【資料】用語集(その一)
本日二話目の投稿になります。
英雄魔導船の物語で使われる用語の説明です。
いま語れることだけ書いています。たとえば、『栄光なる十二人の魔導師』などは端折りに端折ってます。
今後明らかになる部分については、別に解説するか本文で確認する形になると思います。
■魔界
魔界の形状はどこも同じで、半球のドームのようになっている。
境界面は『概念の壁』と呼ばれ、それより先には行けない。
大地のほとんどは荒野だが、ところにより魔草や魔木が生えている。
ただし地上付近には、神秘の霧と呼ばれる変容した魔素が溜まっていることが多い。
まるで波のように見えることから、マギルの海と呼ぶ人もいる。
魔界はあまりに魔素が濃いため、一般の人が住める状態ではない。
魔界の広さは様々だが、半径100kmの円と考えると近い。
境界面には魔窟と呼ばれる穴が空いている。
それぞれの魔界に魔窟が50~100程度あるため、一体いくつの魔界が存在しているのか分かっていない。
最初の魔界を0番魔界と呼び、魔窟の一つ一つに番号が振られている。
番号は、魔窟がある場所の真下に石柱を打ち込むことで識別している。
たとえば0番魔界から28番の魔窟を抜けた先を28番魔界と呼ぶ。
そこからさらに11番の魔窟を抜けた先は、28-11番魔界と呼ぶ。
このように、魔界の数は指数関数的に増えていくことが分かる。
■魔導船
魔導船とは、魔界を駆ることができる浮遊する船のことである。
栄光なる十二人の魔導師が起動させた『はじまりの魔導船』は特別で、八隻しか現存していない。
この『はじまりの魔導船』の倉庫には、魔導船を動かすために必要な魔導珠と、それより小さい魔導珠があった。
この小さな魔導珠は、『はじまりの魔導船』の魔導珠と区別するため、『核』と呼ぶことが多い。
他に、核を設置することができる『円形の基盤(円盤とも呼ぶ)』もあった。
大昔の魔法使いたちは、この基盤を使って、大中小の魔導船を作成した。(素材は石魔木など)
小型の魔導船は、基盤を二個(小型の核を二個)使用する。(推進力と魔導船の稼働に必要)
中型の魔導船は、基盤を五個(中型の核を一個と、小型の核を四個)使用する。
大型の魔導船は、基盤を十五個(中型の核を三個と、小型の核を十二個)使用する。
『はじまりの魔導船』の倉庫にあった基盤の数はすべて同じだったが、魔蟲との戦闘により喪われた魔導船によって、現在残っている基盤の数は少ない。
よって魔導船の数は小型>中型>大型の順になっているが、近年、大型の魔導船を解体して中型と小型の魔導船に作り替えることが行われてきた。
これには、大型の魔導船を扱える魔法使いが少なくなったことも関係している。
もっとも汎用性が高いのは小型の魔導船で、大きさは『はじまりの魔導船』の十数分の一だが、使用者が限定されないため、血族で保護する必要がない。
まれに大型の魔導船を魔導戦艦、中型の魔導船を魔導巡洋艦、小型の魔導船を魔導駆逐艦と呼ぶことがあるが、魔法使いが軍事力を持つことはよくないと考えており、いまではその名を使うことはほとんどない。
■魔導珠
バレーボールより少し小さいくらいの大きさ。
魔力を込めると、球自体が光る。
人の魔力はそれぞれ違うため、魔導球に魔力を込める場合、一人が一度に込めねばならず、血統と魔力量の双方が揃っていないと魔導珠に魔力を注ぎきることができない。
途中で魔力注入を止めると徐々に魔力が抜けていき、別の人が込めると濁って使い物にならなくなる。
魔導球には二種類あって、『はじまりの魔導船』が使うものは血統によって固定化されている。基盤の核はだれでも魔力を注ぐことができるが、先の条件により一人が最後まで注ぐ必要がある。
核は、『はじまりの魔導船』の魔導珠よりも小さく、必要魔力はそれほど多くない。
魔導船を動かすには、他の人の魔力が使われた魔導珠や核が使用できないため、たとえば中型の魔導船を動かすには、中型の核を注げる魔力が必要であり、魔導船を運用するには、一人ですべての核に魔力を注がなくてはならない。
この中型の核に魔力を注ぎきれると、Aクラスの魔力保持者と言われる。
■叡智の会
栄光なる十二人の魔導師たちの後継者が作った会。
昔は別の名称だったが、各勢力に配慮、または社会に溶け込めるよう、一般と変わらないような名前に変更している。
十二人の子孫たちが集まる『当主会』が叡智の会本部で行われる。ここで叡智の会に影響を及ぼす内容を話し合っている。
かつては、当主の後継者候補たちが集まる『トネリコの会』というのもあった。こちらは単なる会合で、トネリコは世界樹、生命樹、聖樹として旧い時代の象徴として扱われていたこともあって、次代を担う魔法使いたちの交流の場として機能していた。
だが、後継者候補が少なくなり、その中で争いが発生したことを受けて、現在、『トネリコの会』は開かれていない。
叡智の会の本部は、ドイツの首都ベルリンにある巨大なビルで、最新設備が導入された難攻不落の要塞となっている。
電子的防衛だけでなく、戦車の砲弾やロケット砲の攻撃にも耐えられるよう設計されている。
また旧本部はドイツ中央部、ハイニッヒ国立公園の地下にある。
なぜ叡智の会の旧本部がここにあったのかというと、ここに魔界門(深淵の穴)が存在しているからである。
現在もここに本部がないものの、人と電子によって厳重に護られている。
この叡智の会の下部組織として、世界的大企業のゴランがある。
■栄光なる十二人の魔導師たち
紀元前、まだ科学と呪い、宗教と政治が未分化だった時代。
人々は自然の脅威を前にしていつでも無力だった。
その時代、その場所に、十二人の力ある者たちが集まったのはまさに奇跡であった。
当時、数年から十数年おきに、地下にある空間の歪みから、異形の蟲が這い出てきた。
人類は無力で、それを倒せる存在は魔法使い以外にいなかった。
魔法使いたちは、異形の蟲(のちの魔蟲)を倒したあと、互いに力をたたえ合った。
そしていつしか逆侵攻、つまり空間の歪みの中へ身をおどらせるようになっていった。
未知の恐怖より、好奇心が勝ったのである。
昏いトンネルを抜けると、そこには高い山を背にした見知らぬ世界が広がっていた。
時は経ち、力ある十二人の者たちは、長い時間をかけてその世界を探索した。
いくつかの世界を越えた先で、運命的ともいえる遺物――うち捨てられた十二隻の船を発見したのである。彼らはそれを起動させ、持ち帰った。
現存する八隻の魔導船は、そのとき彼らが発見したものである。のちに、十二隻の船は『始まりの魔導船』とよばれ、十二人は『栄光なる十二人の魔導師』とよばれるようになる。
■魔導師の後継者たち
魔導船を起動させた十二人の魔導師たちは、その船を次代に残すことにした。
というのも魔導船は、起動させた本人かその血族にしか反応しなかった。
魔導船を動かすには、魔導球に魔力を溜めねばならないのだが、一族以外の者がそれをすることができなかった。また同じ一族でも、複数の者の魔力を込めることができず、魔力を複数回に分けて込めることも不可能だった。魔導師の魔力が回復するよりもはやく、魔導球に蓄えられた魔力が抜けてしまうのである。
そのようなことが分かってからは、魔導球に魔力を込められる者を『魔導師の後継者』と呼ぶようになった。
十二人の魔導師の子孫たちは、一族の血脈を絶やさず、また始まりの魔導船を動かせる者を後継者に据えるようになった。この血脈は、現在にもまだ続いている。
■魔草と石魔木
魔界に生えている草を魔草、生えている木を石魔木と呼ぶ。
魔草の中には、傷を癒やす貴重なものもあるが、採取するのは大変。
また、地球に持っていくと、数日で魔草に含まれている魔力成分が抜けてしまう。
石魔木は、魔導船の原材料となる。
魔導船が壊れた場合、魔導珠や核に溜められた魔力や石魔木を使って自己修復する。
石魔木を使って、自分たちで修理もできる。
この石魔木も、地球に持っていくと数日で魔力が抜けてしまう。
■魔蟲
体長が数メートル程度の甲虫。
魔界の中を移動している。
数が多く、強力な力を持つ魔導船でも、数の差を覆すことができない。
魔界に魔蟲には溢れると、魔窟を通って別の魔界に移動する習性を持っている。
概念の壁を越えることができないため、別の魔界に移動するときは魔窟を使う。
またマギルの海の上(海の下には潜らない)を進むため、魔導船による発見は容易である。
■神秘の霧
魔界に漂っている変容した魔素のこと。薄紫いろのもやとして魔界に存在している。
魔界ではゆっくりと下方に降っていき、魔界の底に溜まる。
薄紫色の雲海のように見えるので、魔界の底にたゆたっているものを『マギルの海』と呼んでいる。
このマギルのある場所に精密機械を長時間おいておくと、壊れてしまう。
そのため、携帯電話や無線機などは持ち込みができない。
■魔導船の自壊
栄光なる十二人の魔導師が『はじまりの地』から持ち帰った魔導船は、魔力によって船体を維持しているため、魔導球の魔力が空になって一定の年月が経つと、魔導船は船体を維持できなくなり自壊する。
そうなるともう、二度と魔導船は使えない。
一説には、完全に封印する方法があるらしいが(栄光なる十二人の魔導師が魔導船を励起させる前の状態)、だれもその封印方法を使えた者はいない。
■魔界の基地
シナイ山の中腹にある人間の拠点。
深淵の穴を使って地球と行き来できる。
基地には居住エリアの他に魔導船を係留しておくドックがある。"
このドックは、各十二家がそれぞれ一つずつ所有している。
魔法使いの秘密主義のため、他家のドックに別所属の魔法使いが入ることはない。
■ケイロン島
地中海にある島で、叡智大がある。
島全体が叡智大のために存在している。
島の住民は、念入りに思想チェックされている。
■叡智大学
とにかく有名で、卒業生は成功が約束されているため、世界中の一流がこの大学を目指す。
全寮制で、男が月桂樹寮、女が橘寮。
それとは別に、魔法使いや住む寮がある。
大学構内に一般学生が侵入できないエリアがあり、そこで特別科の校舎があり、授業が置かれている。名目上は、農業試験場。
特別科(魔法使いたち)の卒業生は、無条件でゴランに就職(そして各家に配置されて魔界へ)できる。
■概念体
魔窟を通って、ときおりやってくる意思疎通のできない存在で、魔蟲と呼ばれている。
概念的な存在であるため、ミサイルやロケットのような武器は効果がない。
この概念体によって、他の魔界が浸食され、滅ぼされている。
地上に出てくると災害になるので、魔導船で殲滅している。
過去、何度か地上に魔蟲が出てきたことがあり、神話や伝説となっている。
■統括会
魔法使いや魔導師を支援する団体。非魔法使いが中心となって活動している。
魔女狩りの頃にできた。
日本支部東京支店は、日比谷の雑居ビルの一室にある。
もちろん世を忍ぶ仮の姿を所持しており、学校に共通テストを納入する業者として、教育関係者には知られている。
本業(テスト納入業務)は、東京支部の職員が行っており、東京支店は小さな事務所に二名(所長と職員)が在住しているのみ。
■ゴラン
世界一流の巨大企業。魔導師たちの表の身分かつ収入源となっている。
世界各国からの援助金が使えるため、他の一般的な財団や企業とくらべてもかなり有利。
日本ではアニメなどのテレビCMで有名。
このゴラン資本の大学が叡智大である。