こんな変な人が君たちを追ってるんだ!なるほどなるほど...って人!?宇宙人じゃないの!?」
「だからそういっているだろう...」
なんか不憫に思えてきたな。スーツの...名前何だっけ。
「じゃあ君たちを守らないと、俺が明日目が覚めなくなるかもしれないってことか」
「いや!今仕留め...ってああ?」
汽車の男がポケットから携帯を取り出す。すこし画面を見たかと思うと舌打ちをして、こちらに向き直った。
「作戦変更だ。お前も気絶させて連れ出す。」
「えー...あの私何の力も持ってない一般人なんですけど」
「ああ、だから6割殺しくらいで勘弁してやる」
「いや~やめてほしいなぁ...」
「そう思ったが、ほんとにむかついたから7割くらい殺してやる!」
汽車の男が柏崎と名乗った男に突っ込んでいく。
彼はそれをひらりとビビりながらかわし、ジャンプをしてから汽車の男の顔面にけりを加え、こちらに移動した。
「ぐぁあ?!」
汽車の男はよろめき、一瞬動けなくなる。
「お嬢さん...ああ、ごめんごめん海霊さん、銃とかもってない?モデルガンでもいいんだけど?」
「銃なんて持ってるわけないじゃん!何言ってんの?」
「ああ、いやごめんごめん。持ってるかなって!」「おらぁ!!」「思ってさ!」
男が一瞬で柏崎の前に移動したかと思うと、音速の速度で拳を出す。だが、柏崎はそれも最低限の動きで躱す。
「あいつなんなの?」
汽車の男は柏崎をイレギュラーと呼んでいた。何が起きているかわからない。だが、こいつの動き、完全に一般人ではない。どこかの傭兵か?
「大体さ、世界なんてなんで滅ぼそうと思ってるわけ?労力の無駄だよ。こんなの」
「滅ぼすのではない!新たな世界を作り出すのだ!」
「新たな世界ぃ?農業やってから言って来いよ。大変だよ?新たな世界。まず害獣駆除できるようになってからやろうぜ!」
あいつなんなんだろう。タロットカードの力を使っている人間の動きについていってる。何が起きてるんだろうか。
...ってまさか
「あんたタロットカード持ってないのー?」
「ああ私?持ってない...と思ったけどそいえばもらってたな。これのことー?」
柏崎はポケットから私たちの同じ柄のタロットカードを取り出す。どうやら持っているらしい。だからか。
「それをー!前に投げてみてー!そしたら能力が発動するはずー!」
「前にー?えっとこうか?」
柏崎は姿勢を正してから、カードを前に投げる。カードは見る見るうちに大きくなり、彼の体をすっぽり入るくらいまで大きくなった。だが、タロットカードは動くことなく、ずっとそこに置かれていた。
「おおー!バルーンみたいな感じか。マジックショーで使えそうだな。これ以外できないけど」
「よそ見をするな!」
汽車の男が横から彼を襲おうとした。彼が汽車の男に視線を合わせた。その時だった。
動くことのなかったカードが彼の視線に反応し、彼のむいている方向、つまり、汽車の男の前に移動した。汽車の男はそのままタロットカードをすり抜けようとしたが、途中でぶつかってしまう。
だが、奇妙なのはこの後だった。汽車の男はけがをした様子もなく、さっきまで勢いよく走っていたのに、カードに触れた瞬間一瞬でピタッと止まってしまった。
「...!?」
汽車の男は急いで、カードから体を引きはがし、後ろに下がる。
「おおすっげ!視点の真ん中にずっとある!気持ち悪!?でかくしすぎたFPSのポインターみたい!」
そうやって騒ぐ柏崎をよそに、汽車の男は何が起きているのか理解できていないようだった。
「俺のこぶし...力が抜けて...なにがおきた?」
力が抜けた?
「菊理ちゃん」
めいちゃんが小声で話しかける。
「...そうだね。めいちゃんそろそろ逃げよう」
「いや、多分だけど私達、今日の夜は逃げられないと思う。今は月がよく見えている状態だし、あの汽車の人、多分特定の条件下で瞬間移動できる能力を持っているんだと思う。じゃなきゃ、捕捉してから捕まえに来る時間が早すぎる」
「...ならどうする?あの人に加勢する?」
「...それよりいい方法がある。あの人、銃を欲しがっていたでしょ?確か菊理ちゃんの能力で、作れたよね?それを一瞬だけ貸すの」
「ええ?でも一瞬だけでも私の『本質』を預けることになるんだよ!?危険だよ」
「...でも、今死ぬよりはいい」
「...うぅ...」
私、どうすれば