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第96話 美魅と大蛇

 「美魅……! テメェ……!」

 「そんな大口たたかないの。アナタは休んでて」


 美魅は刀を押し返し、大蛇を蹴り飛ばす。

 大蛇は列車から落ちる寸前に、自身の身体を列車の中に入れ、列車の中に入る。


 美魅は何も言うことなく、そのまま列車の中に行く。

 血花はその光景を黙って見ていた。


 列車の中に入った美魅はその中にいる大蛇を見て笑う。

 大蛇は美魅を完全に警戒している。


 『オマエ、レイバツタイカ……!』

 「そうよ! アナタは霊ね」


 大蛇は美魅に襲いかかる。

 美魅は大蛇を躱し、大蛇の(ふところ)に回り込む。


 そして大蛇を斬った。


 大蛇は美魅の方向を見ようとしたが――


 『――?』


 大蛇は美魅を見た。

 しかし、特に美魅に攻撃はしない。


 それどころか、美魅が敵だということを知らなかった。

 美魅の目は赤く、それで笑っている。


 そして美魅は再び大蛇を斬る。

 大蛇は今度こそ美魅を『完全な敵』と判断し、襲いかかろうとするが――


 『――?』


 再び忘れる。

 美魅が敵だということを。


 今の大蛇にとって、美魅は『初めて会った、名も知らぬ者』だった。


 「ヘビにもちゃんとあったのね、()()が」


 美魅は感じの悪い笑みを浮かべたまま、再び大蛇を斬ろうとする。


 その瞬間、上から血花が降りてきて、大蛇を斬る。

 大蛇はその斬撃を喰らい、倒れて動かなくなる。


 「ッ!」


 血花は大蛇を斬ったあと、床に座る。

 腹から出血していた。


 「大変ね、その怪我」


 座っている血花に近づく美魅。

 血花は息を切らしながら、近づいてくる美魅を睨む。


 「テメェ……」

 「安心して、治すわ」

 「できねぇこと……言うんじゃねぇよ……」

 「強がらないの。もう、どんだけアタクシのこと嫌いなの?」

 「精神的に無理なんだよ……」

 「今までも、あんなに助けてあげてるのに」


 美魅はしゃがみ込み、血花と目線を合わせる。

 血花はだんだん意識が薄くなってきている。


 「アタクシの霊化の能力、アナタ知らないでしょ? 何回も教えてあげてるのに」


 美魅が言い終わったあとに、血花の意識がなくなった――







 「――ッ!」


 血花は目が()める。

 周辺には誰もいない。


 そして傷が治っていた。


 しかし血花は不思議に思った。

 『なぜ傷が治っているのか』ではない。


 『なぜ自分は寝ていたのか』と。


 覚えているのは、ヘビに自分の首が噛まれるところまで。

 そこからは何も記憶がない。


 そのあと血花は柊菜と出会った。


 そしてそのあと、血花は列車の中で美魅と会うことはなかった。

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