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気まずさ

「春君……」

「おはよう美鈴」

「おはよう、あの……ね?」

「おっはよ! 美鈴!」

「え、あっおはよう! 絵瑠える

「なんだなんだ、春のことばっかで私には気づかなかったのか? おらおら!」


 そんな感じでテンションの高めな桐冬さんに絡まれる感じで、俺と美鈴の間に桐冬さんが入り込んでくる。


 正直かなりありがたかった。美鈴にどんな顔を向ければいいのか、距離感を測りかねていただけに助かった。

 教室までの間ほとんど、俺は横に居るだけといった感じで事なき事を得た。

 


「なんかさ、今日の春なんか変じゃね?」

「俺も思ってたけど、圭祐もか」

 

 昼休み、何の気なしに圭祐がそういった。

 俺は思っても見ない二人の言葉に動揺、もとい反応を隠せなかった。

 思わずその言葉に肩がびくんと跳ねてしまい、それを見た二人は怪訝な表情を浮かべる。


「おい、春なんかあったよな?」

「うん。これは絶対何かあったやつだね」


 そんな尋問じみた目線に耐え切れなくなった俺ははぁと一息つき「ホールに行こう」とだけ言い席を立つ。

 それに倣う形で二人も席を立つと三人並んで一階まで降りる。

 

 自販機で紙パックの飲み物を買った俺らはあまり人気のない玄関前までやってきて三人それぞれ段差に腰掛ける。


「それで? わざわざ場所を変えてまでってことは教室じゃ話しにくいことなんだよな?」

「圭祐の言うとおり教室じゃちょっとね……」


 何を言わんとしているのかを察知したかのように二人の表情も少しだけ暗くなる。


「俺、美鈴に振られちゃったわ」

「まじか……昨日唆しちゃったから……やばい罪悪感……」

「いや、将太の気にすることじゃないよ。別に言ったのも俺の判断なわけで」

「でもまあ将太も俺も、あれだけ行け行けって感じ出してたんだし。ごめんな」

「二人に謝ってほしいとかじゃないから! 気にすんなって」


 土台無理な話かもしれないが、それでも何とか二人には気にしないで欲しかった。

 

「まあ、美鈴さんだけがこの世の女子じゃないしあんま深く考えすぎんなよ」

「圭祐の言うとおりだよ」


 こうして二人から慰めの言葉をもらった俺は少しでも早く気持ちを切り替えることを考える。

 ……そううまくいくかと問われると難しいところだが。

 それでも、終わってしまったものは終わってしまったものだとしっかりと認識できているのだから俺も現実は見えているのだろう。


「ま、恋愛経験者の二人の言うことだし信じとくよ」

「それはなんかさ、さっきまでのもそうだけどめちゃめちゃ罪悪感出るからやめろよ!」

「お返しだよ」

「言い返すだけの元気があって安心したよ」


 改めて自分はいい友達を持ててよかったと安心した。

 恋は振り出しに戻ってしまったけど、それでも一歩前進した関係があって後ろには戻っていないことを再確認した。

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