第99話 治せない
「……これは……治せないね」
個人治療室で彩希おばさんが静かに言う。
彩希おばさんは、私の右腕があった場所を見ている。
私は黙って、数回うなずく。
「切断されたところは、いくら私の能力でも無理だよ」
「…………」
「ごめんね」
「いや……謝る必要……ないよ……」
目が熱くなる。
そして涙がたまった。
「これも……攻撃喰らった私のせいだし……」
「…………」
私の後ろで班長が黙ってる。
しばらく、沈黙が続いた。
そしたらドタドタと足音が近づいてきた。
「おい! 坂田柊菜が怪我したのか!」
男の人が入ってくる。
白い文字で『霊』って書かれてて、黒いハチマキを巻いてる人。
霊伐隊の隊長だ。
そして彩希おばさんが隊長に向かってひざまずく。
でも班長は何もしてない。
「坂田柊菜……! お前……右腕……!」
隊長が汗を流しながら私に近づく。
私は隊長から目をそらす。
「……ふざけるな!」
隊長は私の肩を思いっきり掴む。
「なに怪我してんだよ! しかも治んねぇって、どうしてくれんだよ!」
……なんで……?
なんで隊長が怒ってるの?
本当に怒りたいのは私なのに。
私を心配してるから?
いや、そんな顔してない。
「片腕がなくなったお前なんて――」
「隊長!」
班長が突然叫ぶ。
「なんで焦ってるんですか……? 霊伐隊が傷つくのなんて、当たり前じゃないですか……」
「……お前のせいだ! お前が班員の面倒みてねぇからこうなるんだよ!」
「なんでお前が怒ってんだよ!」
班長は隊長を睨む。
すっごく怒ってる。
こんな班長、今まで見たことない。
そんな班長を見てると、なぜか私は落ち着いてきた。
「柊菜ちゃんだって怒りたいよ! それともなに!? ご親切に心配ですか! 違うだろ! 柊菜ちゃんを利用したいだけだろ!」
利用……?
班長は、何を言ってるの?
「お前みたいな班長がいるからこうなるんだ! これは人間のためだ!」
「柊菜ちゃんだって人間だ!」
「いや、霊だ! 悪魔だ! そんな存在を生かしておいてやってるのも、全部あのためだってんのによ!」
「じゃあ柊菜ちゃんに謝罪してほしいの!? 『右腕失ってすみませんでした』って!」
「もういい!」
隊長は私に背を向け、部屋から出ていった。
「……ごめん、変なとこ見せちゃった」
班長はため息をついて言った。
その声は、いつもの班長の声だった。
それより、気になることがある。
「あの、私……霊……なんですか……?」
「……何言ってるの? ちゃんと人間じゃん!」
……班長の言い方。
演技?
でも、もし仮に私が霊だったとして、なんで班長が知ってるんだろう……。
……今、考えると頭が痛くなる。
だから、ただボーッとしてたい




