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柏崎美波の英雄譚  作者: 湊
3/5

1-1.『魔術師』は原初の『1』と出会うだろう。

1月31日23:58:12 さっぽろ駅ロビー


「...やっばい捕捉されてるわ」


「ナンパ目当ての人?菊理ちゃんすっごくかわいいもんね」


ベンチから入口の方へと、めいちゃんは目線を向ける。夜遅くにもかかわらず、人がまだポツポツと駅の中を歩いていた。


「違うよ、この時間はもうナンパの人はほかの人と食事行ってからホテルいって帰ってる時間帯だよ。そうじゃなくて、たぶんこっち」


私は周りの安全を確かめてから、自分が持っている魔術師のカードをカードホルダーから取り出した。


「となると、運命の輪かな?」


「いや、ならこのタイミングで来るのはおかしい。多分『月』の方だね。今日は月がよく見える日だし、多分あの窓から見られた」


私は、さっぽろ駅の名物にもなっている。時計が張り付いているガラス張りの窓を指さした。


「でも、人がいるから安心だね。」


「そうとも限らないよ。今まで月のカードを使えるってのに、一回も捕捉してこなかった。今日は何かが...」


2月1日24:00:00


「ひっ!?」


「どうしたのめいちゃん!?何か感じた!?」


「何か、大きな力が発動した...まさか!?『世界』のカード!?何か変わっているはず!周りを確認して!」


さっぽろ駅のロビーを確認する...!?人がいない。どこにも、なぞのオブジェにも、ベンチにも、さっきまでいた人たちがいなくなっている。


「やばい...めいちゃん!早く外に...ってクソ!」


自動ドアが反応しない。まさか捕捉したのは私たちを閉じ込めるためか。


「めいちゃん!こっち!」


「やめといたほうがいいと思うぜ、今外めちゃくちゃ熱いから」


「「!?」」


私とめいちゃんは声をした方に一瞬で向いた。そこには、かなり体格のでかい、スーツを着た男が立っていた。昔、ステロイドをやっている外国人の警官の写真で見たのとそっくりだ。


「お前たちが、『魔術師』と『女教皇』だな、散々逃げてくれちゃって...少しカードを貸してくれるだけでいいのに」


「世界を丸ごと滅ぼそうって連中に、私達の『本質』を渡すわけないでしょ」


「んま、そうなるわな。だがよ、今よりはいいだろ。俺たち能力者は生き残れるんだぜ?」


...私はカードホルダーに少しずつ手を伸ばす。


今私たちが立っている位置は、正直都合が悪い。壁際に追い込まれているし、逃げ場がない。だけど、一撃でも入れられたら。


「大アルカナの本質を持っている奴は大体が『才人』であり、人に虐げられた人間の集まりだ。

理解をしようとしないやつらなんか全員殺してしまおうぜ。なあお嬢さん」


「悪いけど、私はまだスタバのフラペチーノが飲みたい...の!」


「来るか」


カードホルダーから魔術師のカードを取り出し、私の前に投げた。小さかったカードは見る見るうちに人を飲み込めるくらいの大きさに変化し、私の方へと向かってきて、すり抜けた。


カードがすり抜けた瞬間、私の服に、金属のような部品がくっつき、手には、赤い重作業用の手袋が装着されていた。


「あんたをぶっ倒して、さっさと逃げることにするわ」


「あー...やめとけよ、現実では魔法は創作物ほど万能じゃないんだ。この現実では魔法は『不可能』の象徴だ」


「しらないわ...よ!」


私は、スーツ姿の男の懐に回り込んで、一発ボディブローを叩き込んだ。


「おー結構いたいな。それだけだが」


「...なっ!?」


男は軽々しく拳を受け止めたかと思うと、私の腕をつかんで逃げられないようにする。


「まあ、始発点だしな。こんなもん...かっ!」


男に入口の方へと投げられ、私はかなりのスピードで壁にたたきつけられる。


「ぐはっ!?」


「菊理ちゃん!」


くそ...やばい、死ぬ。いや思考を止めるな。入り口はガラス。今私はそこに突っ込んだ。強化ガラスでもひびくらい入るはずだ。なのになんで傷が入らない。


「太陽の結界、炎に包まれた場所は、他の場所とは別世界として定義される。聞いたことねぇか?」


「...クソ!」


あいつら、たぶん、ほとんどのタロットカードを所持しているんだ。最後に私たちをって算段か!?


「大アルカナの力を持ってるやつらは、ほとんどが俺たちの意向に賛成してくれたんだ。あとはお前らと、教会のやつらと、『正義』を持ち逃げした女だけ。わかるだろ?別にお前らを殺そうとしてるわけでも、蔑もうとしてるわけじゃない。

俺は、無力を知った奴らがそれを他人に強要する世界を壊したいだけだ

悪人が堂々と人を踏みにじり性を謳歌する時代を終わらせたいだけだ」


「嫌だよ。そんなの」


「なんでだよ。お前も今の人間の醜さはわかるだろ。まるで蛆の山だ」


「私は、正直全部どうでもいいの。あんたたちがそんな理想郷を作りたいなら、勝手に田舎で作ってろって思うだけ。私たちを巻き込まないで」


「...仕方ない。半殺しくらいにして、ボスのところに持っていくしかないな」


スーツ姿の男は、力のタロットカードを取り出し、前に投げた。

カードが通り過ぎると、男は、黒光りする。まるで汽車のような黒い戦闘用スーツに身を包んだ。


「菊理ちゃん!」


「...!?めいちゃん!ダメ!」


めいちゃんは、心臓の方へと手を伸ばす。まるでファンタジー映画のように、体へと沈んでいった手は、しばらくすると体の外へとはじき出された。手には女教皇のカードが握られている。


「お前...はじめてか」


「菊理ちゃんはっ...私が...守らないと!」


めいちゃんは、息も絶え絶えになりながら、女教皇のカードを前に投げる。

カードをすり抜けると、めいちゃんの服装は、私と似た。服装へと変化した。


「おめでとう、これでお前も俺たちの仲間入りだ」


「あなたの...仲間になんか...ならない!」


めいちゃんは、思いっきり手を前に出す。瞬間、まばゆい光が辺りを包む。


「ぐっ...」


「菊理ちゃん!こっち!」


眩い光に目をやられ、見えない状態で、めいちゃんに手を引かれてひたすら走る。


「む...だ...だ!」


目を鳴らしてきた後、私たちは駅のホーム内へと向かっていた。そうか、あそこなら筒抜けだから、逃げ道がある。


「無駄だ!覚醒したばかりのお前と!俺とでは!使える能力の力も質も量も桁違いだ!」


「あいつ!追ってくる!」


男は少しずつスピードを上げていく。まるで電車のように、少しずつ少しずつ早くなっていく


「このままじゃ!追いつかれて...」


「めいちゃん、ここは私がひきつける」


「ダメ!菊理ちゃん!」


「めいちゃんは、生きてほしい。だから!」


私は、彼女の手を引きはがした。ホームの真ん中、さっきまで私たちが座っていた場所で待機する。


「菊理ちゃん!」


「やはり、お前はすごい奴だ。魔術師、行くぞ!」


「こい!」


スーツ姿の男がどんどんスピードを上げて、私が近づいてくる。私は、タイミングを合わせ、ボディーブローを決めようとした。その時だった。


「「「バリーん!!!」」」


「「!?」」


急に来た窓ガラスが割れる音、さっきまで私たちがいた場所から、何かが入ってきた音がする。


「...なんだ」


スーツ姿の男も足を止めて、入り口の方へと目を向けた。


車だった。車が、まるで、映画のように突っ込んできて、私たちの目の前で止まった。


「...やばい、やってしまいました」


猛スピードで突っ込んできた車は、ボロボロになっており、中にいた男は、焦ったような顔で扉を開け、出てきた。


「マニュアルちゃんと乗ったことなかったからミスりました。まあ右足と左足両方使わないといけないよかいうめちゃくちゃ使いにくい車なので仕方なし、この車も違法駐車のやつだし、この建物の中は燃えてるだろうし...ってあれ?燃えてない」


中から出てきたのは、服がボロボロで、よくテレビに出てくる浮浪者と同じ見た目をしていた。


「お!生存者発見!いや、街から人が消えてまして...ずっと宇宙人の仕業だと思ってたんですけど、もしかして、あなた達の仕業ですか?」


何が起きたのか、わからず立ち止まっていた。めいちゃんも何が何だかわからず立ち尽くしている。


だが、たった一人だけ、その男をにらみつけている人物がいた。


「...イレギュラー」


スーツ姿の男はそうつぶやき、男に拳を向けた。

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